Guided
by Voices
"Superman Was A Rocker" Robert Pollard(2008:Happy
Jack Rock Records)
Producer - Robert Pollard,Todd Tobias
アルバム2枚同時発表から数か月後に、Mergeでなく自らのレーベルから発売した。
ソロ名義ながら中身は1980-2007年録音集で、GbVも含めたアウトテイク蔵出しか。馴染の顔ぶれと共作、がアルバム・コンセプトのようだ。
録音時期は記載無く、どれがいつの収録かは不明。顔ぶれ視ても断定は難しい。仲間内でいつ録音してても不思議はない。
GbVDB上だと収録曲はどれも、ライブ演奏された履歴がない。次なるステップ前に、ボブがサクッとリリースした息抜きみたいな作品。
そもそもジャケからして、"From A Compound
Eye"(2006)のジャケ写を加工したもの。セルフ・パロディみたいな、やっつけ感漂うデザインは、ブートみたいだ。
実際のサウンドもローファイ感バリバリ。ごく初期のGbVな乱雑さを久しぶりに味わえた。なんだかんだでトッドが仕切ると、ラフながらもだらしなさは無いため。
15分で30分強だからアルバムと解釈してたが、公式にはミニ・アルバムらしい。
録音が猛烈にラフで楽曲も勢い一発が多いため、率直なところマニア向けの盤ながら。演奏ではなく、作曲や録音で遊ぶスタイル。その自由奔放なGbV流の、保守本流アルバムでもあったりする。
<全曲紹介>
1.Another Man's Blood
Vocals,Guitar,Outro, Robert
Pollard
Drums and Percussion Jim Pollard
Bass Guitar Mitch
Mitchell
Outro Doug Gillard
Intro Anacrusis
Outro Nate
Farley
Outro Tim Tobias
ジム、ミッチとの共作。オーソドックスなギター・ロックの体裁を取る曲のトラックは、ヒスノイズがバリバリでカセット録音っぽい。ただしロバートの声はクリア。昔のインストをベーシック・トラックに歌を新たに録音、か。
唐突に楽曲がカットアウトされ、改めて始まる。今度はアコースティック・セッションに笑い声や喋りがうっすら乗る。これがダグやネイトがクレジットされたアウトロか。これもベーシック録音とは全く別タイミングで付け足しだろう。
楽曲的にはつかみどころ無く、ワイルドな演奏にツルッと滑るボーカルの合体が、奇妙な味わいを出す。メロディ断片をコラージュした印象も受けた。
2.Go Down First
Vocals Robert
Pollard
Guitar John Dodson
Drum Machine John
Dodson
Intro DJ Rich Turiel
冒頭のDJをつとめるRich Turielは、ボブの"When We Were
Slaves"や"Spider
Eyes"にもクレジットあり。上ずり気味でくっきりした喋りは、たしかにラジオDJだ。
GbVの2nd"Sandbox"にのみ参加のJohn
Dodsonと共作。これだけ見ると、当時のアウトテイクっぽいが、真実はいかに。
軽快なドラムマシーンとギターに載って、ボブが歌うこの曲は疾走感あってかっこいい。ボツになったのが不思議だ。本曲はモロにデモ録音で音質はぼろい。だが中間部でボーカルや演奏がふわふわ飛ぶ加工が施されてる。この辺が、凝ってるのか単に埋もれたデモか判別つけづらい。
3.Back To The Farm
Instrumentation Kevin March
Intro Mitch
Mitchell
Intro Kevin Fennell
Intro Hiram Campbell
ケヴィンと共作名義で、実質はおしゃべりが続く。電話越しの声がロバートか。クレジット上はHiram Campbell。名前は?と聴かれ電話越しに"ハイラム・クランブル"と答えてる。これが曲4分中2分。
そのあとはギター・インストでシェイカーのみをリズムに、数本のギターが重ねられた。メロディを弾くギターはアドリブで無く、メロディを繰り返す。ほんの少しミニマルな印象を受けるラウンジ・ポップスだ。
何本も重なったギターがストロークを連ねる瞬間は、問答無用に爽やかだ。
録音もさほど音質悪くない。なぜボブがこの曲を入れたのか。あまりボブの匂いがしない曲だ。
4.Substitute Heaven
Vocals,Guitar Robert Pollard
Drums and
Percussion Mitch Mitchell
Intro DJ Cosmic Donovan
ごく短いDJの声に誘われたラフなセッション風の曲。ギターの音程がちょっとヨレて聴こえるのはテープ劣化か。録音は音質悪い。
ミッチと共作で、涼やかなロック仕立ての良い仕上がり。サビで少しずつ上昇するメロディが突飛なのと、叫びかメロディか区別つかないトリッキーな旋律線が面白い。
合間のドラム・ソロがズタメロなのはご愛嬌。
遊び曲とは思うが、聴いてるうちに面白くなってくる。冒頭のDJはボブの変名かな?
