Merzbow Works
Frieze
(1997:Blast First)
たぶん、雑誌のオマケ。弾けるハーシュノイズが詰まった。
91年に創刊のアート雑誌、Friezeのオマケらしい。たぶんこのURLの雑誌だと思う。
実際はどういう流通形態か不明だが、当時はCD単体でレコ屋に出回っていた。昔懐かしい3"のCDシングル形態で3曲入りのコンピ。
CDは英Blast Firstの製作。収録はすべて日本人でマゾンナとメルツバウ、そしてMC Hellshit & DJ
Carhouse。最後のはヤマタカ・アイと大友良英の変名デュオだ。
(1)はアルケミーの盤"Ejaculation
Generater"(1996)の転載、(2)はライブ音源で95年3月25日に、英マンチェスターのDisobeyで収録。
(3)のメルツバウは詳細が記載無い。"Tauromachine"(1998)に収録の同名曲の編集音源。本盤へ収録のテイクが1分くらい長い。
録音は97年の5〜9月ごろ。本盤へ収録した音源を、さらにミックスして"Tauromachine"へ収録ではないか。
メルツバウのファン目線では短めで1曲だけと物足りないけれど。三者三様のノイズをコンパクトに楽しめる盤と言えるかな。
特にわずか一分強とはいえ、MC
Hellshit & DJ
Carhouseのライブ音源は貴重だ。かれらは96年に2枚のライブ盤を出している。そこからの転載かな?オリジナル盤を聴いたことが無く、判別つかない。
わずか20分あまりの時間で、まちまちなタイプのジャパノイズを入れた編集センスも大したもの。そして三者三様、あえてアンバランスな時間軸の作品収録も製作再度のこだわりだろうか。
<全曲感想>
1 Masonna "Ejaculation Generater 2" (Remix & Edit Version)
13:27
強烈な叫びとハーシュが撒き散らされる、マゾンナのスタイル。思い切り声にフィルター加工され、うねり倒す音像がスリリングだ。マゾンナと言えば瞬発的に終わってしまう印象あったが、ここでは13分の長尺でたっぷり味わえた。
スタート&ストップを隙間ない編集でひとつながりにして、唐突な跳躍と転換がそこら中で現れる。テンションが全く落ちず、なおかつ疾走感がたまらない。
絶叫シャウトとハーシュの噴出がとめどなく溢れた。
最後はディレイがゴムのように弾む余韻で幕を下ろす。うーん、かっこいい。
2 MC
Hellshit & DJ Carhouse "?" 1:11
曲名がついておらず"?"表記。インダストリアルなビートの断片を大友がDJで提示して、アイが絶叫で応える。
観客の笑い声が聴こえて、けっこう盛り上がってる。実際は1分で曲が終わり。アイがひとしきり叫ぶだけ。うーん、物足りない。もっと長尺で聴きたい。
3
Merzbow "Emission" 5:00
波打つ野太い電子のパルスが震えながらリズミックに現れた。この当時はラップトップ移行前かな。パルスが生々しく刻む。ビート感はあまり意識せず、脈動をノイズに変えた。
音作りの委細は不明だが、パルスはすぐに溶けて細かなハーシュとクロスフェイド気味に音像が変わる。変貌しっぱなしではない。入れ代わり、立ち代わり。
その合間に細かなハーシュが噴出する構成。音構成は千々に乱れ、剛腕かつ精妙で一つ所に留まらない。
唐突にぱっと音が切り替わる場面もあるので、一発録音ではなく長い素材を編集して作ったのかも。
うーん、これもカッコいい。ただしマゾンナのテイクと比べたら大人しめ。もっと落ち着いたオーケストレーション的なノイズで、まさにメルツバウの流儀といえる。 (2018/3:記)