Merzbow Works
Enema-Syringe "Ins Gefängnis Geworfene Blind Sklaven"(1999:Selfish)
Recorded at Kobe Earth Studio
1998
Recorded By, Engineer - Yasuhiro Yonishi
Mixed at Summer Eye-Studio
1999
Producer - Enema-Syringe
たんなる音源の棒繋ぎ編集に留まらぬ、凝ったカットアップやクロスフェイドが楽しめる一枚。ノイズとグラインド・コアの親和度を実感する。
本盤を入手時点は畑違いでさっぱり内容分からなかったが、今はDiscogsとディスク・ユニオンのWeb情報を元に、なんとなく概要がつかめた。表題はドイツ語。「刑務所に入れられた盲目奴隷」って意味かな。その他のクレジットもすべて英語、海外版っぽい趣きだが、実際は日本のレーベルSelfishの発売。
本レーベルは86年から93年頃がおそらく活動の主要期、その後は断続的に95〜2011年までリリースがある。本盤はその後期のリリース。
本盤の主役は、グラインド・コアのバンドEnema-Syringe。以下のメンバー編成で、":"より右に参加バンドを記載した。メルツバウとは以下二人のメンバーが参加した、ゴア・ビヨンド・ネクロプシーとも共演盤がある。メンバーの漢字表記は分からなかった。
<Enema-Syringe :Personnel>
Akinobu Ohtaki(vo) :Gore
Beyond Necropsy/Gibbed
Junichi Kawasaki(g) :Gibbed,Voidd
Kiyonobu
Ohtaki(b) :Gore Beyond Necropsy, Noise A Go Go's, Repulturid
Mangel
Youichiro Natsume(ds):Gibbed(as a support drummer),Force, Multiplex
本盤は約31分1トラック、一気に進む。数分ごとにゲストのノイジシャンと自らの演奏をカットアップさせる構成だ。ゲストはMERZBOW、INCAPACITANTS、MASONNA、PAIN
JERKら、第一次/第二次の日本ノイジシャンらが集結。ノイズ好きには豪華な顔ぶれ。
いかんせん、そのバンド名義のみを集中して聴けないのが困り者。
録音クレジットは98年とあるが、ノイズ部隊とエネマ・シリンジの演奏はきれいに分離されており、おそらくこれはエネマ勢のみの録音。ノイジシャンらは各種音源の提供にとどまったのではないか。
<曲紹介>
メルツバウのみを分離して聴くのは不可能なため、まとめて感想を書く。数分ごとのカットアップで、エネマ側は全8曲、曲名が付いている。ノイズ側はバンド名のみ。
参加順はMASONNA、PAIN
JERK、INCAPACITANTS、MERZBOW。最後にもう一度、マゾンナが現れる。ノイズ側も細切れのカットアップで、マゾンナが3トラック。あとは全てにトラックづつの音源を提供した。
ハーシュ・ノイズの奔流の合間に、ハードコアが爆走する構成だ。エネマは1バスのブラスト・ビートにデス声。ベースが鈍くリフを刻み、ギターがうねった。このジャンルはほとんど聴いておらず、エネマならではの個性がどこにあるかコメントできない。
今の耳だといくぶん、ドラムがシンプルでスッキリしてる。音圧をミックスで潰しにかからず、テープ・リミッターで歪ませてる感じ。
ディストーションと耳をつんざくフィルター・ノイズをノイズ各人はノービートで噴出した。音量さえ気にしなければ、むしろノイジシャンらが穏やかに聴こえる場面も。
ペイン・ジャークの淡々としたフィルター・ノイズと、高らかにうねる響きに耳を猛然と洗われた。インキャパは冒頭でまるっこいノイズで登場・・・だと思う。このアルバム、ついどこまで進んだか分からなくなる。
完全にノイズとエネマは切り離されておらず、ドラムがクロスフェイドで現れる場面も。そして全体的にエネマ側のほうで、尺が短い気がする。
メルツバウはがっつりザラついた複数のノイズで登場した。エフェクタとシンセ、双方が両立してるかのよう。決して音を埋没させず、蠢く混沌を表出させる。
カットアウトされ雑踏めいた電子音に。奥行深い複数のフィルター・ノイズが風を吹かせ、緩やかにうねった。シンセかなにかの蠢きに、微かに幻想言語を連想する。
ふわんと残響を響かせ、エネマへ役割を譲った。
小気味よいエネマのサウンド。すぐにシンセが被り、分厚い音の毛布をかぶせてきた。これもメルツバウの音か。
デス声の登場で、ぱっと装飾が剥がされシンプルなアレンジのバンド・サウンドに。
いったんブレイク、再びノイズ世界へ。一瞬の超高音周波数。改めてフィードバックを混ぜたフィルター・ノイズが獰猛に降り注いだ。
だがごく短い。すぐにエネマの世界へ切り替わる。
改めて聴くと、このへんのカットアップ構成は見事でカッコいい。
メルツバウ。もどかしいハーシュが身を広げ、右チャンネルで噴き上がった。左では大人しく滲む。左右クッキリと世界を分けた。
エネマ。すぐさま切り替え、ドラムの降り注ぎとデス声に。
最後はアンプから滲むノイズそのものを綺麗に鳴らした、マゾンナで締め。美しく穏やかなシンセの響きが被さった。これで終わらせず、最後は混沌の絶叫だけど。意外に本盤の冒頭へ、素直につながる。 (2015/11:記)