Review of Merzdiscs  21/50

Pornoise Extra

Composed&performed by Masami Akita
MA plays feedback mixer,radio,loop tapes,Synare 3,rhythm box,ring modulator,distorted SONY 464,devices
Kiyoshi Mizutani plays sampled electric piano
Recorded & mixed at ZSF Produkt Studio,Asagaya,Dec 1984

 カセットテープでリリースされた「Pornoise」シリーズ最後の音源。
 テープ5巻組のはずが、オマケにもう一本分ついていたらしい。それがこのCDに収録された作品群だ。

 比較的短い音源を集め、バラエティ豊かに編集された「エクストラ」の名前にふさわしい音源。

<曲目紹介>

1.Flesh Radio 1
(4:49)

 タイトルどおり、ラジオのチューニング中に漏れるような発信音が山盛りになっている。
 もっとも、そこはメルツバウ。複数のノイズを複雑にミックスして、深みのある騒音を作り出している。
 起承転結はあまりないけれど、一瞬たりとも立ち止まらずに変化を続けるのは刺激的だ。
 細かく変化する瞬間は、目の前でツマミをいじっているかのように、生々しく響く。

2.Flesh Radio 2 (4:51)

 主旨は一曲目と同様だけど、多少音楽的。
 さまざまな音楽の断片が、ホワイト・ノイズの隙間から透けて見える。
 だからこそ、ホワイト・ノイズが冷たく響く。
 意味を拒絶してひたすら震えるノイズが、いとおしくなる。

3.Dance of Dharma-Kala (13:29)

 リスがノイズの胡桃を齧ってるみたい。
 ぼおん、ぼおんと重たく叩く金属音の裏で、声明のような声がほんのり聴こえる。
 単調ながら、おごそかなノイズ。

 ドローンのように流れるホワイト・ノイズが、煙幕のように全体を包み込む。
 この電子音はメルツバウの洋服みたいだ。
 たとえばこのハーシュ・ノイズがなければ、かなり本作品群は様々な要素が絡み合った、とっちらかったものになっていただろう。
 ところがホワイト・ノイズが基本言語になって、共通性を持たせている。
 いい意味でも、悪い意味でも。

 この電子音が、一秒たりとも同じ表情をせずに、絶えず形を変えているのが救いかな。

4.Psycotic Orange (0:42)

 ああっというまに終わってしまう。
 みりみりっと脈動し、そのまま継続する。
 途中で一度ぶつっと切れて、ノリが中断するのはご愛嬌。

5.Helgas Death Disco (5:34)

 テクノ風に太いリズムでビートを打たせた上を、そっとドボヂヂ・ノイズで飾って見せる。
 途中で定位をいじったりして目先を変えるけど、最後までビートが変わらないのはちょっと辛いかな。
 変わりつづけるところが、メルツバウのかっこいいところだから。

6.Eros Pandra (8:28)

 ホワイト・ノイズが、徹頭徹尾転がる作品。
 長めの周期で、テープ・ループ風に繰り返される。
 音のホースから、いろんな色のノイズが噴出す。
 あるときは細く、あるときは太く。
 ノイズは液体になって、たゆまなく飛び出していく。

7.Kirie (6:45)

 野太いノイズがどっしゃんがっしゃん、にぎやかな曲。
 テープ・ループを多用しているようだが、それぞれの素材のタイムを微妙にずらして、ポリリズミックなサウンドにしている。

 音色こそやかましいが、聴いていて元気が出てきた。
 破壊のノイズではなく、何かが・・・何かを作り出しているような、前向きのパワーを感じる。
 金属を打ち付け、捻じ曲げ、絞り上げる。
 曲の中盤ではカラコロと音がはずんで、なにかを打ち込んでるようだ。

 だんだん形が整ってきて、今にも完成しそうな・・・。

8.Domine (5:54)

 テープ・ループで繰り返しを基調とした作品。
 だんだん坂を登って、紐で引っ張り降ろされて。
 ・・・また坂を登って、また紐で引っ張り降ろされて。
 
 そんな感触を、淡々とリピートさせる。
 ただし、一つの音だけで終わらせないのがメルツバウ。
 すぐ横では、大口をあけたノイズの魚が、虎視眈々と獲物を狙っている。
 繰り返し、繰り返し、の同じ動作を続けている何かが、目の前に落ちてこないかと。
 じろりと目を光らせて、狙っている。

9.Chopin is Dead (5:55)

 たぶん、タイトルは曲が出来たあとにつけてると思う。
 そもそも曲名とサウンドが、どこまで関連しているのか秋田本人にしかわからないだろうけど。

 本曲は「ショパンの死」のタイトルが「あ、なるほどな」と微妙にうなずけるノイズ。
 カラコロとピアノのように響く電子音が、テープ・ループされて繰り返される。
 元の素材を引いているのは、水谷潔だろうか。
 
 かなり耳ざわりのいい作品だ。
 周囲でフィードバック風のノイズが喚いているとはいえ、きらきら鳴る電子音がしっかり目立っているから。
 もうすこし展開は複雑なほうが、僕の好みではあるけれど。

10.Risa Supersex (2:55)

 最後はテクノ調の小品。
 ノリのいいヨーロッパ風のビートにのって、ひしゃげた音色のレーザー光線が飛び交う。

 84年の作品だから、まだ、ユーロビートが出る前かなあ。
 ディスコがまだそれなりに市民権を獲得してた頃だと思う。

 メルツバウのディスコ・・・いずれにせよ、すっごく似あわないけど。

Let`s go to the Cruel World