5.Prince Alphabet
Vocals,Guitar Robert Pollard
Outro Ideas To Work With
Inc (IWWI)
ボブのソロ。 ギターの低音弦2音の、単音繰り返しだけが伴奏と言う斬新なアレンジを施した。寂しくも凛々しい歌声で、低音からいきなりファルセットに飛ぶ突飛なメロディだ。
アウトロでクレジットの"IWWI"は意味不明。妙にサイケなテープ・コラージュ部分の素材と思うが。このアウトロもけったいで、1分ほどかけてフィルター・ノイズの残響にギターやハーモニカっぽい断片が乗っかる。
ボブのコラージュ・センスはいまいちわからない。視点が見えぬままコラージュが進む。
6.You Drove The Snake Crazy
Vocals,Handclaps Robert Pollard
Intro DJ Cosmic
Donovan
ボブのソロで、アコギ弾き語りに手拍子、さらにコーラスを何重にもダビングした。いくつかの声はクリアなため、最近の録音かも。
主旋律が埋もれハーモニーのダビングが、四方八方からくっきりとかぶってくる極端なアレンジだ。
後半はマラカスのみをバックにアカペラ・コーラスが聴ける。ピッチが微妙にずれても、細かいことは気にせず楽しげに。
7.Surveillance
Vocals,Guitar Robert Pollard
ボブのソロが続く。ぶりぶりにジェットマシーンをかけたギターの超サイケなトラックへ、エコーたっぷりな夢見心地の歌が乗った。
ドリーミーを突き抜け、トリップ気分満載な歌。ボブの場合は泥酔か。
音程感の希薄なトラックでうねうね一筆書きで歌うメロディは、果てしなく漂っていく面白さ。
最後は歌声がディレイで繰り返され、鳥の囀りが乗る。この音像の対比はキュートだった。
8.Fascination Attempt
Other [Flub Music] Catshit Nosehit
Performer [Flubbed
By] DJ Rick*
"Flub"とは"しくじり"の意味。前曲みたいなふわふわしたノイズは、テープ高速回転にも聴こえる。Catshit
Nosehitが誰かは、不明。
さらにDJ Rickのトチったテイクをかぶせた。30秒たらずのインターミッションなトラック。
9.Love Your Spaceman
Vocals Robert Pollard
Instrumentation Kevin March
気分を変えたきっちりポップなこの曲は、ケヴィンとの共作。ケヴィンのギター多重録音とリズムボックスのベーシック・トラックを元に、ボブが歌を重ねた。歌のエンジニアはトビン、のクレジットだ。
シンプルなトラックへ、見事に凝った歌を乗せたボブのセンスが光る。主旋律がいつしかハーモニーのメロディに潰され、曲がじわじわと変貌する。主線と副線がざわざわと主役争いするかの如く、スリリングな魅力がさりげなくある。
10.Jumping
Written-By, Performer Robert Pollard
ボブのエレキギター弾き語り。ハーモニーをダビングしてサビのパンチ力を補強した。
タイトルをサビで連呼する瞬発力がこの曲の魅力ながら。ギターをかき鳴らすボブは最後にフィードバックっぽい音を延々響かす、ノイジーな展開にも興味を惹かれた。
おまけや余韻で無く、あくまで楽曲の一要素でギター・ノイズが曲につけられた。後からわざとらしくダビングやテープ処理した感じはしない。
代表曲とは言わないが、ボブとトッドのポップ/ノイズ双方のセンスがきれいにまとまった佳曲としたい。
11.St. Leroy
Written-By, Performer Robert Pollard
ボブのエレキ弾き語り。ふにゃけた歌声で柔らかなメロディを歌う。ピッチが揺れるラフさや、ギターばかり目立つアンバランスな録音ではあるものの。
意外とメロディがキュートな作品だ。きっちり新規録音したら、小粋な小品になったかも。
喉を詰めて高音で歌うサビのメロディは突拍子無い。このローファイな録音だと、スルッと聴き流してしまうが。ちゃんと録音だと変になっちゃうかなあ。
12.Peacock
Vocals,g,p Robert Pollard
Guitar Jim Pollard
Drums
and Percussion Mitch Mitchell
Intro EPT
"ピアノ"のクレジットあるが、遊び風に和音や単音をボブが弾く程度。3人の共作名義だが、パーティ・バンド風にラフなセッションを楽しんだ印象を受けた。
冒頭からきっちり声をそろえてタイトルを連呼するあたり、作曲はきちんとされている。60年代英ロックの影響も連想した。サビでムード変えてポップや唐突なシャウトに飛ぶあたり、ずいぶん練られてる。これもボツが不思議だ。録音の感じから、かなり前の録音っぽい。
しかしトッドがボーカルのエンジニアでクレジットあり。サビの囁く歌声は、最近のダビングかも。
13.More Hot Dogs Please
Drums and Percussion Tobin Sprout
Vocals Robert
Pollard
Bass Guitar Jim Pollard
Guitar Mitch
Mitchell
Intro DJ Ricky T
本盤唯一のトビンがクレジットされた曲。冒頭のDJはミスをわざわざ残して、やり直すとこまで収録した。
クレジットは録音メンバー全員の共作。重厚な低音が目立つアンサンブルで、シンプルなドラムを軸にギターのウネリが充満した。
シャウト気味なボブの歌声が若い。今一つ盛り上がらず曲は終わってしまい、正直魅力に欠ける。あえて本盤を締める、重いドアみたいな位置づけか。