Review of Merzdiscs  28/50

Fission Dialogue

Composed & performed by Masami Akita
Track 1- 2
MA plays cymbals,various percussion,electronics,voice,byan,bowed instruments,paper pipe
Recorded & mixed at ZSF Produkt studio Asagaya 1987

Track 3
MA plays Noize electronics,turntables,scrap metals
Recorded & mixed at ZSF Produkt studio Asagaya 1988

 本CDに収められた作品は、録音当時未発表。今回のボックス化が初のリリースになる。
 なぜこの作品の発表を見送ったかは、ブックレットに記載されてない。
 秋田自身の美学や価値観で、これらの作品は当時のメルツバウのクオリティに達していないと感じたのだろうか。

 本作では金属パーカッションの実音と、電子ノイズをミックスした形。
 どの作品も、いまいち説得力に欠ける。作品自体に力が感じられない。
 画家でいえば、デッサン集を見せられているような気がする。

 録音されたのは全て秋田の自宅スタジオでかな。
 今回の発表にあたって、どの作品もオリジナルのカセットからリマスターされている。

<曲目紹介>
1.White Gamlan (16:27)


 タイトルにふさわしく、金属音が軽くリバーブをかけられて始まる。
 もっとも、妙に遠慮深げ。いくつかのパーカッションが、思いつくままランダムに鳴る。

 ビートはほとんど存在しない。
 規則的に鳴ってる音でさえ、いつのまにかテンポが変わり、次のビートに飲み込まれていく。
 前半は正直退屈。降り注ぐノイズの緊張感がないため、散漫に感じてしまう。
 
 7分ほど経過したあたりから、多少面白くなってくる。
 左右のチャンネルでエレクトロ・ノイズが対話を始めるところは、まさにガムラン風のリズム。
 
 メルツバウにしては音像がうすぺらい。
 片手で足りるくらいの音源をミックスしているだけのようだ。
 もっともっと過激に突き詰めればいいのに。
 盛り上がりそうで、しぼんでしまう。
 
 はじけるきっかけはいくつもある。
 さまざまなアイディアのノイズが、現れては消えていく。
 メルツバウならチャンスを逃さず、傍若無人に爆発するだろうに。
 なにか迷いでもあったんだろうか。いまいち中途半端で、もどかしい作品だ。
 
2.Fisson Dialogue (9:08)

 金属的なノイズを幾重にも重ねた音像がフェイドインして、しょっぱなから期待が高まる。
 断続的にリズムが叩き潰される。くっきりとしたテンポはなく、ノイズのうねりからビートが提示されるイメージだ。
 どちらかと言えばスローな感じ。

 そこかしこで軋みが高まり、崩れ落ちてきた。
 針金を何百万本も使って作られた金属の檻が、断末魔の悲鳴をあげてつぶれていく。
 一気に倒壊したりしない。身を捩ってこらえつつも、ひしゃげるのを止められぬ。

 一貫して、サウンドのイメージは変わらない。
 アイディア一発を丁寧に構築した小品かな。
 9分もあるけど、どこかこじんまりしている。 

3.Inside Tangues in Tera-Aspic (32:11)

 エコーを深くかけたパーカッションを高速が鳴り、スペイシーな空気が漂う。
 派手な電子音がいくつも飛び交う。
 50年代ころのアメリカ製スペース・オペラにあるような、UFO同士の宇宙戦を模しているのか。

 足音が右へ左へかけまわる。サイレンが鳴り、緊迫感を高まりを表す。
 レーザーガンの光線が飛び交い、なにか大きな”もの”が悲鳴をあげた。
 早口で交信が交わされ、戦線がますます肥大する。
 カメラの視点は固定されず、ランダムに切り替えられる。
 あるときはじっと交戦を見つめ、次の瞬間にはすさまじくロングで全体を見渡す。

 と、音から感じられるイメージを書き綴ってはみたものの。
 うーん、なぜかこのサウンドへ素直にのめりこめないぞ。
 30分以上にもわたる大作なのに。奥行きが妙に狭い。
 緊張感をもって聴けないなぁ。なぜだろう。

Let`s go to the Cruel World