Merzbow Works
Crush of the titans(Mercliless Core
Records:2001)
Ma plays macintosh powerbook G3
All
processed by masami akita at the bedroom itabashi
⇒ English page is here.
チェコでリリースされた珍しいCD。全世界まんべんなくリリースされてるな、メルツバウは。
地元(?)のノイズ・ユニット、NapalmedとのスプリットCDだ。
全6曲中、2曲をメルツバウは提供している。
ジャケは力士の多重露光。中ジャケもスポーツ新聞あたりからサンプリングしたとおぼしき日本語のタイポグラフィーと、デザイナーはかなり日本びいきみたい。
クレジットを見る限り、メルツバウは音源を提供したのみ。
あとのデザインには関わってないようだ。
ジャケの写真には、なぜか防毒マスク(避難マスクとある)をかぶった男女の写真を使用してる。
音源もシンプルさもあいまって、かなりそっけないイメージだ。
どういうきっかけでこのCDはリリースされたのか。
いっぽうのNapalmedだが、かなり元気なメタル・ノイズ。
単一イメージに凝り固まらず、人力で精力的に作品を作ってる模様。
"Metal Fabricunt"と題された曲群を4曲提供。
曲のナンバリングが非連続なとこをみると、ほかにもいくつか作ってるんだろう。
かれらは自宅で2001/1/14にメタル・ノイズを録音し、1999/11/20〜21に収録したフィールド・ノイズを、2000/1/17にミックスする手法で作品を作った。
男二人からなるノイジシャンだが、曲を聴く限りいろいろアイディアを持っていそう。
メルツバウに比べると、いくぶん過激さは少なめ。
さて、メルツバウの曲のみを個別に感想書きます。
それぞれの曲の前に10秒以上も無音部分をつけ、それぞれの曲のイメージをくっきり分けた編集が個性的だ。これはNapalmedのアイディアだろうか。
(各曲紹介)
2.chemlage mini(19:40)
"chemlage"は辞書に見当たらず、意味不明。
1999年12月に録音され、編集とミックスは2000/1/26に行われた。
すべてマックで編集したノイズ作品。この時代の得意技だ。
冒頭で一瞬、単独で発信音が高く鳴る。
ストイックな雰囲気をするりと漂わせ、すぐさまハーシュ全開へ転換した。
複数の電子音素材をミックスさせ、多層構造で迫る。
たぶんマックで波形をリアルタイム加工だと思う。
けっこう短時間にひょいひょい音像は変わる。
ハーシュながら、どこか軽い印象。さくっと作った感じ。
うねるループを継続させ、その上でのんびりノイズが寛ぐ。
ループそのものはしょっちゅう音色が変化し、ちょっと聴いた程度じゃ継続性はわからないが・・・。
最初聴いた時は、過激かと誤解した。
だが数度聴いて耳慣れると、かなりリラックスしたイメージにも聴こえる。
実験室であれこれいじる様子のスナップ写真、とでも言えばいいか。
迷いではなく、自由に動く素材をどう仕上げる見定めてるみたい。
もう一曲と思い切り逆ベクトルの作品だ。
轟音で響かせたら、また印象変わるにちがいない。
部屋にて小さめの音で聴いてたら、くるくる万華鏡みたいに変わる様子が面白かった。
ハーシュ一辺倒じゃない。時にはぐっと隙間の多い素材も。
パルスや繰り返しが一つのテーマか。
ダンサブルさとは無縁だが、ランダムに登場したノイズは常に数度くるくる回転した。
唐突にスパスパ音像が切り替わる。この辺が編集ポイントか。
曲に一貫したイメージを持たせたり、どこかにメリハリをつけたり。
そんなふうに聴き手を集中させるポイントも見当たらない。試行錯誤の一曲っぽい。
中盤できらめく電子音は、輝く噴水の中へ頭を突っ込んでるかのよう。
兇悪ハーシュが14分を経過したあたりで登場。
フィルター・ノイズをさんざんに閃かせ、透き通った風景をふんだんに振り撒く。
そのままエンディングへ一気呵成。
ラスト20秒で急に音が途絶え、ハム音が静かに響く。
冒頭とエンディングのメリハリはしっかりしてる。
5.untitled-1(15:27)
録音とミックスは2001/7/1。それだけの情報が、ジャケットへぽつんと記載された。
とことんシンプルなハーシュ・ノイズの連続する作品。
展開はまったくといっていいほど無い。
耳を澄ませばかすかに音が揺れ、素材が入れ替わる・・・気がする。
15分にわたって、ひたすら噴出すハーシュと対峙せねばならない。
フィルター・ノイズを数本重ね、中央突破を図る。
集中して聴き、ふっと息をついた刹那。
「あれ?この音はさっきもっと小さくミックスされてなかったっけ?」
そして音の変化に気付いた。
緩慢に首をもたげ、鈍くあたりを睥睨する。
王者の風格・・・じゃないな。もっと無欲な存在の視点だ。
なにも変わらない。なにも変えない。
どんより呼吸して立ち尽くす。
ときたまぶつっと音が途切れるのはなんだろう。コンピュータ処理のはずだが・・・編集の切れ目かな。
派手なノイズを求めるなら、ある意味こういう変化が少ない作品が適してる。
また、アンビエントのようにじっくり聴きこむのも可。
これは皮肉でもなんでもなく。聴き手に意味をもたせやすい作品だろう。
最後はフェイドアウト。未練も残さず、しゅーっと消えた。
(2003.8記)