今お気に入りのCD(番外編)

CDじゃないけれど、見に行ったライブの感想です。

2000/5/31 西荻窪 アケタの店

 出演:明田川庄之&布団

今回のライブの趣旨は、明田川荘之&布団の初CDリリース記念だ。
 明田川も演奏中に「CD発売中!今日限り300円引き!」などと、珍しく営業に余念がなく(笑)、MCでなんども冗談交じりで話していた。
 メンバーは8人構成。明田川荘之(p&オカリナ)に林栄一(as),宮野裕司(as)、大原裕(tb)、中尾勘二(ds)、関島岳朗(tuba)、榎本秀一(ts、尺八)、上野茂都(三味線、唄)と、明田川荘之&布団に、先日ライブをやった「邦楽化作戦」のメンバーが合流した格好だ。
 こじんまりしたアケタの店のステージ・スペースは、もう演奏者だらけでいっぱいって感じだ。マイクが林立し、かろうじてプレイができるくらい。大原はトロンボーンがマイクにあたるので、ステージ開始直後はしきりに立ち位置を気にしていた。

 この日はお客も大勢来ていた。通路や出入り口あたりにパイプ椅子が置かれ、最終的には40人くらい観客がいたんじゃないかな。20人も入れば椅子席がうまるアケタの店だから、演奏者と客で人が充満していた。

 ちなみに今日のセットリストはこんな感じ。
1・わっぺ
2・矢倉
3・侍一本ブルース
4・エアジン・ラプソディ
 (休憩)
5・いかるが桜
6・Mr.板谷の思い出
7・アフリカン・ドリーム
8・りんご追分
9・スモール・パピヨン

 まずは手探り状態の「わっぺ」からスタート。榎本が時折、明田川とアイ・コンタクトをして、ホーン隊にきっかけを出す。
 僕はどうも明田川の演奏を聞いていて、開演早々からのめりこむことが少ない。たいがい一曲目は、様子見をしてしまう。
 このときは、ちょっと曲のポイントをつかみきれず、内心戸惑いながら聞いていた。
 今日のライブでは、ドラムのチューニングがゆるい。特にバスドラ。
 深みのある「ドスッ」って音が、音楽に広がりをもたせていたと思う。
 前回の「邦楽化作戦」の時と違って、尺八の音も気持ちいい。リードミス風のブレスノイズがほとんど聞こえずにほっとしていた。
 もっとも、この夜の大半はテナー・サックスを吹いていたけど。

 多少ラフな「わっぺ」が終わり、上野茂都の定番(?)な弾き語りによる「矢倉」。これは棋譜を読み込み、邦楽風にうなる。ホーン隊やピアノはひっこみ、ドラムとチューバのシンプルなセットで聞かせた。
 三味線のPAバランスも見事。前回のライブではほとんど聞き取れなかった三味線が、きれいに響いて楽しめた。
 曲は「侍〜」に続いていくが、明田川はあまり全面に出ずに、バックで支える。逆にホーン隊のソロ回しへたっぷり時間をとり、各演奏者の個性たっぷりの演奏が繰り広げられた。
 前半は「エアジン・ラプソディ」で締めるが、これがとてつもなくかっこいい熱演。今日のベストトラックだと思う。
 明田川の個性である黒っぽくない日本のジャズを、各メンバーが咀嚼して滑らかだけど熱っぽい演奏を、えんえんと聞かせてくれた。

