Merzbow Works
Boris"Heavy Rocks"(Quattro UK Discs:2002)
大文字と小文字を使い分ける日本のバンド、ボリスが02年にリリースした作品。メルツバウと交流が深い彼らだが、本作ではゲストで1曲、秋田昌美が参加した。
アルバムはオレンジ一色と派手ながら、内容はごっつりハード・サイケロック。ギターの轟音はシンプルなハード・ロックのスタイルをとり、ボーカル入りもあり。しかしギターのごつい音色や、ドラムへのジェットマシーンっぽいエフェクトに、捻った志向あり。
個人的にハードロックは好みでなく、評価は辛くなる。純粋なハードロック・ファンには、一本道で押さない構成にもどかしさを感じそう。かといって捻ったサイケ・ロックで聴くには、王道ロックなアレンジに物足りなさも。立ち位置の難しい作品な気がする。
ジャケットの鮮やかさと収録音楽のギャップはユニークだと思う。ボーカルにもう少しパンチがあれば、迫力増したと思う。歌のミックスはかなり埋もれ気味。あえて、だろう。
アルバム全体を通し、歌に主軸は置かない。聴いた後の余韻は、重たいギターの凄みとしゅわしゅわ弾けるシンバルのアンサンブル。
ボリスはもっと混沌な世界観と思ってただけに、本盤は意外な印象だった。
ここではメルツバウの参加作品のみ、詳述します。
<各曲感想>
4.ワレルライド(2:42)
秋田昌美の名義にて、Powerbookがクレジットされた。冒頭で電子音が軋む。これがメルツバウだろうか。
スラッシュ・メタル的にぐいぐい迫るロック。ボーカルはコーラスと一丸で突き進んだ。ドラムが激しく叩かれ、ギターがボーカルの後ろでぎしぎしとリフを刻む。
ふと気づくと、どれがメルツバウの音かわからない。
ギターの背後で煙のように立ち上がり、ドラムのみが叩くブレイクのシーンでギターと一緒に騒ぐ、エレクトロ・ノイズ。
メルツバウの存在感はかなり薄まり、アレンジと一体化した。メルツバウである必然性は薄い。ボリスなら自力でこのノイズを織り込めただろう。なぜ、メルツバウを呼んだのか。
(2007.12記)