Guided by Voices

Let`s Welcome The Circus People/Tobin Sprout(1999:Luna)

Tobin Sprout - Vocals,Guitars,Bass,Drums,Piano,Organ,Casio-C7&Tambouring
Jim Eno - Drums on 5,8,&11

 トビンの3作目になるソロアルバム。
 ジムがドラムで数曲サポートしたほかは、例によって全てをトビンが多重録音で作り上げる、マルチ・ミュージシャン振りを見せている。
 一曲を除き、収録曲の作曲も全てトビンのペン。
 「Vertical insect」のみ、妻(かな?)のローラ・スプラウトと共作している。

 もちろん、ジャケット・イラストもトビン作。
 いつもどおり「ソロ作」にふさわしい、トビンの才能を総動員して作り上げた作品だ。

 今作では音にエッジが立ち、きれいな音で録音されている。
 マスタリングは、ジェフ・グラハム。彼の手柄によるものか。
 曲調はバラエティに富んでいるが、どの曲もかなり丁寧にアレンジされている。

<曲目紹介>

1)Smokey Joe`s perfect hair

 アルバムのオープニングは、とつとつと歌うスローな曲だ。
 楽器が絡み合って、渋いグルーヴを産み出している。
 派手さはないけど、かっこいい。
 曲全体がじわっとスピーカーからしみだしてくる。

2)Digging up wooden teeth

 サビの最後の部分で「carry on、carry on♪」って軽く口ずさむ瞬間が、キュートに響いて魅力的な曲。
 ミドルテンポの素朴なポップスを、さりげなく歌っている。

 バックをドローン的に流れる白玉のキーボードが、しっかりとアレンジの芯になっている。
 時に荘厳な雰囲気を盛り上げ、演奏に厚みをつけるアクセントとして、どっしり曲を支える。
 僕のツボにこの曲はぴったりはまった。こういう優しいポップスは大好き。

3)Mayhem Stone

 バックの演奏は淡々とリズムを最小限に刻むだけ。
 ベースがひそやかにオブリを奏でるのみ。
 あっさりとしたアレンジで、ポイントを歌に凝縮させている。
 メロディはシンプルながら柔らかい。
 はかなげに歌うトビンの喉が、とても魅力的だ。

4)And so on

 前曲とは一転してにぎやかにはじけるアレンジ。
 似たようなミドルテンポの曲だけど、こちらは華やかに決めた。
 もっともっと聴いていたい演奏なのに、2分くらいであっというまに終わってしまう。なんともったいない。
 トビンのヴォーカルは、ちょっと弱いかなあ。

5)Making a garden

 エフェクトをかけたトビンの歌声が、ひしゃげて響く。
 全体的に音像はこもって、やわらかく漂う。
 たどたどしいロマンチックさが、ほのぼのしていい。
 エンディングにしたがって、わずかにヴォリュームがあがるミックスもいいぞ。
 メロディにもう少しメリハリがあると、もっといいのに。

6)Vertical insect(the light are on)

 さわやかに、軽やかにメロディが奏でられる。
 うきうきして、すばらしい曲だ。
 浮き上がりそうな雰囲気を、たどたどしいドラムで足を引っ張る。
 ・・・とはいえ、これは不可抗力なんだろうな。

 皮肉なことに、トビンの自作自演だからこそ、デモテープっぽくなってしまった。
 だけど、とてもキュートな曲だ。それだけは間違いない。

7)Maid to order

 ほのぼのとメロディが流れていく、キャッチーなポップス。
 サビで軽くフレーズを鼻にひっかけ、浮かび上がる瞬間がとてもいとおしい。
 派手さはないかわりに、ゆったりと聴ける。
 散歩しながら聴いたら楽しいだろうな、この歌って。

8)Liquor bag

 リズムボックス風のタイトで規則正しいビートを、ジム・イーノが叩く。
 そのドラムに乗って、楽器がどんどん重なってくるアレンジ。
 ライブの冒頭で演奏したら盛り上がりそうな曲だ。

 トビンは声を微妙に使い分け、一人二役で曲に厚みを出している。
 メロディはかっこいいから、もうちょっと爽快感を出して欲しかったな。

9)Who`s adolescence

 こんどは、しっとりとしたビートに変わった。
 こうした選曲の多彩さも、このアルバムでは見逃せない。
 エコーを効かせて、トビンは演奏に埋もれながらじっくり歌う。
 優しいメロディが素敵な曲。
 コード・ストロークされる、ギターの音色が心地よい。

10)Lucifer`s flaming hour

 切れのいいリズムのポップス。シングル・カットも似合いそう。
 めりはりの効いたメロディが弾む。
 勢いだけで飛ばさず、ふっと間を活かしたアレンジもいい。
 
 シンプルなリズムセクション、ざくざく刻むギター、時にはメロディをなぞり、時にはリズミカルに合いの手を入れるコーラス。
 さまざまな要素ががっちりかみ合って、とびきりの曲を作り出している。

11)100% delay


 中間部分でモヤける雰囲気が、この曲の一番の魅力。
 こういうサイケなニュアンスも好きだ。
 メロディの起伏は少なく、アイディア一発で突っ走ってしまう。

12)And then the croud showd up

 アルバム最後の曲は、ちょっと不安感をあおるイントロで始まる。
 ドラムはまるでドンカマのように正確なリズム。
 ミドルテンポで、そっとメロディを置くように歌う。
 曲展開はそれほどない。
 しっかり作品世界を確立させ、一定のトーンでそっと流れていく。

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