Merzbow Works
V.A."Ju-Jikan"(23five Incorporatied:2002)
01年にサンフランシスコの近代美術美術館で行われた、日本音楽の歴史を紹介する"Ju-Jikan"イベントのCD化。ジャケットには「10時間」と日本語表記もあり。
現代音楽、アヴァンギャルドに視点を置き、さまざまな切り口から10時間分の音源を用意したようだ。ノイズ系ではペイン・ジャーク、メルツバウ、灰野敬二、大友良英、マゾンナ、ハナタラシ、古舘哲夫、高橋悠治らの名前あり。
アルファベット表記だと、知識不足なため誰のことかわからぬ人も多数。参考までトラック・リストを以下します。企画は23five。93年設立の非営利組織とある。
1-1 Tamami Tono
Dinergy 2
1-2 Pain Jerk Acid Bath, Drip Bones
1-3 Yasunao
Tone Trio For A Flute Player
1-4 Nerve Net Noise Thousand Knocks
1-5 Otomo Yoshihide Composition For Two Guitars
1-6 Atau
Tanaka 28:33:23
1-7 I.D. (2) ? (筆者註:特殊文字で表記困難)
1-8
Masonna Love
1-9 Kozo Inada D[0]
2-1 Ichiro Nodaira Neuf Ecarts Vers le
Defi
2-2 Hanatarash 77UP
2-3 Yuji Takahashi Tori Mo Tsukai
Ka II
2-4 Masahiro Miwa Alleleuia
2-5 Ryoji Ikeda
Abstructures
2-6 Merzbow Electric For ICC, Turn
2-7 Kazuo
Uehara Musique Collage II
2-8 Astro Apastron
2-9 Tetsuo
Furudate Der Geist
本イベントでは50年代半ばから目配りし、「歴史的電子音楽」「コンピュータ音楽」「非学術的動き」「即興音楽のあと」「スタジオ電子音楽+バンド」「クラブ音楽・アンビエント」「ノイズ」「ラップトップ」「非ポップの置き換え、ドラァグ・クイーン+出稼ぎ」「ポスト・ノイズ+サウンド・アート」と分類。
たとえばYMOのようなメジャー音楽は除いてる。
ライナーには「NHK」(電子音楽の萌芽)、「ワールド・エキスポ70」「メイル・アート」「WWW」「G3パワーブック」などの切り口も紹介。
めちゃくちゃ刺激的だ。このイベントを元に一冊の本が書けそう。
CDは2枚組で全18曲収録。1994年が最も古く、ほとんどが00年前後の作品を集めた。あえてイベントの全貌を見せず、音楽として凝縮させた手法は正しいと思う。
日本の前衛音楽の奥行きを感じさせるイベントであり、CD。好奇心をくすぐる盤。
激しい衝動よりもアカデミックな静謐さや、ストイックな前衛音楽を集めたようだ。
ここではメルツバウのみ、詳述します。
<各曲紹介>
Disc-2,6
Electric for ICC,turn
(4:29)
99年リリースの"Tentacle"収録曲。ミックスなどをいじってるかは未確認。メルツバウはコンピ盤にも次々と新曲を投入が常。だが、公的イベントへの参加音源は、既発曲を選者側が望んだか。
ちなみにこの曲は原盤のアルケミーからリリースのコンピ"Alchemism"(2004)にも収録。メルツバウ自身も、気に入ってる曲かも。
録音の詳細クレジットは、本盤には書かれていない。
いきなり激しいハーシュが飛び散る。この頃はラップトップ主体に音楽を変えた頃だろうか。カットアップのごとく、次々と風景が切り替わる。
つんざき、切り裂く電子音が低音の唸りとともに襲い掛かった。このころの作品はパワフルな躍動を感じる。アナログからデジタルへ移行しつつ、肉体性の再現を試みたと言えまいか。
めくるめく展開は控え、幾本かのノイズ・パターンを柔軟に操り、ノーリズムながらも迫り繰るビートをミリミリと提示した。
膨らむフィルター・ノイズが生々しく轟く。低音はドローン一辺倒でなく、ときおりすっと音を減らし、浮遊しても見せた。
メルツバウのバランス感覚が爽快に出た曲。しかし前後の曲と落差がすごい。メルツバウだけすさまじく音圧が突出した。 (2007.5記)