Guided by Voices

Robert Pollard and his soft rock renegades"Choreographed man of war"(2001/Luna)

Robert Pollard - vo,g
Gerg Demos - b,lead g on 1,3,7,8,
Jim Macpherson - ds,tank commander


 ロバートが01年に、自分のレーベル"Fading Captain"からぽこっと発表したレコード。
 GbVのサブユニットとなる大げさなバンドではなく、単純に思いつきをさくっと録音した即席バンドではないか。

 メンバーはGbVゆかりのミュージシャンばかり。
 ロバートがレコーディングしたくなったとき、たまたまスケジュールがあいてたとか・・・お手軽にメンバーを決めた気がしてならない。
 おおざっぱな音作りが似合うサウンドが詰ってるものだから。

 なお、アシスタントとしてネイト・ファーレイと、ポラード弟の名前もクレジットされている。具体的にどんな作業を手伝ったのかは謎。
 ジャケットのコラージュもロバートの手によるものだ。

 GbVとは違い、アルバムを通してハードなギターが印象深い。
 ハードロック風とまで行かずとも、アメリカン・ロックにありがちな大味のギターリフがそこかしこで聴ける。
 もっともいざ歌いだすと。スタジアム級のライブでは映えなさそうな、ちょいとひねったメロディをあわせるところがロバートらしいが。

 収録曲はたった10曲。短い曲のつるべ打ちスタイルを好むロバートにしてはめずらしい。

<各曲紹介>

1.I drove a tank


 モーターの回転音らしきものをいくつか重ねたノイズがイントロ。
 二本のギターリフが絡み合い一歩一歩進む、しっかりとしたロックだ。
 ボーカルにはエフェクターをかけているのかな。ちょっとこもっている。
 
 ドラムはドタバタ手数が多いものの、メロディにはさほど疾走感がない。
 かなり大味なロックンロール。GbVらしいメロディは散見されるが。 

2.She saw the shadow

 シンプルなエレキのストロークに乗って、とびきりのメロディが流れ出す。
 一分くらいまではギターのみ。シンプルにロバートが歌いまったところで、バンドサウンドがかぶさるアレンジが粋だ。

 大サビへ展開を期待したところで、あっけなくフェイドアウトする。

3.Edison`s memos

 まずはミドルテンポの明るいイントロ。ハイトーンのボーカルは、丁寧に旋律をなぞっていく。
 歯切れいいギターとは裏腹な、断片的なメロディが魅力的。
 
 ここでのギターソロはグレッグ・デモスかな。素朴な音使いが効果的に響いた。
 ロバートは後半で声に電気的に変調をかける。
 サイケな雰囲気が、ドラマティックに曲を盛り上げた。
 ロバートにしてはめずらしく、きっちり全体像まで視野に入れ構成したアンサンブルだ。

4.7th level shutdown

 ほんのりピッチのずれたロバートのボーカルはご愛嬌。 
 きれいなメロディの曲ながら、どこかノイジーに響くのはエフェクトをかけたボーカルのせいかな。
 
 3分半の時間を持たせるには、ちょっと物足りなさが残る。
 ほかのバンドならこんな贅沢な感想は持たないけど。GbVは山ほど魅力的なメロディを使い捨てるだけに、ついつい要求水準が高くなっちゃう。

5.40 yards to the burning bush

 ハイハットを叩くようなギターのカッティングが、前曲からメドレー形式で入ってくる。
 ハードなギターをアクセント的に入れ、かなり荒っぽく仕上げた。
 対照的に、せわしなくしゃくりあげるギターはニューウエーブ風。
 二種類の要素が強引にミックスされている。
 ロバートのメロディはいまいちかな。小品ぽいイメージあり。

6.Aeriel

 リバーブを効かせたギターが、ゆったりリフを刻む。
 ラフな録音なのがもったいない。これ、いい音で聴いたら気持ちいいだろな。
 ボーカルの旋律はなかなか素敵。

7.Citizen fighter

 畳み込むビートが爽快なロックンロール。ちと大味かな。
 ロバートにしては、そうとうオーソドックスなアレンジだ。
 オルタナ・ギターバンドにありがちな曲。
 ポップではあるけど、もうちょいひねりが欲しい。
 一般受けはしそう。シングルにいいかも。

8.Kickboxer lighting

 これもギターを前面に出したロックだ。微妙にリズムのずれたハイハットがなんだか面白いぞ。
 エンディング部分のリフから展開する箇所が好き。期待をもたせる緊張感と、ダブル・ボーカルによるメロディがかっこいい。

 この曲もとても耳になじみやすい。こういう普通のロックもロバートは一杯かけるんだ。職業作曲家としても大成したろう。
 オーラスでギターだけが残るアレンジがわくわくする。もっと展開して欲しかった。 

9.Bally hoo

 テンポを揺らして緩急を効かせた曲。
 どしゃめしゃに歪ませた音と、素直に弦を弾く音と。対照的な音色を交互に挟み込む、二重構造の構成になっている。

 微妙なタイミングでリズムが変動する箇所がスリリングだ。
 テープ編集でつないでるようには聴こえないが・・・。
 リズム隊はこれって一発取りしたんだろうか。

 終盤にギターで太くメロディを蠢かせる懐の深さも、この曲の魅力のひとつだ。
 凝ったアレンジと雄大なフレーズが、プログレに繋がる要素も感じた。

10.Instrument beetle

 トリをつとめる歌は、ロバートっぽさが出ていて大好きな曲。
 どっしり腰を落ち着けて背筋を伸ばし歌う旋律は、実に味がある名メロディだ。

 アレンジは基調がギターのシンプルなリフと、ベースの刻み。そこへパーカッションが時折おかずで挿入される。
 ギターは何本も重ねられ、複雑な響きになった。

 曲自身は約7分と長丁場。ギターをかきむしる音がドローン的にミックスされ、終盤の数分はひたすらワンコードでエンディングまで流れていく。
 もうボーカルも存在しない。つぶやきのような喋りがバックで聴こえるだけ。

 ドラムがタムをパルス風に連打する。数本のギターが空間を埋め尽くし、のしかかるようなプレッシャーがかっこいい。
 リズムは次第に早くなり、みるみる収斂してゆく。
 まさに大団円にふさわしい作品だ。
 
 エンディングは楽器の音は消え、喋りだけが残る。
 唐突にカットアウトで終演。コーダを決めずに録音しっぱなしでほおり投げるのは、いかにもロバートだ・・・。

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