Merzbow Works

V.A./Nanoloop 1.0(2002:Disco bruit 4) 

 フランスのレーベルから唐突にリリースされたコンピ。
 コンセプトが秀逸だ。任天堂のゲームボーイ音源のみを使用した作品を集めた。

 いわゆるゲーム音楽のサンプリング集ではない。nanoloopなるドイツ製ゲームボーイ用のシンセサイザー・ソフトを使って作られている。
 ざっとサイトを眺めたが、かなり作るのに手間がかかりそう・・・。

 ジャケットもユニーク。真っ白な背景にちょこんとモノリスの如く立ったゲームボーイの初期型を、数人の人間が見つめるCGを使っている。
 もちろんイラストはドット絵のギザギザなシルエット。
 最近はやたらCGがきれいになって、ドット絵は見なくなったなぁ。

 参加ミュージシャンは14組。この手のジャンルは詳しくないので、ミュージシャンを羅列してみよう。お詳しい方、解説頂けると嬉しいです。

 Oliver Wittchow、Dat Politics、Agf/Dlay、Pita、Asciii、Blectum from blechdom、Stock,Hausen&,Walkman、Scratch pet land、Felix Kubin、、Pyrolator、Hrvatski、Bruno&Michet are smiking、Ostinato。
 ここにメルツバウが加わる格好だ。 
 メルツバウが加わる経緯も、謎ではある。

 ぼくが知ってるのは元デア・プランのピロレイターくらいか。
 日本人がメルツバウのみでさみしい。ゲームボーイが主題だから、もっと大勢いてもいいのに。
 
 サウンドは音響系やループ的テクノ系のアプローチが多く、メロディ要素は控えめ。
 もっともゲームボーイを入力デバイスに使って、メロディ打ち込むのは面倒でやってられないか。
 
 初期のテレビゲーム音を連想する、刺激的な音色が耳につく。
 ピュアな音色であるがゆえにコミカルに聴こえ、過激な音楽も角が取れてしまうようだ。
 素朴さと執拗さが混在した作品ばかり。
 
 メルツバウの作品のみ、個別で感想書きます。

9.Untitled(4:55)

 クレジットによると、ゲームボーイ・カラーでcgb-001(型番?)を使用し作った模様。
 録音とミックスは、他の作品同様に秋田昌美の寝室にて2000年の12月に作られた。"Editing by peak with max bass"というクレジットがよくわからない。
 低音をカットしたってことかな?

 テクノ調ではあるものの。まずはいかにもメルツバウらしいハーシュ・サウンドを、ナノループで作ったのがすごい。
 左右で微妙に違う音を作り、音像に厚みを出している。
 二種類の素材を作って、左右のチャンネルへ振ったのかな。

 低音成分は控えめだが、右チャンネルの底の方に微妙に重低音が残っているようだ。
 中盤ではじりじり唸るハムノイズの響きが素晴らしい。

 しゃくりあげるようなビートのループを淡々とくりかえす。
 むやみに音を厚く重ねず隙間を生かしたことで、奇妙な不安感が産まれた。

 文字通り、ゲームボーイ版メルツバウ。
 自分の個性をここまで叩き込めるとは。
 ソフトを使いこなす秋田のセンスにしびれた。

 曲の構想もさることながら。「ナノループでここまでできるんだ」と音色と音楽の構造でも楽しめる。

 (2002/12/21記)

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