Review of Merzdiscs  19/50

Pornoise/1kg Vol.2

Composed & performed by Masami Akita
MA plays distorted Sony 464,feedback mixer,loop tapes,Synare 3,ring modulator,field recording tapes,devices
Recorded & mixed at ZSF Produkt Studio,Asagaya Dec 1984

 84年にカセットテープ5巻組みで発売された「Pornoise/1kg」の音源を収録。
 基本的には秋田の自宅で収録されている。

 エフェクト操作で歪ませたテープ・ループを多用して、ビート感があるノイズを堪能できる。
 抽象的でよりどころがない騒音だからこそ、そのビート感にすがり付いてしまうのは皮肉な話だけれど。

 細かい音の流れを読むよりも、音の迫力で気持ちよさを引きずり出す快盤だ。
 収録曲のタイトル「ダイナマイト・ドン!ドン!」が、本盤の特徴を見事に言い表している。

<曲目紹介>

1.New Karhma
(31:24)

 鈍い電子音がごろごろ言うところから始まる。
 低音をドローン的に持続させ、上物で電子ノイズがはしゃいでみる。
 派手な展開はせず、じっくりと騒音がうごめいていくさまを楽しむのが、この曲の主眼か。

 ボリュームを上げて聴くと、怪物の胃袋に飲み込まれたような感触がする。
 テープ・ループが血管みたいに脈動し、低いハムノイズがまわりからじっとりとからみついてきた。
 あたりではひとときも休まず、さまざまな音が暴れまわる。
 
 巨獣メルツバウが吐き出す音の毒に当たって、じわじわと脳髄がしびれて、ぼんやりと身体が浮かび上がってくる。
 13分を過ぎる頃から、吠え声のようなぶっといノイズが自己主張を始めた。
 音像を食い破り、一面を埋め尽くしてしまう。

 二分くらいで世界はがらりと表情を変え、巨獣は空に舞い上がる。
 風を切りながら空を滑り、あたりはごうごうとした音だけしか聴こえない。
 
 ノーリズムのテープ音なのに、テープ・ループを使っているせいか、ところどころでくっきりと8ビートを感じてしまうのが面白い。

 最後までノイズの風をふきならし、巨獣は静かに叫び声を何度か上げて消えていく。

2.Dynamite Don Don:pt.1 (16:54)

 録音スタジオ(秋田の自宅か?)がある阿佐ヶ谷での、路上録音音源を採用している。
 一つはバイクが走る音。もう一つは、秋田のアパート前にある家が破壊される音。

 それらの音を混ぜ合わせて作品を作っているが、テープにエフェクト操作をしているため、個々の細かい音は聞き取れない。
 ただ、ガラスが割れる音や破壊音は、そこかしこに散見される。

 しょっぱなから豪音が巻き上がる。
 音の奔流が荒れ狂い、混沌の中に聴き手の耳が投げ出される。

 稲妻が立て続けに落ちる瞬間の記録映像のようにも聴こえるなぁ。
 立て続けに鋭角なノイズが、勢いよく突き刺さる。
 ボリュームを小さくしてすら、スピーカーを埋め尽くすノイズの迫力は止められない。

 聴いていて気持ちいいノイズだ。
 どこにも逃げ場がなく暴れまわる豪音に身を委ねていると、脳から危険信号がどばどば流れて、ほんのり酩酊感を味わえる。 

3.Dynamite Don Don:pt.2 (13:16)

 こんどは発信音風のノイズがオープニング。
 前曲よりは、多少(ほんとに多少だけど)控えめなノイズになっている。
 ガラスが割れる音をサンプリング風に取り込み、隙間をびっしりホワイトノイズで埋め尽くす。

 傍若無人に破壊を続けるノイズに、諦めてしまいたくなる停滞感が、この曲のポイントか。
 言ってみれば台風かな。
 休むまもなく、つぎつぎにあたりを震わせる。
 どんなことをしても止められない。ただ、通り過ぎるのを待つだけ。
 だけど、ノイズはそんな気も知らず、パワフルに自己表現を続ける。
 
 音を止めた瞬間、自分の命が終わるかのように。
 ノイズはひたすら、存在しつづける。圧倒的なパワーを使って。

Let`s go to the Cruel World