Merzbow Works
Artificial Invagination(Vanilla,Japan:1992)
All electronics/Tape manipulation by masami akita
Voice by Reiko A.
mixed at ZSF Produkt studio,Tokyo Oct/91
ぼくは後付けで入手したため、当時の本作に対する評価はよく知らない。
邦盤だがクレジットは全て英語なため、てっきり輸入盤かと思った。今では貴重になりつつある、3インチ・シングルCDでのリリース。
92年といえば、まだCDシングルが市民権あったころ。何枚くらい流通したんだろう。
3インチ盤とはいえ、中身はぎっしり。20分もある。
内容は90/9/23にニューヨークのweboでと、91/9/17に名古屋の"Succes
hall in Kawaijuku no.16"で行われたライブの音源をスタジオで切り刻んだもの。
一聴しただけでは、どういう風にミックスされているかさっぱりわからない。
ところで日本でのライブは予備校の河井塾が主催のイベントだったのかな。さすがバブルの時代・・・。夏休み明けにメルツバウのライブを聞かせて、受験生に何を期待してたんだろう。
このライブを聴いて、元気出せって親心かね?(笑)
ちなみにReiko.Aの声は判別できじまい。電子加工をしてるんだろうか。
1.Wing over(20:52)
破裂音が数発。戦場へほおりこまれたかのような緊張感だ。
ノイズは空間を埋め尽くさず、時に咳き込むがごとくぶれる。
地響きとともに一瞬現れるサイレン。すり潰され、なぎ倒し、しゃにむに前へ突き進む。
テープコラージュっぽさを思わせるが、猛スピードでカットアップされ個々の音像を掴むのは困難だ。
破砕された断片が次々噴出すさまが、すさまじく爽快。
あからさまな展開はなく、矢継ぎ早に音が加工される。
4分辺りで提示される、浮遊感あるダブ風処理が好き。
怪獣の咆哮とも取れる。戦場か嵐の中で翻弄するさまも頭に浮かぶ。
轟音一辺倒で押さず、時には一歩引き、ぐっと下がった音で構える巧みさもあり。
その備えあってこそ、スピーカー最前方へ押し寄せた時のスリルが増すというもの。
断片的に浮かぶのは、巨大ななにかの到来と立ち向かう集団とのせめぎあい。
ループされる低音でマシンガンの炸裂を連想した。
複数のライブ素材を混ぜ合わせた痕跡は、ぼくの耳では区別できなかった。
あくまでさまざまな電子ノイズの連なりにしか聴き取れない。
スリリングさはあるが、切迫さや圧迫感は控えめ。部屋のスピーカーで小さく聴いてるせいもあるだろうが。
ドラマティックに展開するノイズの流れを楽しんでる間に、曲が唐突に終わる。
CDシングルの収録時間をめいっぱい使った佳作。
すかっとしたい時に、ちょうどいいサイズではないか。
(2002.12.15記)