Merzbow Works

Mini Tycle/Yoshino Tamago/Yonos Bigfoot(2004:[OHM] records)

Live computers by Masami Akita
Samoled chorus by Yoshino & Yonosuke
Recorded live by Torkild Jemterud at Radio Nova,Oslo 28/March/2003.
Final mix at bedroom,Tokyo 26/Nov/2003.

 ノルウェーで唐突にリリースされたメルツバウのライブ盤。日本ではもはや珍しい3インチのシングルCDだ。
 クレジットは飾り文字でスペリングされ、上記で正しいか自信ない。
 音源は03年にオスロで行われたライブより。わずか18分弱の音源なので、もしかしたら完全収録じゃないかも。

 ジャケットは紙製で蓋付きみたいなデザイン。表紙は炎を模したようなイラスト・・かな?
 カバーのデザインは"Lasse Marhaug"。Jazzkammerのメンバーだ。
 さらに謝辞で会場のRadio Novaと共に、Ole Melbyの名前を挙げている。この人はだれだろう。

 マックによるループを中心に、のっぺりと音像を変化させる電子ノイズが楽しめる一枚。
 クレジットからは分かりづらいが、明らかに「動物シリーズ」の一枚に数えられる。
 ・・・というより、もはやこの時代のメルツバウは、動物愛護と切り離して考えられない。

<全曲紹介>

1.   (17:36)

 曲名のクレジットは見当たらない。
 冒頭は寸断されるオペラのアリアらしきサンプリング。クラクションっぽい音がせわしなく挿入され、じわりと幕を開ける。

 けたたましく鳴く鶏たち。そのまま使わず、音色加工をしてる様子。
 この声が、クレジットにあるYoshino & Yonosukeだろう。メルツバウが自宅で飼ってると言う、チャボのことじゃないかな。

 鶏の声を執拗に繰り返し、シンプルな構成だ。極低音の様子も伝わる。
 もし会場にいたら、すごく重たい圧力が観客にかかっていたろう。この辺は録音に限界あり。

 鶏の声に混じって、じわじわハーシュ・ノイズの比率が高まる。

 場面展開はゆっくりと。クロスフェイドせず、前のノイズを残し続ける。
 たくさん積み重なったあとで、最初のループが仕方なく消えていくようだ。

 ぷちぷちと電子ノイズが弾ける。もっとも耳につくのは鶏の鳴き声、あとは低音・・・のパターンが冒頭部分。
 6分半を過ぎたあたりで、別の電子ノイズが存在感をみるみる増す。
 鶏は依然鳴き続けるが、すでに主導権はずらされた。

 しかししぶとく存在を続ける鶏。とうとう9分経過した時点では、鶏の鳴き声が勝ってしまう。
 物悲しい光景。ノイズの地平で闇雲に鳴いた。
 
 つと、消える鶏。唸る低音ノイズの地面に、霧みたいなホワイトノイズが降る。
 かすかに虫の鳴き声を模したかごとくの電子音も、左チャンネルで聴こえる。

 おもむろにハーシュの片鱗が姿を現した。
 鶏の声をげしゃげしゃに変調させたのが素材みたい。

 すがすがしいノイズが風となって、鶏ハーシュを包み込んだ。
 鶏ハーシュも同調、舞おうと試みる。健気さまで読み取るのは考えすぎか。

 うすぼやりと和音を感じる、奥深いノイズが底からめくれ上がった。
 全てが混沌の地平をめざす。ゆらぎ、流れる。

 サイレンの音。軽やかに加工され、昔のテレビゲームの電子音みたいなコミカルさがあり。
 低音を遮断し、サイレンがハーシュの衣にすりかわった。中央で沸き立ち、消えた。

 かすかに鳴る電子音がエンディング。
 うーん、このあとに続きがあってもおかしくない。だけどこれでライブを終わらせたのかもしれないな。
 ならば本当に短いライブになる。

 どういうイベントに、メルツバウは出演したんだろう。ラジオ番組の公開録音かなあ?
 すみません、知識不足で詳細は不明です。 

  (2004.12記)

一覧へ

表紙へ