Merzbow Works
Live at radio 100(E.R.S:2000)
MA - Turntable,Noise,Electronics
Bara - Turntable,Voice
Reiko A - Theremin
Plus guest:Radboud Mens - Turntable
メルツバウにしては異色な盤だ。
音作りはえらくシンプル。ひとつのノイズがじわっと40分一本勝負で変容してゆく。
クレジットは上に書いただけ。録音時期も何も記載なし。
ライブ盤っぽい表題だが、サウンドはまったく生演奏に聴こえず。特に前半。後半は妙に生き生きした音だが、ループ感やスクラッチ風のノイズが多発する。
もしかしたら過去(90年代半ばくらいか?)のライブ音源を素材に、ゲスト扱いのラドバウンド・メンズがDJミックスした作品だろうか。
と、ここまで書いた後にご教示いただいたが(注)、本盤はアムステルダムにある海賊ラジオ局Radio 100の番組"Earbitten"で行われたライブを収録してるそう。リアルタイムで演奏され、素材でサッチモやファッツ・ウオーラーの盤を使ってるとか。
メルツバウの音を期待したらアテはずれ。メルツバウのコアなファンか、音響系DJサウンドが好きな人なら楽しめるかな。
ジャケットが凝っていて、紙箱にMERZBOWの文字が浮きあがる。
蓋は上からすぽんとかぶせる形。裏蓋に書かれた「お静かに」「Quiet」の文字は、シャレが効いている。
記載を盲信したら、すごく興味深いのに。
秋田昌美がターンテーブルをいじるってあまりしらない(特にライブだと)。
ターンテーブルが3台並び、REIKO.Aがテレミンで暴れる・・・って、むちゃくちゃ面白い音像だと思う。
オランダのレーベルから発売された。500枚限定。
(注)usacoさんにご教示頂きました。ありがとうございます。
1.(untitled)(42:32)
約40分一本勝負。
フェイドインで始まるのは、バグパイプっぽい音とスネアのロールが鳴る、イギリス民謡っぽいサウンドから。
すぐに回転数が歪み、高速になる。
メルツバウの盤とは思えないシンプルな音作り。
蛇の背中をじっくり小型カメラで追っていくさまを連想した。
基本的に音はひとつながり。じわじわっと形を代えてゆく。しかし道は一本だけ。表面はぬめっと光る。
凄みは控えめ。テンションもあまり高くない。
左右のチャンネルを別の人間が操作してるみたい。
比較的左のチャンネルのほうが賑やかかな。後半では左チャンネルだけに音が集中する瞬間もあって、一瞬スピーカーが壊れたかとびびった。
コラージュよりもDJを連想するつくり。ほんのりハーシュなノイズが持続されてるのに、いつのまにか別の響きなノイズへ切り替わる。
後半につれ、次第に面白い音になるのが救いだ。
7〜8分経過したあたりの音はメルツバウっぽい。
いくつかのノイズが平行成立し、互いに干渉しあう。
もっともライブ盤には聴こえないなぁ。テープ操作を多用した、初期のサウンドみたい。
10分前後でインターミッション。淡々とシンプルな響きが脈動する。後ろでひょろろんって鳴るのがテレミンか?
この辺は正直なとこ、聴いてて飽きる。
ハーシュさを再開するのは15分くらいで、やっとこさ。
妙に左トラックのバランスが強く、聴いてて違和感いっぱい。
なのにしばらくすると、またもやめちゃくちゃシンプルなノイズに変わってしまう。
ここでは後ろでかすかにホーメイが聴こえる。
ループを意識した音作りだが、ダンスビートはまったく意識していないようす。
メリハリ効いた構成はBGMなら目先が変わっていいが・・・。ひたすらいかしたハーシュを欲っした時にはもどかしい。
どう考えてもこういうところ、ライブの生演奏には聴こえない。いったいどんな形で録音したんだろう。
ラスト数分は音像が交錯する、メルツバウの片鱗を見せたサウンド。終わる瞬間は、拡がりある空間がライブっぽいけれど・・・。
音が消えても声援などは特にない。もっともこのサウンドの後で黄色い声援や拍手の嵐が飛ぶのも違和感あるな。
トラックが40分一本勝負だからなぁ。もっと細切れにしてくれたら、クライマックスだけ聴くのに。
(2003/2/6記)