Merzbow Works
V.A./[Open mind](MAM:2002)
六本木で03/10に開館予定の、森美術館が配布した無料CD。
細かいことは覚えてないが、たしか2002年末のライブイベント(メルツバウも出演)に行くと、先着500名限定で配られたんじゃないか。
ぼく自身はイベントへ行きそびれてる。このCDは売ってるのをたまたま見つけた。
オムニバス形式で若手ノイジシャンの作品を収録。メルツバウが最年長か。
ライナーに書かれた館長のあいさつ文にある、「デジタル・パルスが日常を支配する環境に囲まれ育ってきました」という表現が秀逸だと思う。
今の若手は、まさにこの世界が現実化してるんだ。
メルツバウ以外の参加ミュージシャンは、渋谷慶一郎、稲田光造、青木考允、miroque、portable[k]ommunity、Numb、池田亮司。
ほかに4人のクリエイターが、スクリーン・セイバーなどPCソフトを提供してる。
面白いのはいわゆる「轟音ノイズ」でなく、音響系作品をメインに選んだところ。
オシャレさを狙ったわけじゃないだろ。たぶん。
「新世代ノイズ」って表現に、これら音像が的確だと思ったからでは。
どの作品も「ノイズ」の非日常性で遊ぶんじゃなく、音の響きを楽しむかのよう。
そのうえで軽々と、クラブを意識したダンスビートが仄見える。視点の位置づけが面白い。
女性音楽家miroque(弥勒?)によるキュートな作品がすごく気にいった。
手に入れにくいかもしれないが、見かけたら聴いて損はない作品。
<曲目紹介>
3.Quiet Men & Noisy Animals(5:09)
ここではメルツバウの作品のみ紹介します。
メルツバウではなく、秋田昌美名義で提供している。たぶん、このCDでのみ聴ける音源だ。
録音クレジットはないが、たぶん2002年中の録音ではないか。
ブックレットによると、当時のメルツバウのテーマ"環境保護"への主張が込められた作品の模様。
他のミュージシャンと合わせたのか、はたまた具体的な音像のオファーがあったのか。それとも単なる偶然か。
あくまでも静かな轟音が沸き立つ。
ハーシュ性は控えめ。けっして牙を抜かず、力を溜めて睨みつける迫力あり。
このとき多用していた、PCでループさせつつ加工するスタイルを採用した。
第一印象は熱帯の温室巡り。
じわじわと熱が沸き立つなか、鳥の声や虫の羽音みたいな電子音がランダムに、しかし整然と飛び交った。
猛獣もどうやらいるようだ。喉の奥で咆え声を押し殺し、様子を伺う。
ぞわぞわ漂う緊張感。けして今の環境へ安住せず、隙あらば破裂しそうな危うさがある。
ゴリラっぽい唸りがきっかけ。とたんに賑やかになる。
慌てふためき、そこかしこで飛び交う鳴き声ども。
だが不意に、再び静寂の世界へ舞い戻った。
音像自体は静かだが、ハーシュ・ノイズの素養はたっぷり。はじけなかったのが不思議なくらい。
(2002.7記)