Merzbow Works

NOISE (2016:adult swim)

 クレジットが無くて委細は不明。アメリカのカートゥーン・ネットワーク社(アニメ専用チャンネル)が大人向けに設定した放送時間帯の名称で、サブレーベルがadult swim。
 このadult swimのWebから2016年12月に唐突な無料配信が本盤となる。

 大人向けと言ってもWebを見ればわかるように、「子供向けではない」って程度の意味。ハイティーンあたりをターゲットに、下品で危険なムードがテーマのようだ。


 本盤のDLページはこちら。amassで紹介記事もあった。サウンドクラウドで配信もあり。
 全16曲入りで、メルツバウの他には日本からEYE(BOREDOMS)やMELT BANANAが参加。アメリカではノイズで重鎮のWolf EyesやPrurient、イギリスからはArcaが音源提供してる。だがベテランだけでなく、生きのいい若手も選出してるみたい。
 ノイズと一口にくくったが音楽性もまちまち、ヒップホップ寄りからエレクトロニカ、純粋ノイズと多彩だ。気軽に様々なノイズを楽しむには良いコンピかもしれない。

 とはいえ全体的には単調かな。メルツバウが16分越え、他にBEASTとWolf Eyesが10分越えの尺は確保したものの、あとは数分の短い作品が続く。コンピのコンセプトが固まらず、ノイズ寄りの作品を無造作に集めたって感もする。

<個別感想>

13. For Adult 16:55
 
 ここではメルツバウだけ感想を個別に書きます。他の曲で面白いと思うものもあったが、少し小粒な印象あり。さて、メルツバウ。どうやら新曲を投入したらしい。録音時期は不明だが。
 タイトルは単に、adult swimのコンセプトから仮題的にさっくりつけただけ、か。

 冒頭から電子音の唸り。すぐさまハーシュの轟きに変わる。メタル・パーカッションを叩くような響きもあり、ラップトップ一辺倒ではなさそうだ。やはり最近の録音かな。
 みっちりとノイズを詰め込みつつ、個々の音域を上手く配置して濃密ながら分離良い音像を作った。
 コンピ作成側の最終マスタリングのせいか、音がちょっと詰まった感じする。

 16分とそれなりの尺を持つが、じわじわ粘ったり構成をドラマティックに作らない。短いスパンで次々に音の構成や色合いが変わっていく。基本を埋めるのはノービートで充満する電子ノイズだが。
 音数は多く、手が込んだうねりを作った。構成音が細かく変わっていく絡まり具合がスリリング。コラージュではなく、ミックスで絶え間ない変化をつけた。
 
 ノービートでノイズの構成要素がテンポ感を作る。吹きすさぶ荒野は視界不良、奥行きや高さもわからない。うねりながら空間のイメージを変えていく。
 構成音の揺らぎや性急さがビート性を作る。そこへスペイシーなシンセの音や、ハーシュのつんざきが刺激を与える。終盤は溌剌と跳ねるシンセの音を中心にまとめた。決して力押し一辺倒ではない。むしろすごく多彩な世界観を作ってる。コンピ盤へサラッと即興を提供でなく、きっちりと作りこんだ作品。

 なお、アルバムの全曲リストはこんな感じ。
1. Clipping. Body For The Pile Featuring Sickness 4:24
2. Melt-Banana Case D In The Test Tube 1:58
3. EYE Mega Equipment For Popsicle 4:47
4. Vessel PRIHATIN 3:44
5. Sadaf The Clinic 3:55
6. Arca Bussy 1:53
7. Pharmakon Squall 6:49
8. Tanya Tagaq Erie Changys 4:04
9. BEAST You've Got Rabies On Your Breath 12:01
10. Dreamcrusher Sick World 3:24
11. Perc Porthia 5:10
12. Noveller Processional 4:03
13. Merzbow For Adult 16:55
14. Prurient Everything You Know Is Wrong 7:38
15. Hassan Khan Casiotone Gigantija 3:36
16. Wolf Eyes Subterranean Life 18:44

  
(2016/12:記)

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