Merzbow Works

"Belly of the whale"(Important records/2006)

 環境アートのネット美術館(芸術家のデータベース的な位置づけか)、Greenmuseumの企画とおぼしき編集盤。本盤のURLはこちら

 10ヶ国18人の作曲家へ声をかけ、6分未満の曲を集めた。海生哺乳類や魚や海老の音、さらに氷の割れる音や波などの各種音源を、素材として使用して。実に300もの音源サンプルを提供したらしい。
 
 なんとも中途半端なテクノ・アンビエント盤に仕上がった。
 声高に環境問題を主張するヒステリックな熱気はない。爽やかな安定を目指す電子音楽でもない。ミニマルでどこかダウナーな作品が連発する。開放感も希薄だ。
 音素材は本当に素材となり、海の持つ雄大さや神秘さが電子の海で矮小化されてしまったかのごとく。

 電子音楽としては、有りだと思う。環境問題への激しいプロパガンダ盤は好みじゃない。とはいえもう少し、自然の不可思議さを強調した音楽を目指したってよかったのでは。一枚聴きとおしても、なんとものっぺりしたイメージが残る。

 メルツバウは1曲を提供。その曲のみ、詳述します。

<曲紹介>

6. 風のはるか (4:12)

 日本語タイトルを堂々とつけた。ちょっと浮き気味なフォントがほのぼの。録音クレジットはない。新曲だとは思う。

 鳥の鳴き声(?)をせわしなくサンプリングし、うっすらとふくよかな低音と高音ノイズをかぶせた。轟音は控えめに、地平線のひろびろを表現する。南極あたりでペンギンが鳴く風景が浮かんだ。

 爽やかな電子音はトーンを落とし、ふうわりと着地した。空間を活かし、甲高い音がちりちりとさんざめく。
 散発で挿入される、軽やかな金属肌のノイズ。わずかなノイズのみが生む、静寂をうまく表現した作品。

 最後の最後で、ごくわずかのハーシュがきらめく。小さな音で、すごく遠慮がちに。  (2006.10記)

一覧へ

表紙へ