Review of Merzdiscs  49/50

Motorond

MA plays Noise electronics,Novation Bass Station,metals,pressure pedal
Bara uses voice

Track 1 recorded live at Guilty,Tokyo 30 March 1997
MA Noise electronics,Novation Bass Station,metals,pressure pedal
Track 2 recorded at ZSF Produkt Studio,Jan 1997
All remixed at ZSF Produkt Studio,April 1997

 メルツボックス企画の段階で最新のライブと、同時期のスタジオ録音を合わせた盤。もちろんメルツボックスでのリリースで全世界初公開となる。

 ライブが行われたのは恵比寿にあるギルティ。ここへは95年くらいにクレイマーのライブを聴きに行った。キャパは200人くらいだっけ?オールスタンディングのハコだった。

 メルツバウは完全ソロではなく、BARAのボーカルがバックアップ。
 もっともこの轟音の中、どれほど声が届いてたかは謎だ。

<曲目紹介>

1.Motorond pt.2
(31:25)

 さまざまなノイズマシンを並べてのライブだと思う。どんな風景かな。今はラップトップ2台でシンプルな絵柄だから、当時のステージの様子に興味ある。

 たぶんライブを丸ごと収録。途中で編集はしていないと思う。
 冒頭からいきなり複数のハーシュが飛び出し、唸りを上げた。
 ドローンぽくひとつの音を伸ばし、その上で複数のノイズを操作する形か。
 最初は低音成分が希薄な、しゅわーっと膨らむノイズが目に付く。

 ごく自然に音の表面が姿を変え、一気に低音がはじける激しい音像となった。
 喉の奥で力を溜めて咆える電子のゴリラが目に浮かぶ。
 執拗に苛立たしげに。じわじわ動きを変えた。

 次第にバックの暴風雨が目立ってきた。散発的に甲高い風が吹く。
 すすり泣くように聴こえるのはBARAのボーカルかな?
 わずかにビートを感じる。手持ちの音源を加工しつつ繰り返してるせいか。
 
 中盤で複数のノイズが飛び出す瞬間がスリリング。
 一人でどうやって操ったんだろう。このときは全部アナログのはずなのに。 

 テンション高めで疾走し、約30分をハーシュにて埋め尽くした。
 ラストはこれまでの音像を片端から並べたあと、次第にシンプルな構造へ収斂、カットアウト。かすかにループが残る。

 生演奏とはいえ繰り返しと変化を、同時にこなす構成力がさすが。
 当時のメルツバウは出る音をどの程度コントロールし、どの程度偶然性に任せていたのか。そういう創作面でのインタビューを読んでみたいな。 

2.Motorond pt.1 (27:53)

 ライナーには、後半10分だけがオランダのHyware Compilationに収録済とある。
 pt.1とは(1)の素材になった音源ってことか。

 いきなりバランス悪い配置のノイズ。右チャンネルではブイブイに音圧を噛まし、左チャンネルでは高音中心に駆ける。
 片目づつ違う世界を眺めてるようで、違和感が面白い。

 3分くらいで、左右の圧力が平均化してくる。
 中央にも獰猛なノイズが存在する気配あり。

 唐突にシンセの高速フレーズ。
 耳なじみのいい音だけに、つい轟音の中を探してしまう。
 だが草むら深くもぐりこみ、尻尾も耳も見えない。
 かき分けるように、がむしゃらに進む。

 粒子の網へ頭から突っ込んだ。
 ピタリと肌に張り付き、暴れても破れる気配なし。ざらざらの筒へ押し込まれたっぽい。
 柔らかい身体の形を変えて型へ挿入。じわっと暖め、焼き固める。噴出すバーナー。

 四方八方で燃えさかる。ブクブクいう気泡どもは勢いよくはじけた。
 ストレートなハーシュが飛び掛り、潰してしまう。

 17分くらいたつと、軽やかなノイズへ変わった。だいぶ焼きが進んだか。
 ハム音が中央で身をふるわせる。
 ノコギリで周辺を切り落とされ、きれいな形に整えられたら水へ沈められた。
 しゃくるように音像が震え、鋭く立て続けに炸裂したあとカットアウト。

 奔放な展開の作品。ライブ版よりも、ぼくは本テイクのほうが好き。テンション高めに感じた。

Let`s go to the Cruel World