Merzbow Works

Cloud Cock oo ground (ZSF Produkt:1990)

All Materials by Masami Akita
Mixed by MA at ZSF Produkt Studio 17 4 90

 おそらくメルツバウの初CD。番号は"MERZ CD-01"とクレジットされた。 
 このときはメルツバウが自主制作のレーベルを持っていたようだ。リアルタイムで聴いてなく、どう流通していたかは不明。
 クレジットには500枚限定とある。これが秋田昌美の、実質的なソロ1stになる、とスタジオ・ボイス誌(2000年3月号)で書いた。

 本盤は後に、50枚組のMerzboxにも全曲収録される。マスタリングはMerzboxのほうが音にガッツあり。これ、90年のリリースだからな・・・仕方ないか。
 個々の曲の録音期日が、きちんとクレジットされている。日、月、年って並べる(例:17 4 90)順序が新鮮だった。どこ流だろう。
 89年後半の音源を中心に、(1)を年明けに録音した構成だ。

 ジャケット・デザインのクレジットは見当たらないが、写真を加工したような、抽象的な絵柄。ケース外に濃い青色ベース(でいいのかな。美術やデザイン関係をうまく説明できない・・・)の紙カバーあり。
 インナーは紙の二つ折りのみ。

 爽快なハーシュ・ノイズが存分に味わえる。くるくると音像が変わる上、さまざまなタイプのハーシュが現れるため、単調さが皆無。傑作な一枚。
 エレクトリックやメタリックなノイズの、快感の"響き"を追求したサウンドだ。この頃のライブを体験したかった。

<全曲紹介>

1.Brain forest for metal acoustic concrete (23:39)

 90年1月9日に録音。コラージュ風にとっ散らかった世界が提示された。個々のブロックを長めに置いて、混乱は無い。むしろドラマティックな感触。
 メタル・パーカッションやテープのコラージュに、モーター音の唸りも。
 ハーシュ・ノイズがその隙間を前面や後ろで埋める。
 ただし全面轟音一辺倒ではない。時にはぐっと音を減らしたテープ・コラージュで、空虚な音像で不安を呼び覚ましたりも。

 中盤ではミニマルなカット・アップがせわしなく蠢く。
 いろんな要素をぎゅっと押し込み、アイディアいっぱい。
 エンディング間際で、ぐうっと迫るメタリックなノイズの響きが心地よい。

2.Spinnozaamen (24:04)
 
 数秒のブランクをはさみ、曲が始まる。89年の10/23と同年12/8の音源をミックスした作品。
 冒頭からべたっとハーシュが埋め尽くす。奥行き深くみっちり詰まったイメージがまず浮かぶ。
 めまぐるしく音調は形を変え、とどまらない。6分あたりでブワブワと膨れる波長が素晴らしい迫力だ。

 ぐいぐいとエレクトロ・ノイズが溢れ転がる。躍動するパワーが詰まって、まったく色あせない。
 メルツバウの得意技な複数ノイズの並行進行が、スリリングに味わえる傑作。ストーリー性よりも、様々なアイディアを連続投入しているようだ。

 最後は静かに、からからとメタル・パーカッションで締める。これは手弾きだろう。空気を歪ませる響きは、のこぎりか何かを揺らしたのか。

3.Autopussy Go No Go (7:40)

 ジャスト・ビートな前半の進行が新鮮だ。パルス状態のリズムが、ループのように動く。テクノ・タッチな作品。89年10月19日の録音とある。
 前に聴いたときは気づかなかった・・・。00年以降にマックを使って、ループを多用するノイズの萌芽がすでにあった。

 ダンサブルとはちと方向性が違うものの、一定のビートとハーシュ・ノイズが溶け合う響きは聴いてて好奇心をくすぐられる。
 そして中盤からはビートがいったん消え、左チャンネルのノイズの蠢きが、新たなビートに変わる。

4.Modular〜 Postfix(18:52)

 一転して無秩序なノイズの奔放が吹き出す。右より左チャンネルのほうが音圧強く感じるのは、ぼくのスピーカーがおかしいせい?
 これは89年12月3日の録音だが、同年9月23日にオランダのHertogenboschとNijmegen(日付不明)で行われたライブ・テイクが含まれてるそう。

 どの辺りがライブ・テイクなのかはさっぱり分からず。
 ノービートで吹くハーシュ・ノイズは、台風の中へ頭を突っ込んだかのよう。情け容赦なく風は吹き荒れ、耳を休ませはしない。 
 個々の瞬間を楽しむより、全体の流れに身を任せたほうが味わい深い。
 メルツバウのハーシュ・ノイズが、大河のように進んでゆく。

 なお、クレジットは5曲あるが、インデックスは4曲ぶんのみ。MERZBOXと聴き比べてみたが、本盤はどうやらメドレー形式になってる様子。
 しかも曲の長さは5分ほど、本盤のほうが短いショート・ミックス。"Postfix"の途中で切れてるみたい。 (2005.10記)

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