Merzbow Works

動静(Sub Rosa:2002)

 副題に"Japanese Avant-Garde:Agitation/Stillness-Noise/Silence"とある。
 編纂者のクレジットはなし。タイトルどおり日本の静かめな前衛音楽を集めたコンピレーションだ。
 
 メルツバウ以外に、大友良英、サチコM、Haco、グラウンド・ゼロ他を収録。
 録音クレジットはまともにない音源が多いが、新録と旧譜が半々と思われる。

 なぜかブリュッセルで録音したインタビューも収録。(Takashi MiikeとShinya Tsukamoto。映画監督らしいが、ぼくの勉強不足で詳細を知らないので、特に漢字に直さないままでおきます。もしご注意頂ければ直しますが・・・)

 あたりまえかもしれないが、二人のインタビューは日本語のまま。聴き手が日本語を理解しないことを想定し、全訳がブックレットに載っている。
 ならばわざわざ音源で載せず、そのぶん別の音楽を載せればいいのに。日本語の響きか、監督の肉声を聞きたいってことか?いまいち発想がよくわかんない。

 白バックのジャケにわざと印刷ミス風な汚しを入れ、チープな感じを出している。
 裏ジャケの写真がこれまた変。
 わざとらしく悲鳴をあげる白人らが乗ったジェットコースターの最前列で、空虚な笑みを浮かた女性が、チャイナを着て両手を広げて立つ。
 左手にはなぜかバナナが一本。わけわからん・・・。
 
 画面右手には「国際電話料金急降」という、縦半分が切れた漢字。
 ぎざぎざな写真の切り口は、中ジャケで空白になった雑踏の写真にはめ込めるようだ。もちろん、どちらの写真も合致するわけがない。
 日本を理解させたいのか、誤解させたいのか。ギャグなら中途半端な気がするぞ。
 
 音源そのものは面白いものが多い。
 So takahashiのジリジリしたノイズ、隙間をいかした電子音のBisk。
 Hacoのトラックは切ないピアノにノイズがかぶさり、坂本龍一を連想した。
 ほのぼのとしたAki Ondaの曲もいいな。これはZakがミックスしている。

 得意のサイン波でサチコMが攻め(録音と編集は大友良英)、View Mastersは日本の混沌を象徴するパチンコ屋の喧騒をうまく使った(編集はHaco)。

 グラウンド・ゼロは92年5月のライブを収録。しっちゃかめっちゃかに盛り上がって、あっというまに切り捨てる。
 この音源は未発表でなく、当時7インチで発売された音源らしい。
 大友良英の単独名義はノイズ・コラージュ。めまぐるしい断片のDJ的作品。ダンスビートは特にないが。

 見かけたら手にとって損はない一枚。小粒な点は否めないが、良質の音響作品が詰まっていると思う。

 メルツバウは一曲だけ提供している。

3.Lux Automobile(Krokodil Rock Mix)(7:06)

All music by Masami Akita
Recorded and mixed at Bedroom


 クレジットは上記のみとあっさり。おそらく、00年から01年にかけて録音された作品だろう。
 同じく02年に発表されたフルアルバム"Amlux"に、収録された曲"Luxurious Automobile(Krikodile Texas Mix"の別ミックスだ。

 "Amlux"版は20分以上あるが、ここでは7分とコンパクトに構成した。
 副題はエルトン・ジョンを連想するが、特に関係ないんだろうなぁ。
 この時期のメルツバウは動物に関連付けた作品が多い。本作もその一環かもしれない。

 全般的に静かめな音像。アルバムコンセプトにあわせたの?
 スピーカーを下降する不安定なループが覆い尽くし、断片的に数本のハーシュが火を噴く。
 おそらくPC製のノイズとは思うが、ムードはいまひとつ沈鬱だ。
 
 中盤でビートの効いたトラックが登場、雰囲気をがらりと変える。
 先ほどと特に変わっていないのに、ハーシュはうまいアクセントへ変化してきた。

 ときおりダブ風にずれつつ、ビートが流れる。たまにノイズでかき消されるも、しぶとく存在を主張しつづけた。
 ハーシュはずっと噴出してるが、ドローン風なアルバム・テイクと趣をがらり変えている。
 メルツバウにしてはえらくポップなまま終了。
 
 最後30秒くらいで登場する、アッパーなノイズの音圧が心地よい。この音をテーマに作って欲しかった。

(03/1/3記)

一覧へ

表紙へ