 30分ほどの休憩をはさんで、今度は「いかるが桜」でスタート。
 この曲が終わってのMCでタイトルに引っ掛けた「布団」の話題を明田川が雑談風に話し出す。唐突に榎本が「貸し布団っていくらぐらいがいい?」と言い出し、明田川がとっさに受け答えできずに詰まった瞬間に、林がサックスで切り込んだ瞬間がすごかった。
 そのまま林は循環呼吸を駆使しながら、サックスを苛め抜くソロを10分近く吹きまくる。ノイジーな音が溢れ出し、アケタの店を林の音が駆け巡った。
 この夜の林はなんども激しいソロを聞かせたが、この無伴奏ソロがすごかったな。
 オーラスは「スモール・パピヨン」を貫禄たっぷりに演奏して締めた。
 各演奏者の個性がよくわかる長めのソロの機会を頻繁に配置して、利き所が多いライブだった。
 時にヨレるところもあるが、自由自在にリズムを変化させて、メロディアスなジャズからフリーな演奏まで懐が広いプレイが気持ちいい。
 結局11:20分までかけて、とことん「布団」の演奏をたらふく堪能できた夜だった。

2000/6/3 西荻窪 アケタの店

 出演:明田川庄之

 
今夜の深夜ライブは、なぜかお客が盛況。0時ジャストくらいに店に入ったのに、すでに6〜7人くらいのお客が来ていた。
 若いカップルから年配まで、またもや客層はばらばら。いったいどういう基準で、このライブを聞きにくるんだろう・・・考えるたびにおもしろい。
 そのあともぱらぱらとお客が来て、10名くらいになったかな。
 時間帯を考えると、盛況といってもいいかも。
 明田川も盛り上がったのか、今夜は0:20くらいに演奏が始まった。

 まずは「アイ・クローズ・マイ・アイズ」で助走をつける。
 続いて「いかるが桜」を演奏した。
 今夜の明田川のピアノは、僕が聞く中で一番ラフ。荒っぽくピアノを叩き、しょっぱなからひじ打ちで鍵盤を叩き、腕全体を使ってぶったたく。しまいにはケリまで登場した。ミスタッチも目立つ。明田川がミスタッチをするのって、すごく珍しいのに。なんか、機嫌悪いのかなあ。心配になってきた。

 そのわりに、妙に今夜の明田川は饒舌だった。 
 続いて6/17くらいに神奈川で演奏するというオカリナ曲を聞かせたが、たっぷりと説明をしたMCをユーモラスに話す。
 声が聞こえづらいとみるや、すぐさまエアコンを切る店の心遣いもうれしい。
 
 きれいなオカリナのメロディでうっとりしたあとに演奏したのが「アローン・トゥゲザー」。
 これがまた、高速でハードな演奏。とてもアグレッシブな演奏で、めちゃくちゃいかしてた。イスをギイギイ軋ませながら、すさまじいスピードで音が溢れ出す。トレードマークの唸り声を盛大にあげながら、わくわくするプレイを聞かせてくれた。
 もうこの瞬間に、僕は今夜のとびきりな音楽世界に、ずっぽりはまっていた。

 つづいては「りぶる・ブルース」。いままで何度か耳にしていたが、このきれいなメロディの曲名がわからなかっただけに、判明したのは嬉しい。
 しかし明田川が市川りぶるで、月に一回演奏してたとは知らなかった。こっちも聞きに行きたいなあ。
 この曲でも演奏はめちゃくちゃフリー。がっつんがっつんピアノをぶん殴る。
 オカリナをピアノの弦にのせ、ノイズを盛大に出しながら弾いていたのはこの曲だったかなあ。
 ひじ打ちや腕で鍵盤を叩くだけでなく、立ち上がって助走をつけてピッチャーのようなポーズで、高音部をぶん殴る。しまいにはピアノ本体まで叩いていた。
 そんな荒っぽい演奏が続くから、いったい何があったのか心配しながら僕は演奏を聞いていたっけ。

 ただ、結論としては。今日の明田川はとてもサービス精神旺盛だった。
 唐突に演奏を終わらせて、今日は終わりかな?と思った瞬間。
 「今何時?1時45分か。なら、アンコールね」と、観客の拍手も待たずに次の演奏になだれ込む。
 結局そのままピアノやオカリナを弾く続けて、じゃかじゃんっと終わったのは2時10分くらい。
 正味2時間近くの、またもや大満足のライブだった。

 

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