Review of Merzdiscs  31/50

KIR Transformation - Merzbow + Achim Wollscheid

Composed & Produced live by MA & Achim Wollscheid,1989
Edited by Achim Wollscheid,1997

 1989年にハンブルクのKIRで行われたライブは、三部構成だったという。
 まず第一部は、メルツバウのソロが45分。
 第二部は事前に録音された音源を、アキム・ウォルシードがテープ操作で再現した。
 そのとき、アキムは4個のスピーカーを使って、ふたつのオープンテープをループさせ、ランダムにカットアップさせたらしい。

 そして第三部が、メルツバウとアキムの競演。
 ・・・この盤は、その第三部の音源だろうか。
 メルツボックスのブックレットを見ても、クレジットがはっきりしない。
 
 ちなみにこの音源は97年になって、あらためてアキムが編集しなおしている。
 ひたすら同じように淡々と続くノイズをどういう取捨選択で編集し、作品にまとめ上げたんだろう。
 音源を残す価値基準はどんなかなって、想像してみるとちょっと面白い。
 
<曲目紹介>

1.KIR Transformation
(40:39)

 こだまのように左右から、ハーシュノイズが行き来する。
 5分たっても大きく音像に変化はない。
 淡々とノイズがうごめく。まるで工事現場か工場の騒音を、そのまま録音したかのようだ。

 音像をノイズで埋め尽くしたりはしない。微妙に空間がある。
 数秒単位でパルス的に豪音が叫び、すぐ沈んでいく。
 ふたつの穴から交互に炎が噴出しているようだ。

 10分くらい経過したところで、バックからノイズが重苦しくかぶさってくる。
 カタルシスは正直感じづらい。
 ライブだったら、ちょっとは違うだろうが。

 20分くらいで、か細い電子ノイズが仲間に加わる。
 音像もここで大きく変化。間隔が唐突に短くなり、激しく噴出し始める。
 ちょっと音像がスリリングになる。聴いててテンション上がってくるもん。

 だけど期待はあっさりかわされてしまう。
 テンポが変わっていくものの、数分立つとまたしても断続的なノイズへ・・・。

 30分近くたつと、音が加速されてスペイシーな響きに変貌する。
 音像のパターンは変わらないのに。どこか不安定な表情を見せた。
 そして次第に音が高まって、唐突にカットアウト。
 いきなり目の前に提示される静寂が、おそろしく効果的だ。狙ってないだろうけど。

 本盤をあえて音楽的に楽しむなら。
 淡々と噴出す音の、微妙なタイミングの違いかな。
 浮び上がるリズムは、ビートまで細分化されてはいない。
 だけどゆったりとしたのりで、細かく表情が変わっている。
 
 もっとも、間違い探しのようにキリキリ聴くものじゃないな。
 二本の電子音の咆哮に身を任せ、ゆったり楽しもう。

Let`s go to the Cruel World