Merzbow Works

V.A."MIMIKAKI"(Kuwagata:1995)

 クワガタ・レーベルは芸大出身というミュージシャン、PIRAMIが主催するレーベル。
 彼女はUAのアレンジャーもやったそう。
 本作が第1弾のコンピらしいが、いまひとつリリース背景は分からない。
 レーベル周辺および、日本のノイズ系ミュージシャンを紹介がコンセプトかな。

 参加ミュージシャンはPieer Inu,Pirami,Skekiyo,巻上公一,Satoru Wano,暴力温泉芸者、Adachi Tomomi,大友良英、GOROに、Merzbowという布陣。
 不勉強にして知らないミュージシャンばかり。
 だけどポップで重心の軽いノイズや電子音楽が多く、かなり楽しめる好盤に仕上がってる。

 巻上公一の念仏のような口琴ってかっこいいんだ、これが。
 大友良英はアンビエントっぽいコラージュ・ミュージックを提示した。ターンテーブルだろうか。
 ミニマル・テクノなPieer Inuも好み。

 比較的シンプルな曲が多い。じわっと音楽へ浸かりたいときにぴったりなコンピだろう。

<各曲紹介>

 ここではメルツバウのみ紹介します。

8.tallpes(10:50)

Masami Akita - tapes,ems synth,noise
Recorded at ZSF produkt studio, 58 march 1995

 たぶん本コンピのために提供した新曲。メルツバウの個人スタジオで録音された。
 クレジットの58ってのが謎。3月の5〜8日に録音されたってことか。
 珍しく、控えめだ。轟音で聴いたら印象変わるかも。
 だけどアルバム一枚の中で聴くと、やっぱりアンビエントっぽいイメージが強い。

 たっぷり時間をとって、比較的静かなノイズが繰り広げられる。
 まずは右でぶつぶつ言う電子音と、左で金属の風。しだいに中央へ侵食しだす。
 ぶつぶつノイズは始終続き、大きなオブジェを磨くかのごとく風のノイズがきらめいた。
 いっぽうぶつぶつは進化して、もうすこし粒が大きくなる。

 いったん視界はクリアへ。・・・いや、ぶつぶつだけは残ってるな。
 中央奥で、濃密な空気の存在を感じる。幻聴かもしれない。だがこの迫力は心地よい。

 3分半くらいたつと、インダストリアルに塗り変わった。明確な風景の転換はない。じわりじわりと表情を移す。
 そうか、メルツバウのわりに重ねられた音が少ないから、静かに聴こえるのかも。
 
 いったんブレイク。
 ここからハーシュなうねりがスピーカーから染み出した。
 身を沈め、地を濡らす。じわじわくる音圧が聴きもの。
 あくまで表面はざらつき、砂か溶岩の風景が目に浮かんだ。
 時にひらめく風こそあれ、重点はあくまで地面を這いずる光景だろう。
 
 飛び去る。唸り、風切り音をいくども見せつけた。
 ここでは一転、重心は高く持ち上がった。左右を幾度もパンさせ、視点をあちこちへそらす。
 
 意を決して、中央突破。いくつもの小さな回転が、一度にスピーカーを振るわせる。
 回転は収斂・・・中断。 

  (2002.12.15記)

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