Merzbow Works

"THE END OF THE FEAR OF GOD" <Tochnit Aleph:2004>

 ドイツのレーベルからリリースされたコンピ盤。
 1987〜88年にかけて活躍したスイスのハードコア・ノイズ・バンド、FEAR OF GODへのトリビュート盤らしい。
 不勉強ながら、FEAR OF GODについてはよく知らない。

 FEAR OF GODを加工がコンセプトのようで、いわゆるカバーではない、と思う。
 どの曲もノイジーだが多種多彩。全部で69種類のミュージシャンが入ってる、膨大なボリュームだ。

 もっともCD1枚なので、それぞれの曲は短い。
 だけど次々に登場する性質の異なるノイズに向かい合うのは、かなり体力いるよ。

 エレクトロ・ノイズが続くが、目を見張るほどの前衛性はない。したがって、寝技やひねり技を使ったテイクが印象に残る。たとえば・・・

 ハードコアの演奏をDJワークでシャープなテクノっぽくした(7)<演奏:Soviet Subliminal Seduction>。

 わずか30秒ながら、ピアノ・ソロで癒した(10)<演奏:Schurer>

 平和なギターの爪弾きにうがいボイスを足した(30)<演奏:Shoji Goto>

 ユニークなのが(9)。FEAR OF GODと思しきハードコアに、マイケルの"ビリー・シーン"みたいなサンプリングを挿入し、数十秒で終わってしまう。<演奏:Andrew Phillips>

 スタジオ録音風景で、女性の鼻歌を入れた(35)も謎だな。<演奏:Doris Tomasoni>

 ジム・オルークも一曲を提供しているが、単なるミックスっぽくていまいち。

 メルツバウは1曲を提供。たぶん、この盤のための未発表曲。

<各曲紹介>
38・Fear of God (2:02)

 バンド名そのまんまなタイトルを使用。30秒程度の作品が多い中、かなり長い時間を許されている。
 演奏はFear of Godの演奏を、マックで電子変調してるのかな。
 録音時期や状況のクレジットは、ブックレットにまったくない。まあ、本盤では、メルツバウに限ったことではない。

 聴こえる音はエレクトロ・ノイズ。
 しょっぱなからいきなり重低音が響く。こういう低音使いは、ほかのミュージシャンには見られず、新鮮だった。風景ががらりと変わるもの。
 おもむろに吹きだす、ハーシュノイズ。

 電子の咆哮は先鋭化し、ホワイトノイズの装いで左右のスピーカーを睥睨しながら移動する。
 エンディングはあっけない。

 Fear of Godの存在感をまったく感じさせず、ストレートにメルツバウの世界をぶつけた。

  (2004.12記)

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