Review of Merzdiscs  26/50

Live in Khabarovsk,CCCP-I`m proud by rank of the workers

track 1
MA plays electric bowed instruments,tape,radio
Kiyoshi Mizutani plays piano,Low feedback US MP guitar

track 2
MA plays drums,tape
KM plays piano,guitar

recorded live at AMUR Jazz & Experiment Music Festival,Khabarovsk,far east of Russia
Live PA recordings by Russian staff

 ライナーは当時の模様を詳細に触れている。

 本CDには、ハバロフスクから招待を受けて3回行ったライブの内、1・2回目を収録。
 1度目は「激しすぎる」を理由に、途中で主催者よりストップをくらったとか。
 そのため二回目は普通の楽器を使用したが、あまり受けなかったという。

 「日本人は全員、高性能な設備で演奏する」の期待とうらはらに、ペダル類数本だけで演奏したのが原因らしい。
 にもかかわらずそのペダルは引っ張りだこにあい、結局売ってしまった。
 もっとも現地通貨のため、使えなかったそうだが。

 1988年にZSFからこの音源がLPでリリースされたときは、編集されたショートバージョンだった。
 今回のテイクは、リマスターされたロングバージョン。
 なまなましく当時のライブの様子が伝わってくる。

 ロシア現地のラジオ音も、バックグラウンドに使っている。
 (一曲目でDJの声が、えらく生々しくミックスされた) 

 メルツバウは時代によって機材を変化させ、それにともなって音像を変えてきた。
 したがって本盤で聴けるノイズを、今再び聴くことはかなわない。
 過去の記録として、とても貴重な音源だ。

 しかもここでは、えらくポップなライブをくりひろげている。
 今のメルツバウでは信じられない・・・。
 秋田昌美のドラムが、とにかく聴きもの。

<曲目紹介>

1.Live at Trade Unions Place of Culture Hall 23 March 1988
(29:21)

 前置き無しに、ぶわっとテープノイズが広がる。
 それをバックに、水谷のピアノがやさしく鳴った。 
 ピアノは激しさと優しさの間を行ったりきたり。
 断続的にフレーズを紡いでいく。

 ノイズとピアノが交互に前面に出て行く。
 水谷のピアノは、パーカッシブに鍵盤をせわしなく叩く。
 バックでドローン的に、エコーたっぷりなノイズを秋田が広げた。

 ときおり、太鼓やフィードバック音を挿入する。
 今のメルツバウから見ると、とてもおとなしい音作りだ。
 とはいえ本作が録音されたのは十数年前。初めてメルツバウを聞く人たちに与えたインパクトは、充分想像できる。
 圧倒されて、ぽかんと見つめていただけじゃないだろうか。

 7分くらいたつと、水谷はギターへ持ち替える。
 エフェクターまみれで悲鳴をあげるエレキギターは、へたくそなバイオリンの音色を聴いてるみたい。

 十数分たつと、ノイズが次第に暴力的へ変化した。
 金物を叩く音、ギターのフィードバック、そして唸りを上げる重低音。
 ビートは控えめで、自然発生的に浮かんでは消えていく。
 
 20分を過ぎる頃には傍若無人なハーシュノイズがいっぱい。
 どっしり足元を固めて、ぶわぶわと騒音が膨れ上がるさまは快感だ。
 ライブのためか、音の構成要素は3〜4種類というところかな。
 それぞれの音色は実に太くて、存在感にあふれている。

 27分くらいで、ペキペキいう水谷のギターと秋田の豪音ハーシュノイズの一騎打ちに変化。
 唐突に音量が落ち、ごうごう唸る音だけが空しく響く。
 バスドラが名残惜しく踏まれ、そのままフェイドアウト。 

2.Live at Soviet Army Officers House Hall 24 March 1988 (28:13)

 ラテン風のリズミカルなマシン・ビートにのって、散発的に水谷がピアノを弾く。
 フリージャズといっても通じるような、メロディアスなプレイだ。
 金属音でちょっかいを入れていた秋田がシンバルを数度叩いたあと、ドラムで殴りこんできた。
 
 シンセ・パッドのような、妙にこもったタムを連打する。
 淡々とつきすすむドラミングが、ワイルドでかっこいい。
 水谷はエレキギターに持ち替え、ひずみまくった音色で応戦する。
 二人のセッションは、対話を拒否するかのように荒れ狂う。

 4分44秒あたりで聴ける、秋田が叩くフレーズはU2の「サンデイ・ブラディ・サンデイ」のリズム・パターン。
 ドラムの音色まで似通っていて、苦笑してしまった。

 そのままリズミカルに、秋田はえんえん刻んでいく。
 イメージしていたメルツバウとは違うアプローチで、新鮮だった。
 コラージュ的にラジオノイズや、逆回転(?)させた軍歌風のメロディが挿入された。
 これを操作しているのは、水谷かなあ。

 ずっと秋田はドラムを叩きまくる。
 途中テープ編集をしたような瞬間(11分43秒くらい)もあるが、テンポは一定でマーチ的なビートを提示し続けた。

 水谷はテープ操作が中心。ピアノを散発的に挿入する。
 演奏者の肉体感がびしびし伝わる演奏だ。
 メルツバウの名義で聴くには、えらく違和感がある。

 シンプルな構成でのライブだが、秋田が刻むドラムがタイトなので、退屈せずに聴いてしまう。
 後ろでテープ操作のファンファーレが響く。
 あおられたか、ますますリズムが熱っぽく変化。

 そしてノリは別々ながらも二人して、エンディングへ雪崩れ込んでいく。
 とてもすがすがしい演奏だ。フェイドインで終わるのがもったいない。

Let`s go to the Cruel World