Guided
by Voices
"We
All Got Out Of The Army" Robert Pollard (2010:Guided By Voices
Inc.)
G,vo:Robert Pollard
Instruments:Todd
Tobias
Voice [Shouts Of Approval]:John "Larm" Courtney, Tim Tobias on
4
Cello : Chris George on
17
どこかメロウな色合いを感じる。高音が強調されてるような。
Bostonから再生GbVをつなぐ、猛烈な発表リリースの一里塚みたいなアルバムだ。
前作"Elephant
Jokes"から約半年後にリリースのソロ。毎回お馴染み、トッド・トバイアスに演奏を任せボブは歌に専念した。しかしギターでもボブのクレジットは有るのが、前作に続きちょっと珍しい。
前年10月にBoston
3nd"Zero To 99"を、11月にはGuided by Voicesの蔵出しBox "Suitcase
3"を発売。そのまま立ち止まらず、翌年2月で本盤発表に至った。本盤収録曲は(1)を除けば、ライブで取り上げた様子はない。
5月にBostonの4th"Our
Cubehouse Still
Rocks"発売を予定するも、9月に延期。
変わりのように本盤の4ヶ月後、6月に"Moses On A Snail"をリリースした。
そして"Our
Cubehouse Still Rocks"を発売した月末、9月末から年末まで、ボブは2年ぶりのツアーに出た。唐突にGuided by
Voicesを再結成して。
もはやBostonへは未練なかったようだ。
本盤には妻のサラ・ゼイド・ポラードが3曲、兄弟のジム・ポラードが2曲提供した。収録曲が足りないなどはボブに限ってありえない。よほど気に入ったか、別ユニット立ち上げるまでも無いと考えたか、どちらかだろう。ぼくは後者のような気がするが。
<全曲感想>
1.Silk Rotor
発表した年の7月9日のライブで演奏もされた。前作"Elephant
Jokes"でもふれた、本盤の4ヵ月後に発表のソロ、"Moses On A
Snail"全曲ライブをやったイベントでのこと。
歯切れ良いカッティングと歪んだフレーズの組合せなイントロが涼やかだ。そのままアップテンポで疾走する、アルバム幕開けにふさわしい爽快な曲。
トッドの多重録音とは思えぬ、バンド的なアンサンブルが炸裂した。一丸となって畳み掛ける。
2.I Can See
ちょっとバタつくエイトビートのドラムにアルペジオで刻むエレキギターとベース。淡々とフレーズを繰り返してく構造はミニマルな曲。音程と細かい節回しをボブが変えており、退屈さを回避した。
サビでふわりと声を浮かせる。しかしハイトーンにまで至らない。じわじわっと伸びていく。
3.Post-Hydrate Update
ボブの妻サラ・ゼイド・ポラードの曲。ボブとは異なる瑞々しさをメロディに込めた。全曲と似たように同じフレーズを繰り返すタイプだ。アレンジで工夫し、時にはリズム抜きさしでノリに落差を付ける。サビがあったほうが魅力増したとは思うが。
バンド・サウンドながら弾き語りっぽい曲だ。
4.Your Rate Will Never Go Up
メロディがキュートな名曲。鼻歌っぽく軽やかに歌い始め、サビで盛り上がった挙句にちょこんと落し、シャウトでまとめる。ひとつながりのメロディ・ラインの中で、さまざまなドラマが込められてる。
1と3の奇数拍にアクセント置いて、ほのぼのしたムードを演出した。
シャウト部分ではトッドの兄弟ティム・トバイアスと、John
"Larm" Courtneyが友情(?)出演した。後者のジョンは、のちにボブのソロ"Honey Locust Honky
Tonk"(2013)で写真家としてクレジットされる。
5.On Top Of The Vertigo
アレンジがユニークだ。ベース成らぬトップでラインの刻みをいれた。ベースかギターにローパス・フィルター入れたのかな?壺を叩いてるような音だ。鳴らしっぱなしでなく、サビでフェーダー下げたミックスにした。
楽曲はシンプルなロック。フレーズ一発を繰り返し、盛り上げていく。ドラムがベタッと響くため重たいアレンジになったが、煽ってもかっこよくなったと思う。
6.Red Pyramid
ジム・ポラードの作曲。切なげなロック。ボブが調子っぱずれ気味に歌うため、よけいダルい雰囲気が強調された。なぜボブが収録したかよくわからない。サビでのメロディアスなギター・ソロは良かったが。
