Review of Merzdiscs  1/50

Colection Era Vol.2

MA plays taped drums,tabla,guitar,tapes,Synare 3,percussion,ring modulated recorders,voice,endless tape,Noise,rhythm box
Kiyoshi Mizutani plays wood bass on track 6
Recorded at various locations
Mixed at Lowest Music&Arts.1981

 前作同様に、1981年に46分テープ10本セットで作られた作品から抜粋したCD。
 1〜4曲目までが7巻目のテープより、5曲目は9巻目、6〜7曲目は10巻目から選曲されている。

 水谷聖は6曲目にウッドベースで参加するのみ。あとはすべて、秋田の多重録音による作品をばかりだ。
 もともとメルツバウとは、秋田の自宅録音によるホームレコーディング作品を発表する際の名義として規定したらしい。
 だから当時の秋田にとっては、こういう作品こそメルツバウそのものだったそうだ。
 
 全体的に電子ノイズが前面に出ている。
 そのせいかな。轟音で聴いたら違うかもしれないが、普通の音量で聴いている限りは、とてもポップに聴こえる。(あ、ノイズ作品としては、って注釈がつくけど)
 多用なリズムの海につかって、うっとりと出来るアルバムだ。

 ちなみに僕のMerzboxでは手違いがあったようで、次のColection Era Vol.3と中身が入れ替わっているみたい。
 つまり、Vol.2としてのCGが貼ってあるCDにはVol.3が収録され、vol.3にはvol2が、ってわけ。
 どちらもノイズの集合体で、曲目数と曲の時間構成しか手がかりがないから、さらに僕が間違ってるかもしれないけどね。
 まあ、それもまたよし(笑)

<曲目紹介>

1.Merz Rock 1 (1:58)

 リズムボックスのお気楽なビートに乗って、電子ノイズがおずおずと唸りをあげる。
 リズムボックスのビートは次第に大きくミックスされ、曲の主導権をがっちり握った。
 これから始まるノイズのイントロとして、まずは助走をして見せたってところかな。
 短いけれど、親しみやすいノイズだ。

2.Merz Rock 2 (8:23)

 前曲に引き続き、リズムボックスが規則正しいリズムを提示する。
 小節感を感じさせるリズムがあるノイズが、とてもメロディックに聴こえるかを実感した。
 こんどは周りで騒ぐノイズも遠慮しないで、自己主張を始めて見せる。

 元気のいいノイズのパワーで、あっという間にビートはノイズに飲み込まれ、混沌とした世界がかもし出される。
 過激さはあまりないけれど、どたばたとノイズが駆けずり回るあたりは楽しめる。
 最後になって、リズムボックスが意地を見せた。
 これまで後ろに押し込まれていた雪辱を晴らすかのように、前面に出てきてドカスカやってくれる。
 だからこそ曲の前後でビート感を実感して、メリハリのある曲になったかな。 

3.Merz Gamlan 1 (15:54)

 ガムランといっても、ぱっと想像したのとはまったく違った。
 てっきり静かなノイズがチャカポコ鳴るのをイメージしてたのに。
 ノー・ビートでリズムが重なり合う。ホワイトノイズが控えめに駆け回り、痙攣する。
 多種多様な電子ノイズが同時に登場して、おのおのが違ったリズム感で音を出すので、ものすごく多層なビートが産み出される。
 それがすっごくかっこいい。
 実際のガムランで感じられるトランス感は低いけれど、スリリングなところは確かにメルツバウ流のガムランかな。

 この約16分ほどの作品を作り上げるのに、どのくらい秋田は多重録音を繰り返したんだろう。
 ここで聴けるノイズは一度に出せるほど薄っぺらくなさそうだ。
 無意味に重ねていけば、もう混乱したクラスター・ノイズになって、なにがなんだかわからなくなる。
 かといって二三回重ねただけだと、シンプルすぎて物足りないかもしれない。
 
 音楽作品として成立する見事なタイミングを図った、秋田の才能はやはりすごい。
 単純にノイズを出してるだけでは、こうはいかないもの。

4.Merz Gamlan 2 (5:55)

 曲間も前曲との間にとって、きっちり別の曲に見せかけてはいるけれども。
 基本的には、前曲の続きみたいに聴こえるなあ。
 ただ、前曲よりは重ねたノイズは少ない感じがする。
 音の見通しをよくして、個々のノイズの音色を楽しもうって主旨かもしれない。
 すっきりした印象を受ける。
 ただ、特に盛り上がりがないまま淡々と音が流れていくだけで、メリハリがないのには、ちょっと退屈してしまう。
 前曲の(3)で、たっぷり同じようなノイズを耳にしたあとに、この曲を聴いたせいだな。

5.Merz Scat (11:29)

 テープコラージュを中心にした作品。
 妙にエロチックだ。女性の喘ぎ声をエフェクトで加工したり、早回ししてつなぎ合わせているように聞こえる。
 テンポはゆっくり控えめ。心臓の鼓動に同期する瞬間もあって、落ち着いて聴いた。

 他の曲と同様に、いろんなテンポが一曲のなかにどっさり詰め込まれている。
 この作品では、耳障りのいい音色ばかりを使用していてユーモラスに聴こえる。
 テクノファンあたりが聴いても、楽しめそうな音作りだね。
 もっとも、これを聴きながら踊れる人間はいないだろうな・・・(笑)

6.Mertronics Jazz Mix (11:45)

 さあ、メルツバウ流のジャズはどんなもんかなぁ?
 期待して耳をそばだてた。そしたら、ちょっと意外。
 実に静かなノイズだった。チルアウト用にも使えるんじゃないかな。
 丁丁発止とノイズが暴れくるう作品かと思ってたよ。

 水谷が無造作に指を遊ばせるウッドベースに乗って、さまざまなノイズが顔を出しては消えていく。
 途中で聴こえるギターソロは、いかにもフリージャズ風だ。
 もっと大きくギターをミックスしてくれればいいのに。あくまで一要素として、音像に紛れ込ませる。ちょっと物足りないぞ。

 特に音の主人公を設定せずに、ノイズ全体でよってたかって包み込まれる。
 催眠術にかかったら、世界がこんなふうに聴こえるのかな。
 この曲を聴いていて、ふっとそんな考えが頭に浮かんだ。
 
7.Mertronics Rhythm Mix (11:17)

 この曲なら、リズムに乗って身体を動かせそうだ。
 小走りくらいのビートで(BPMで言えれば早いんだけどなあ)、小節感をくっきり提示したまま流れていく。
 そのリズムパターンを、秋田がさまざまなノイズで汚していく。

 とはいえ、これはもうきっぱりテクノだね。デス・テクノかな。四つ打ちこそないけど・・・。
 こういう音楽路線を突き詰めていたら、今ごろメルツバウはテクノ界でスターになってたかも(笑)
 
 ビートがほとんど変化せずに淡々と進んでいくので、かなり間延びしてしまうところがある。
 この手の曲は踊りながら聴くのと、家で聴くのとではおのずとポイントが変わるし。
 家で聞くなら、リズムの面白さか音色の奇抜さで耳を引かないと、僕は飽きてしまう。

 秋田もそう思ったのかな。7分くらい過ぎたところから、ビートにおかずを付け加えて、ゆっくりと様相を変えてくれるのがうれしい。
 しかし、しみじみポップな曲だ・・・。メルツバウの曲とは思えないや。

Let`s go to the Cruel World