Review of Merzdiscs  3/50

Remblandt Assemblage

Composed&Mixed by Masami Akita
MA plays tapes,prepared acoustic guitar,Noise,tabla,percussion,microphone,voice,radio,councret sounds,egg cutter etc.
Recorded at Home 1980
Mixed at Lowest Music&Arts.1980

 もともとは90分のカセットとしてリリースされた作品。
 これが秋田にとって、最初にカセットテープをリリース媒体として作り上げた盤になる。
 もっとも、本当にわずかな数しか準備されなかったようだ。
 オリジナルの作品は、前半がプリペアード・ギター(弦にいろいろはさんでいるのかな)をラジオやパーカッションのノイズと合わせて演奏したもの。
 後半はテープのピッチをいじって作り出したノイズ作品だったらしい。

 この楽器はある程度、発せられる音の予想がつくにせよ、基本的には偶然性に多くを頼っている。
 そのため、演奏者の音楽に対するビジョンが明確になってたにせよ、発せられるノイズと出したい音のイメージの間のギャップに、とまどう瞬間ってないのかな。
 それとも、そのとまどいすらも「作品」の一つとしてとりこんで、悩んだりしないのだろうか。この演奏を聴きながら、そんなことを考えていた。

 本作品では比較的短めな曲を集めて、シンプルな構成にしている。
 メドレー方式にしているから、流して聴いていると曲のつなぎめは意識しないまま進んでいってしまうかもしれないけれども。

 ポップさなど、まったく意識してはいないだろうが、楽器を演奏することで産み出されるノイズなので、ところどころの瞬間で小節感やビートを感じられる。
 聴きようによっては、とても耳になじみやすい作品といえるかもしれない。
 フリージャズが好きな人にとっては、あまり違和感なく聴けると思う。

<曲目紹介>

1.Remblandt Assemblage (9:44)

 壁を一枚はさんだ向こうで鳴らしているようなノイズが、遠慮がちに唸りをあげる。
 からからとせわしない金属音が、微妙なリズムを打ち鳴らす。
 乾燥したノイズが静かに響く。これがプリペアード・ギターで作った音なのかな。
 盛り上がりには欠けるけど、きりきりと軋む金属ノイズが緊張感をかすかに維持する。

 バックに流れているのは、うぉっうぉっと膨らんでは消えるノイズだ。
 この音は、テープの逆回転で作り出しているのかな。
 トンネルの中を電車が走っている光景を、なんとなく思い出すなあ。

2.Voice of Switters (2:09)

 文字通り、ひしゃげたカズーのような音で構成される小品だ。
 単純なワンアイディアで終わらせず、バックには物をほおり投げる音や、パーカッションの音をところどころでちりばめて、対話形式を作り出す。
 もっとも、対話が絡み合ってノイズを盛り上げるのではなく、ヴォーカル・ノイズとパーカッションによる同時演奏の域を超えるまでは行かないのが残念。

3.Theme of Dadaist (9:39)

 ギター弦を不安定に響かせた、プリペアード・ギターによる演奏。バックにはタブラやパーカッションの音をかませて、多層的な音楽世界を作り上げている。
 ジャングルの中にいるような・・・アラブあたりの民族音楽を聴いているような・・・。
 単純なノイズではなく、民族音楽的にも楽しめる。
 もっともメロディ的な展開はなく、断片的なフレーズを積み重ねているので、聴きやすいかどうかは別だけれども。

 中盤では人の会話を録音してテープ加工したノイズを静かに混ぜて、ますますにぎやかな音像になっている。どこかユーモラスな雰囲気が全体に漂っていて、ほのぼのしてしまう。

4.Hans Arp (1:47)

 プリペアード・ギターによるノイズ。メルツバウにしては、あっというまに完結してしまう。
 唸りを上げてギターをいじめて、フィードバック風の音を引き出す。でも、それだけ。あっけない終わり方だ。

5.Tape dada (5:52)

 テープのコラージュと逆回転を取り混ぜて作っている。もっとも、もとの音がなんなのかはさっぱりわからない。テープレコーダーをいじって作り上げたノイズだろう。パルス音や持続音が、現れては消えていく。
 ひしゃげて震える時報の音色が、とても印象に残った。
 
6.Music Concret (2:34)

 タイトルどおり、日常のノイズを使って作品を作り上げている。
 まずはトイレの水を流すところからスタート。ドアをバタンと閉めて部屋に戻り、リズミカルに金物やおもちゃのピアノをランダムに叩く。
 譜割りはしづらいだろうが、リズミカルな演奏はとってもファンキーだ。
 フリージャズを聴いている気すらする。

7.Prepared Guitar Solo 1 (17:32)

 文字通り「プリペアード・アコギ」によるソロ演奏。
 とはいえメロディらしきものはほとんどなく、パルスやラジオによるノイズの合間に、ひしゃげたギター音がノン・ビートで挿入される感じかな。
 ラジオのチューニングをいじって遊んでいる印象もある。

 ときおり叩かれるパーカッションが無機質さに拍車をかけた。
 それにしても、この作品で聴けるパーカッションは、まさに「打楽器」だ。
 楽器を叩くのでなく、そこらの金物を叩いているみたい。

 後半で奏でられるギターは、弦に物をはさんでいるんだろうな。
 ひしゃげて、三味線のような響きをしている。
 フレーズはランダムなフリー・インプロなのだが、妙に日本的なフレーズが顔を出すのが面白い。
 特にエンディングらしきものはなく、唐突に演奏が終了する。

8.Prepared Guitar Solo 2 (3:59)

 前曲に引き続き、「プリペアード・アコギ」によるソロ演奏。
 特にパーカッションやラジオのノイズを混ぜずに、ギター演奏に集中している。
 今ひとつ演奏のテンションが低いので、盛り上がりに欠けるのが難点。

Let`s go to the Cruel World