Merzbow Works
Duo CD 6
(1) Recorded at ZSF Produkt Studio, Tokyo
(2) Recorded at
Studio Penta, Otsuka, Tokyo
デュオに着目した音源集。(1)は明確な対話がじっくり続き、(2)は異なる楽曲での対比でデュオの構造を明確化した。(1)は比較的聴きやすいが、(2)は少々退屈なセッション。今一つ、盛り上がらない。コンセプト先行で音を集中力持って聞けなかった。
<各曲紹介>
1."1 May 1988 B" (30:43)
同じ日の別音源は本ボックスCD8に収録。
ここではいきなりの軋み音から。自宅スタジオゆえか、くっきりとエッジが立っている。冒頭からエレクトロ・ハーシュが全開だが、上がりきらず煮え立つような軋みが特徴だ。暴力的なノイズ炸裂のカタルシスではなく、じわじわと音を解きほぐす。
三種類のノイズが聴こえるが、ダビングだろうか。いや、同時並行でエフェクター操作のほうがありえそうだ。
特に楽曲は構成が無いものの、左側の軋みは同じフレーズが繰り返される。当時のエフェクター事情は不明だが、即興的にシーケンサーへ取り込み鳴らしていたのかも。
5分過ぎには人の声を変調したっぽい音色も現れた。
基調はエレキギターと思しき、弦の震える響きがミリミリと強くうねる。個々の音色はくっきりと分離され、ノービートで混ざっていく。オーケストレーションめいた構造が、いかにもメルツバウらしい。
力押し一辺倒でなく、若干の盛り上がり変化あり。6分あたりですっと音が弱まり、一転してエレキギターの早弾きっぽいノイズが主軸に。他の音がきれいに整理された。
音色はやがて変調し、シンセ風の尖って平べったい音に変わっていく。繰り返される音程を持ったフレージングは、プログレの鍵盤も連想した。
ノイズではありながら、ここから続く数分間の音像は明らかにハード・ロックだ。
13分を過ぎるころから、アナログ・シンセが加わる。対比して蠢き合うさまは、まさにデュオかもしれない。本ボックス他の音源と同様に明確なバトル構造は取らないけれど。
このバトルが最後まで執拗に続いた。ほんのりとブルージーに。メルツバウとハードロックの親和性が明確に出ている。当時発表された音源はここまでわかりやすくない。だからこそ本音源は、お蔵入りしてたのかも。
2."15 September 1989" (37:06)
全く違う日の録音だが、前曲とあまり落差無く始まった。大塚の貸しスタジオ・チェーン、ペンタでの収録。鈍く響く低音とエンジンのような唸りがあいまった音像で幕開け。
音像に派手さは無いが、ボリューム上げると胸を締め付ける凄みが飛び出してくる。それが次第に純化され、高音に推移して静まった。これを約5分間かけて、じっくり味わえる。
そしてそのまま、淡々とフィードバックやハウリングを背後にまとったノイズに。きれいではあるが、この単調性はメルツバウにしては意外だ。矢継ぎ早ではないにせよ、みるみると音像を変えるのが特徴と思うが。
科学実験かのように、じっくりとノイズへ対峙した。
やがてドラムが登場した。じわじわ響く低音を泡立てるでもなく、淡々と太鼓が叩かれる。シンバルは鳴らない。
ハムノイズとフィードバック、ドローンと、各種の電子音が下を埋め尽くし滴る中で。
ハイハットが軽く連打され、スネアのロールに。ときおりシンバルも混ぜたドラムに。ビート感は希薄だが、ドラムのテンポは一定だ。バスドラの連打とシンバルの打音。叩いてるのは秋田か。
ノイズ的ではないが、ドローンとドラムの合体は奇妙な不安定さと、違和感を漂わせた。規則性と無秩序、どちらへも寄り添わず中途半端な立ち位置を演出した。
ドラムのアクセントと無関係に、エレキギターのディストーションが重苦しく響く。20分40秒あたり、ふっと隙をついてドラムがいきなりパワフルに叩き始めた。
生き生きしたビート感は面白いが、ノイズとしてはちょっとピンぼけな感じ。
(2016/2:記)