Merzbow Works

Cristal Fist feat Universal Indians(1999:Zero)

Cristal Fist:
Masaru Kawayama a.k.a. 8Kg-2turn tables,3CDJ,Mixer,Effector
Kuknacke - Effectir,Mixer

Universal Indians:
Masami Akita - Drums,EMS
Bara - Voice,Percussion

Live Stuff:Yasunori Ikunishi - Video Scrutch
      T.K.D. - EQ,Mixer
Engineering & Mastering:
Kazunao Nagata(5th Member) at Transonic studio 12.21.1998

 新宿のLiquid Roomで1997年の2月22日に行われたライブの音源。
 それぞれの経歴は不明だが、二人組みのDJグループ(?)Cristal FistにUniversal Indians名義でメルツバウが加わった格好。

 Universal Indiansは秋田昌美がドラムとシンセを担当、BARAが声とパーカッションで参加する。

 どういうイベントだったのか、よくわからない。
 聴いてる限り、ダンス系でもなさそう・・・。ノイズ系のライブかな。
 わずか30分足らずの演奏だから、もしかしたらこの日はもう一セットくらい、秋田が登場した可能性もある。
 いや、そもそもこの音源が編集済かもしれないね。

 邦盤であり、なにも情報のないジャケットが悔しい。
 細かな情報も記載して、リアルタイムで参加できなかったリスナーが、追体験可能にしてほしかった。

 もっともこの盤を聴く限り、記録的要素が強い。作品としての磨き上げは皆無。
 音楽は即興要素が強い。あくまで流を楽しむべきだろう。
 作品として繰り返し聴くことを、どこまで想定してるか疑問だ。

 30分一本勝負でリリースされた本盤は、むしろ突き放すようなそっけなさ。
 ダンスビートでなく、ダークな空気を味わいたいときに似合う。

 でかいボリュームで聴いたら、臨場感が味わえそう。
 陰鬱な空気がもたらす迫力はかなりのもの。
 ラストはフェイドアウト気味で、観客の歓声はなし。

<全曲紹介>

1.(no title) (33:10)

 
 一分程度の静寂が続き、おもむろに音が現れる。
 仏教くさいノイズに虫の声。遠くで祭りでもやっているのか。群衆の声がうっすら聴こえる。

 次第に混沌とし、アジア風味が強まる。
 どこまでがサンプリングで、どれが肉声や生演奏かはいまひとつ分からない。
 男の低い唸り声が響き、後ろでドラムが単調に連打。
 このドラムが秋田昌美かな。

 ビート感は皆無だが、ドラムは手数を次第に早める。畳み込む連打。
 わさわさと声が収斂し、電子音が染みてきた。
 そこかしこに声が飛び交う。もう人間くささはない。あくまで素材として声を使った。

 呪術っぽく盛り上るビートを主役に、電子音はドローンで空間を彩るのみ。
 ドラマーは二人いるように聴こえる。一種類はサンプリングか?
 
 11分経過、やっとノイズが鎌首をもたげた。
 重低音をふんだんに響かせ、しゃにむに連打するタムを支えて。ハーシュの雲があたりを覆う。
 こもり気味な音なのが惜しい。
 
 ドラムがさらに熱っぽく鳴った。
 空気が凶暴なムードに姿を変え、鋼鉄の雨を降らす。
 ずっとタムを連打する秋田のドラミングが、かえって違和感あるくらい。
 風景はいかように変化しようと、まったく意に介さずドラムへ集中する。

 いったんドラムが手を休めた。
 いくつもの重たいノイズが、じわりと侵蝕を続けた。

 ふたたびノーリズムのドラミングが再開した。
 ハウリングっぽい響きも引き連れ、空気は重たく両肩を押し付ける。
 複数の音素材が絡まり、音圧がすごい。

 ハーシュの獣が、尻尾を降り勢いよく動き出した。
 獣を煽るかのように、タムの連打。ピッチはけっこう高い。
 脈動。息荒く身体を揺らし、ドラムと連動したかのごとく世界はスピードを増す。

 もはや先ほどの暗闇は突き抜けた。
 いまはドラムとハーシュの絡みが世界の中心。

 仏教ぽい鈍い響きが、またも中央に浮かんだ。
 かまわず格闘するドラム。ハーシュは左右に激しくパンされ、高速連打のタムと張り合う。

 秋田のドラムがますます派手に鳴る。
 ハーシュ獣はだいぶ身を削ぎ落とされた。やせ細りつつ抵抗を続ける。
 男の鈍い唸り声が、黙々と中央で響いた。耳につく中音域のドローン。

 ハーシュ獣は姿を消し、ドラミングは音色ががらりと変わった。
 ・・・いや、物陰から鼻息が聞こえるぞ。
 
 硬質なタムが激しく打ち鳴らされ、男の唸り声をはじきとばそうとする。
 存在感をたんまり滲ませ、男は中央に立ち尽くす。しつこいほどに。
 さすがのドラムも、こればかりは排除できないのだろうか・・・。

 連打。乱打。痛打。猛打。
 さまざまなニュアンスで、手早くビートを提示する。

 リバーブを響かせたドラミングは、男の声をいったん消し去った。
 シンセが風景を変え、中音域のドローンに味付けする。

 ドラミングは余韻のごとく。
 男の唸り声がなおも登場し、全てを消し去って存在を継続させた。

  (2003.8記)

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