Merzbow Works
Animal
Liberation (2015:4iB)
Merzbow:Track 1: Mixed at
Munemihouse, January 2013.
三者三様のハーシュ・ノイズが楽しめる。骨太、繊細、そして峻烈。
Merzbowに加え、Raven、Dao De NoizeとのスプリットCDで限定200枚。
メルツバウは新曲を提供した。録音は2013年1月。発売まで少し時間がたっている。
なおこの音源は同年発売のメルツバウ単独作品"Hatobana"に再収録された。それだけ手ごたえある作品ということか。
ジャケットはそっけない三人の曲クレジットのみで、特に動物愛護のメッセージを強力にアピールはしない。逆にテーマへ引っ掛けてメルツバウを含めたノイズ・アルバムのリリースこそが主眼か。
Ravenはセルビア中西部チャチャク出身なDjordje
Miladinovicによるハーシュ・ノイズのソロ・ユニット。2011年頃よりさまざまなレーベルから70枚以上の作品をリリースしてる。Webはこちら。Bandcampのこちらで音源が入手できる。
楽曲は音を埋め尽くすパワー・ハーシュ。うなりを上げる低音と空間を埋め尽くす吹き上げがパワフルにあたりを揺らした。
若干の音変化はあるものの、基本的にこの曲はワンアイディアで構成の力押しタイプ。キーワードは骨太。
Dao De
Noizeはウクライナ出身Artem Pismenetskiiのプロジェクト。やはり11年頃に活動を始めた。リリース量も数十枚あり。Webはこちら。
メカニカルな複数のノイズで、ハーシュながら力よりも質感や空間を揺らがせる。ぼくの好み。すべてのノイズを古ボリュームでなく、ミックスで差をつけて奥行きや虚無感を見事に描いた。
音変化を与えながら、逆に当初のイメージを崩さず立体的な小宇宙を丁寧に描いた。恐ろしくもスペイシーでカッコいいノイズだ。キーワードは繊細。
本盤のようなスプリットを聴くと、ハーシュ・ノイズの多様さを感じる一方で、メルツバウほどの多彩さや鮮やかさ、迫力と変貌ぶりの才能を痛感した。。
変わらないが変わり続けることの凄さを、メルツバウは体現し続ける。本盤でのメルツバウのキーワードは、峻烈。
<曲紹介>
1.Granulation 221 (20:04)
ここではメルツバウのみ感想を詳述します。
冒頭はコラージュめいた急速な音の雪崩れ。そこへメカニカルなノイズが加わった。電子ノイズの疾走とパーカッション。混沌ながらすっきりと前へ進む疾走感が存在する。
生々しいアナログ・ノイズの炸裂が鋭くそそり立つ。複数のノイズが混在し、展開なメルツバウ流の多層音像だ。
むせび泣くノイズの濁流がうねる。中心を置かず全体が絡み合い大きな太い線を作った。
きりきりと細い線が高まるところは、過去のアナログ・ノイズに通じる。ループはPCだろうか。
パーカッションは生演奏でなくサンプリングの一要素として音像へ練りこまれた。常に刻んでいるわけではない。
奔流が逞しく貫き、暴れながら周囲を巻き込み疾走する。痛快な生命力と勢いを持った曲だ。
それでも細部は聴き分けられる。濃密だが精妙なノイズはザラつきと棘をあたりに振りまく。触れられない危なさ。
12分過ぎに音像全体がスッと揺れる。だが崩れたりタレずに再びスケール大きく躍動した。シンセめいた明るい響きを新たに身へまとい、さらに風を切りながら。
やがてノイズは外骨格めいた硬質さを持ち、空洞を内部へうかがわせる。硬く輝く外部の中で、小さく激しく回転し続けるコア。
ノイズの視点は俯瞰から中央に向かい、奥行きと高さを表現した。
さらに終盤では密度が再び埋まり、太く詰まった世界を広げる。終盤はPCノイズ的なアプローチだ。 (2017/5:記)