7.Talking Dogs
(4)と同様に甘酸っぱいボブ節。こちらはあまり展開させず、じっくりとメロディを繰り返す。サビへ行かずにそのまま終わってしまう。アレンジもオーソドックスなロック。
明るい響きのエレキギター数本が織りなすカントリー風味が特徴か。
8.Rice Train
ジムの曲。どれもこれもラフだな。メロディは音程あってるのにバックと合わず、やはり音痴っぽく聴こえる。シンバルとスネアをとにかく連打の、ラフに見せかけたアレンジだ。ひよひよいうシンセも安っぽい。地下室デモテープ風に大雑把な仕上げの響きで、サイケ色を強調した。これはこれでアレンジ・センスの勝ち。
9.Wild Girl
今度はボブのデモテープ風。アレンジは工夫せず、そのまんま。ちょっと鼻づまり気味の歌声で、エレキギターを弾き語る。ボブ流のメロディで、最後にいたずらなロングトーンを伸ばしてくとこが工夫。
エンディングでカセットテープを止める風のノイズが入ってるが、たぶんこの曲はデモそのままなんだろうな。
10.I'll
Take The Cure
LPではここからB面。サラの曲を頭に持ってきた。爽快なイントロだが歌い始めず、語りかける異色の展開だ。オブリのシンセやギターの綺麗な響きに耳の軸足が行きかけたところで、シンプルなメロディがダブル・トラックで現れる。
ずいぶん凝った曲展開をサラは書くな。アコギの軽快なストロークが強調され、エンディングへ。どこまでがサラの曲でどこがトッドのアレンジだろう。
メロディアスと逆ベクトルだが、アイディアに惹かれた。
11.Cameo Of A Smile
がっつりバンド・サウンド。ちょっと上ずり気味のボーカルがサビで着地する。コード進行の工夫で歌声に浮遊感を出す趣向か。サビでのシンプルなハーモニーが爽やかだ。
ひしゃげて掻き毟るエレキギターと、ポップなリフがごく自然に共存した。
12.Poet Bums
フェイドインでゆったりめに幕を開けた。これもボーカルと和音が座り心地悪い響きから始まる。一筆書き作曲のボブ節が着地点見えずに平歌で流れるのを、強引に間奏とうっすら細い奥まったシンセのフレーズで強引にサビっぽく聴かせた。
ほとんど起伏無いメロディをアレンジの妙味で聴かせる。
13.How Many Stations
抑えたシャウトでポップに響くメロディ。シンセとギターで包み込み、炸裂はさせない。逆にこれはアレンジがもどかしい。もっと開放的なギター・ロックで煽ったら、ライブ映えしそう。
あまり展開無くシンプルなフレーズを、ボブは繰り返し続けた。後半部で譜割を長めに広げたのがサビ、か。あまりに滑らか。短すぎる。ギターの間奏がそのままアウトロで幕。
14.His Knighthood Photograph
ディレイで付点音符なエレキギターが小刻みに迫り、軽快に盛り立てた。今度はボーカルを一気に前へミックスした。ところがバックのノリと歌の盛り上がりがちょっとチグハグ。
二層構造みたいな感じ。エコー成分希薄なボーカルが生々しく響いた。
15.Face Down
エレキギターの弾き語りタイプな曲。ゆったりのストロークから、いちおうリズムが乗る。か細いハイトーンでボブが歌いかけた。柔らかくサイケな旋律が愛おしい。
ギターの残響で空間を埋め、一筆書きなメロディに余計な飾りをつけずにひとしきり聴かせたあと、メロディアスなギター・ソロへ。
3分くらいとまずまずな長さの作品だが、あっという間に終わった感あり。テンポのせいと、小技の無い流れが気持ちいいせい。
16.We All Got Out (Of The Army)
妻サラの曲。投げっぱなしのパンキーな曲で、途中からテンポアップした。まくしたてるボーカルも含めて、作曲と言うより勢い一発のロックだ。敢えてボブがこの曲を採用した真意はどこに。
サビでぐいぐい押す平板な勢いは、確かに少しキャッチー。多重ボーカルでコーラスを入れて賑やかさを増す。
楽曲もシンプルなコンボ編成だが、厚みあるアレンジに仕立てた。ドラマティックな編曲に加え、場面ごとに楽器を前後させるミックスの勝利だ。エンディングは急停止だな。
17.Faster To Babylon
ゲストにChris
George(vc)が参加した。アコギの弾き語り曲で、呟きともメロディとも取れるボブの声を、淑やかなチェロがゆったりオブリで盛り上げた。数本のチェロをダビングし深みを強調する。
サビで声質をちょっと締め、歌い上げる。一転、エレキギターとリズムが入りサイケに雪崩れるアレンジが良い。最後に色々とドラマティックに盛り上げた。