Merzbow Works

INFLATION(*0 "0.000" remix)(mu-label:2002)

 レコード屋で見つけたコンピ盤。ネット検索したら、オフィシャルサイトが存在した。

 本盤はこの曲でも参加ユニット(?)、0'sの"0.000"を音素材に2枚組で、以下のミュージシャンが再構築している。
 MERZBOW Taylor Deupree Kozo Inada Zbigniew Karkowski Kim Cascone Koji Asano Dale Lloyd Hsi-Chuang Cheng /0 Aubeがディスク1。

 ディスク2にはRichard Chartier Marc Behrens Akira Rabelais John Hudak Bernhard Gunter steve roden Stephan Mathiew *0 immediaといった顔ぶれ。
 ・・・名前の羅列って芸がないね。

 ほとんどのミュージシャンは始めて名前を見た。もしかしたら業界では名高い人たちなのかも。
 MerzbowとMAZKを結成してるZbigniew Karkowskiや、ノイズ系ミュージシャンのAubeくらいしか名前を知らないや。
 ちなみに日本人の名前もいくつかあるが、この盤はアメリカ製だと思う。製造は日本みたいだが・・・。

 "0.000"はもともと2万ヘルツ以上の高周波か、20ヘルツ以下の低周波を使った音楽だそう。
 いわれて見ると、スピーカーからずっしり鈍い低音が響くな。

 本盤のキーワードは"nothing create everything"(「無は全てを産む」って訳か)。
 タイトルの"INFLATION"(膨張)を、宇宙の始原になぞらえた。「無から何かを生む」をコンセプトにしたと、サイトで表明してる。

 ディスク1は"spin+1"、ディスク2は"spin+1/2"の副題あり。
 素粒子の回転を表現してるとか。

 音楽はトリッキーだが、悪くない。音響テクノだったり、アンビエントだったり。ほとんどはミニマル・ノイズ。
 小音量ノイズも多く含まれるので、音が聴こえなくても焦らないように。
 全ての音が無調で、メロディは皆無。微妙なノイズの高低に旋律を感じることは可能だ。
 なかには無理やり、軽やかなテクノ・ビートを効かせるトラックもある。 
 BGMにはちょっと個性が強い。
 高周波や低周波が、キーンと耳に突き刺さるから。だけど不思議な浮遊感に惹かれる。

 500枚限定プレス。見つけたらすぐに買うことをお薦めします。

<曲目紹介>

ここではメルツバウのみ、紹介します。

1.0.000 remix (7:41)

 一枚目のトップバッターが、いきなりメルツバウ。
 凶悪なハーシュを想像したが、あんがい肩の力を抜いた作品だ。音圧も控えめ。
 この後に聴けるミュージシャンらが、ぶわっと低音を押し付けるとこみると、もっと過激にミックスできたはずなのに・・・。

 本盤へ提供トラックを、メルツバウの録音時期は記載なし。
 音楽はオリジナルのノイズをマックで波形編集してるよう。特にオーバーダブはなさそう。

 じりじりとノイズを鉄板で炒める。ほんのり聴こえる、超高周波。
 挿入されるハム音の頻度は次第に上がり、冷徹に響く。
 
 2分くらい経ったところで、コミカルに震える電子音。
 メロディは特にない。しかしひとときも立ち止まらぬメルツバウ印は健在だ。
 あえて音数を少なくした。ハーシュの凄みよりも変貌し続け、淡々と繰り返される電子音と対比。不安定さを醸し出す。

 4分半あたりで、いったん場面転換した。一度、全てをリセットさせる。

 「未知との遭遇」みたいな電子音による音階。
 延々とハムノイズを継続させた。とことんストイック。
 かなり間をおいて、右チャンネルも応えた。あとはエンディングまで、スペイシーな対話が続く。
 
 7分半を過ぎたところで、くしゅくしゅ浮かぶ音色がキュートだな。この音色、もっと聴かせて欲しかった。

 限られた音素材を逆手に取った。
 単なるノイズの羅列でなく、ドラマ性を明確に打ち出してる。
 他のミュージシャンとは一味違うと、秋田昌美の構成力を見せつけた一品。 

  (2004.4記)

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