Review of Merzdiscs  1/50

OM Electrique

Composed&performed by Masami Akita
MA plays tape recorder,percussion,meditation,guitar,Merztronics,taped drums,voice,water etc.
Recorded at Home,27 Dec 1979
Remastersd from original cassette in Nov 1996

 この作品が、メルツバウとして始めての録音になるそうだ。
 コンセプトは「チープな非音楽」。安っぽいモノラルのカセットで録音された。
 そもそもメルツバウを立ち上げたのは、ロックバンドの演奏に飽きたことが原因らしい。
 ラジオのチューナーつきのカセットデッキを、ギターのアンプやスピーカーとしても使っていた。そのためにラジオのノイズがギターの音に混じるので、「ラジオ・ギター」と呼んでいたとか。

 基本的には自宅での素朴なノイズを集めた録音だ。
 1979年12月27日の一日でレコーディングを行っている。
  当時は未発表で、このメルツボックス発売に伴って、世に発表された。
 第三者の鑑賞を前提として作った作品かどうかは不明だが、素朴な手作りノイズに満ちた作品といえる。

 まずここで驚くべきなのは、このノイズを音楽として残していること。
 「ノイズ」が作品として成立するのは、何年も後になっているだろう。
 偶然性に頼ったノイズを、継続的な鑑賞(多数派の人は継続して聞かないだろうけど)を前提とした「作品」として位置付けた発想がすばらしい。

 しかも「ノイズ」を目的としていながら、場面転換・リズムの提示など、「音楽」を意識して録音していると感じる。
 ここで「作曲:秋田昌美」とクレジットしているところにも、彼の意思表示が見える。
 単なる「騒音」でなく「ノイズを用いて作った音楽」と、すでに自分の立つべき場所を意識してたのかな。

<曲目紹介>

1.OM Electrique Part.1 (31:17)

 静かなハムノイズにのって、ちょこちょことノイズが乗っかってくる。
 単調なノイズが延々と続くせいで、多少身体の芯が気持ち悪くなってくるのは否めない(笑)
 そのなかをパルス音が軽やかに飛び跳ねる。ノイズのポップコーンみたいだ。

 10分くらいすると、このポップコーン・ノイズが前面に出てくる。
 ホワイトノイズを使用したような音が、ドラム風にビートを刻むのがポップだ。
 パルス音とビート的なノイズが、カットアップ風に交錯するさまはなかなか面白い。 
 そして再びハムノイズが顔を出す。今度は暴力的なパワーの片鱗をみせ、力強く自己主張してみせる。
 ちょっと盛り上がりに欠ける出来かなぁ。

2.OM Electrique Part.2 (7:55)

 前曲から継続性を持って始まる。
 重苦しいハムノイズに、金属的なビートがリズムを作り上げる。
 ただ、ハムノイズは前曲以上にドローン的に使われ、メインとなるのはメタリック・ノイズ。
 さまざまなビートを繰り出すさまは、聴いていて飽きない。
 前曲が30分以上もの時間を必要としたのに、今度はわずか8分弱とは・・・。
 この曲が、前曲のエッセンスって聴き方も出来るね。

3.Untitled Taped Drum Solo (8:59)

 ピーガーいう電子ノイズで幕を開ける。
 まずは長めの電子ノイズで、ビート感よりグルーヴ的なイントロをつける。
 しかし、この曲ってギターのフィードバックにも聞こえる。4)と同じくギター音も混ざってるのかなあ。

 中盤からはみずみずしいパルス音が登場。
 そのパルス音をベースにして、バケツを叩いたようなにぎやかなリズムがメロディックに暴れはじめた。
 どこらへんがテープ・ドラムなのかわからないが、ドラム音が入ったテープを編集してるってことなのかな。
 
 ころころ弾むリズムが面白い。変拍子風に進展していくあたりは、秋田が好きなザッパの音楽もイメージさせる。
 ラスト数分で連打されるドラムがめちゃくちゃかっこいい。
 スクラッチ風にカットアップされるところもなかなか・・・。

4.Untitled Guitar Solo (10:25)

 引っかくようなノイズがイントロ。「お馬の親子」風のメロディが現れては消えていく。
 そして三分ほどして、おもむろにギターノイズが顔を出す。

 ここでいきなり、人の演奏を感じさせる雰囲気へ変わるのが、なんとなくユーモラスだ。
 もっとも演奏を始めると、生演奏くささは希薄になった。
 ギターを使った金属的な音が、多彩な表情で現れては消えていく。
 ごろごろ転がる音からは、ギターのイメージすら現れてきやしない。

Let`s go to the Cruel World