Merzbow Works

V.A. "Rewriting the book" <2001:E+J Reourdings>

 情報量が少なく、とにかく不明点が多い。もう少し本盤の詳細が知りたい。探し方が悪いんだろうな。

 京都出身のノイジシャン、Aube(中嶋昭文)を主役に置いたコンピらしい。同レーベルからリリースされたAubeのアルバム"PAGES FROM THE BOOK"(未聴)の関連盤のようだ。
 この盤のためにAubeは10秒から4分までにわたる、61種類のさまざまな音素材を用意した。
 ("King James bible"を元にした、とあるが意味が不明です・・・ごめん)

 この素材を各ミュージシャンへ送って作られた曲を集めた盤、だと思う。
 あるものは素材を使用、あるものは素材をまったく使用せずに作った、とライナーにある。
 
 クレジットがはっきりしないのと、ぼくの英語読解力の問題で詳細が掴みかねる・・・2枚組のうち一枚が、おそらくAubeの作品。
 元素材をベースに作った音楽か、返却された作品をさらにリミックスしたものだろう。
 ただしDisc1は曲目の冒頭に"e"か"j"の文字が記された。レーベル名E+J(しなわち"Elsie and Jack"・・・レーベルのオーナー夫妻(?)かな)の略語だろう。
 もしかするとAubeの素材を、レーベル側がリミックスしたものかもしれない。

 一枚目と二枚目は対比しているようだ。1枚目がAubeのリミックスで、2枚目が各ミュージシャンのオリジナル作品かな。
 Aubeの素材を各ミュージシャンが咀嚼し、さらにAubeが再構築する。入れ子構造でノイズがノイズたりえてゆく。

 レーベルには「まずオーヴがリミックスをした。が、ストーリーはまだ完成ではない。次は"長嶋昭文"対"全員"対"Aube"だ」とある。
 この作品はまだリリースされていないようす。どういうコンセプトだろう。Aubeへさまざまなミュージシャンが素材を提供し、それをAubeが再構築するってことか。
 なんにせよ、先はまだ長い作品のようだ。
 
 1枚目は様々な電子ノイズが続く。長尺ではなく、数分毎に音が変わる。淡々と表面を漂う作品が多く、瞑想の妄想が深層の奥底で観想する。
 派手さはないが、興味深い。Aubeの作品はきちんと聴いてないため、残念ながらその観点で語れない・・・。

 2枚目に参加したミュージシャンは、世界各国から。知ってる名前が無く、詳細は割愛します。たぶんその業界では有名な人では。
 Aube自身も2枚目の盤に名を連ねてる。

 作品そのものは、そうとう楽しい。各個人の個性がAUBEという統一した視線で多様に動くため、バラエティに富みつつ一体感ある。
 時間の流れがゆったり感じる作品だが、対峙すると味わいはとても深い。
 アイディアを存分に注ぎ込まれ、刺激を多々受ける。

 ここではメルツバウに焦点を当てて紹介します。

<曲目紹介>

8. (無題) (2:58)

 2枚目のリミックス集はどれも無題となっている。一枚目と対比させるならば、タイトルは"Book of sunday"か。
 
 冒頭はループの積み重ね。シャッターを切るような歯切れいい音をアクセントに、モコモコした塊がしばらく目の前で回転する。
 鋭くつんざくハーシュの貫き。中央にぐっと音像を固め、一点突破で輪郭をみるみる鋭く尖らす。
 
 砥がれたエッジはモコモコした塊すら、スチルウールの塊みたいに金属質な肌触りへ変質させた。

 ストーリー性は少ない。わずか3分弱の小品。しかしメルツバウは世界の風景を素早く変え、空気を緊張させることに成功した。

 ちなみに1枚目の(8)では、より奥行き深いノイズにすりかわる。
 大ナタを振る空気の音か。
 力試しか操作性を確かめるかのように、幾度も振り回された。

 鋼鉄の馬が鎧の重なりを連ねて、前へ進む。
 ハーシュの激しさはない。しかし緊張感だけは確かにある。
 メルツバウはこれを素材にしたのか。それともメルツバウの素材をAubeが解体したのか、いまだに分かっていない。

 しかし互いに鏡面をはさみ、違ったアプローチでスリルを作ったことは間違いない。 (2005.10記)

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