Review of Merzdiscs  2/50

Metal Acoustic Music

Composed&performed by Masami Akita
MA plays Merztronics,tape recorder,recorded percussion
Recorded&mixed at Home,Jan 1980
Remastersd in Nov 1996

 メルツバウとしては始めての「完全なノイズ作品」だそうだ。
 過去に作り貯めたテープを素材として、カットアップ的に作った作品になる。
 現在のメルツバウと、トーンはすでに同一だ。
 つぎつぎとノイズが繰り出されて、大きな流れを産み出しては消えていく。

 このアルバムも1980年の製作当時は未発表。
 今回のメルツボックスで初めて聴ける音源だ。

<曲目紹介>

1.Balance of Neuroisis (46:59)

 収録曲はたったの一曲。約47分一本勝負だ。
 左右のチャンネルから異なるノイズが現れて、対話形式に進んでいく。
 それぞれのチャンネルから産み出されるノイズが、微妙に絡まりあっていく。
 微妙なタイム感を各チャンネルのノイズが持ち、ジャストのタイミングではじけたり、わずかにずれたりする。
 このささやかなグルーヴを楽しむのが、この作品のポイントかな。

 基本的にメルツバウは、同じことを繰り返さない。
 「前作に対する本作」という意味でも、「一分前に対する、現在」という意味でも。
 たとえ同じようなノイズであっても、いつのまにか微妙に変化している。
 繰り返しではなく、再現不可能なほどに変化する様をノイズとして捉えているようだ。
 
 だからこの作品でも、ある瞬間を切り取って比べてみると、ふたつとして同じ瞬間はないだろう。
 ところが、この長丁場だとさすがに集中力が切れてくる。
 ライブで轟音に身を任せて聴いていたら、ちょっと違ってくるのかもしれないけれど。

 それともう一つ。この作品でのノイズは、とても静かだ。
 僕がヴォリュームを小さめにして聴いているのは、理由の一つとしてあるだろう。
 だけど、それ以上にここに登場するノイズは、しとやかに存在を主張する。
 たしかに耳障りな音色を選択している。
 ところが暴力的に耳に飛び込んできたりせず、妙に遠慮深い。

この作品はスピーカーの前にじっと構えて鑑賞するほどテンションをあげると、ちょっと辛いかもしれない。
 あくまでBGM的に流しながら聴いている方が楽しめると思う。

 そもそも、こういう音楽をスピーカーの前に正座しながら、じっくり鑑賞するって人がどの程度いるか・・・ってのは疑問だけれど(苦笑)
 ほかのノイズ好きの人は、どんな風な環境で、何を考えながらノイズ・ミュージックを聴いているんだろうなぁ。

Let`s go to the Cruel World