Merzbow Works

h\ybrid s\ound s\ystem "winter was hard too..." (tourette . Switzerland)

 詳細はよく分からないアルバム。発売年すらあやふやだ。
 h\ybrid s\ound s\ystemがユニット名かな。
 メンバーはおそらくReinhold FriedlとUlrich Kriegerで、ゲストにBurkhard Schlothauerが加わる格好。
 本盤は2枚組。一枚は演奏、もう一枚がリミックス集になってる。

 メルツバウはリミックス集へ一曲を提供。が、音素材は本ユニットのマスター使用なのか、かサンプリングなのか・・・そもそも録音時期も書かれてない。
 その情報量の不足が困りもの。音楽には何の関係もないさ。でも、知りたいじゃない。クレジットしてほしかった。

 Reinhold FriedlとUlrich Kriegerはドイツの即興集団Zeitkratzerのメンバー。この盤は二人のサブ・プロジェクトって位置づけか。
 ちなみにZeitkratzerは2002年にメルツバウの曲を生演奏で再現、という突飛な作品"noize\...[larm] to listen to at an extremly loud leve"もリリースしてる。

 CD1はReinhold FriedlとUlrich Krieger、Burkhard Schlothauerのオリジナル即興が一曲づつ。ほかにJohn CageやManuel cecchianatoの曲を演奏した。
 率直なとこ、あまり面白くない。John Cageの曲がいくぶんまし。
 演奏の感情的なカタルシスはほぼ皆無。ひたすら音の断片をアンビエントに積み重ねる。
 クラシックの現代音楽的なアプローチ。

 これ、演奏者は「おお、おれは前衛的な表現をしてる」と、自己満足できるかもしれない。
 だけど聴き手への視点が圧倒的に不在。そもそも繰り返し聴かれることを想定してるの?

 で、CD2には9人の音源を使用したリミックス。勉強不足で知らない名前ばかり。
 とりあえず名前を列記しておきます。
 Carsten Nicolai,Lee Ranaldo,Rene Liebermann,Boris d Hegenbart(#/Tau),Dean Roberts,I-sound(Craig Willingham),Dean Roberts,Marcus Schmickler。
 それにメルツバウ(名義は秋田昌美)という顔ぶれ。
 詳細な経歴ご存知なかた、ご教示くださると嬉しいです。

 ここではメルツバウの作品のみ、コメントします。

<曲紹介>

8../.(8:49)

 記号で構成されたタイトルは、メルツバウが関与してなさそう。
 本CDのほかの曲も、同様に記号を組み合わせたタイトルばかりだから。

 カットアップと繰り返し。まずはそこから。
 いくつか素材を切り替えるが、シンプルな構造で押してゆく。
 もともとの音がドローンみたいに退屈だが、すばやくメルツバウが差し替えることで、若干のポップさが滲んだ。

 およそ色気なし。
 2分40秒くらいでは、針音のみをかすかに響かせ、極北へいざなう。
 たまに挿入されるシンプルなノイズが、渇望する唯一の変化。
 冒頭同様に頻度はだんだん上がって脈動化し、性急さを醸し出した。

 二回目は重層ミックスで、より複雑なノイズを選ぶ。
 膨らむ音世界は比較的短め。
 
 3度目の同展開へ突入し、今度はじらさずいきなり脈動しだす。
 そのまま混沌へ。
  
 ラストはブガッと一声唸って、静寂へ沈んだ。

 過激なハーシュさは控えめ。サンプリング・ループでリズムは常に意識できるが、ダンス・ビートとはもちろん無縁。
 ある程度の展開に配慮した、電子音楽って視点で作ってるようだ。

 リミックス元の音源は、あくまでも素材。音源への配慮は皆無。
 あらゆる意味で、メルツバウの作品として成立させた。

  (2004.4記)

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