Guided by Voices

"Silverfish Trivia" Robert Pollard (2007:Prom Is Coming)

Producer, Guitar, Bass, Keyboards, Sounds – Todd Tobias
Vocals, Guitar – Robert Pollard

 アレンジに弦を投入、ロバート・ポラードの新機軸を見せた7曲入りのミニ・アルバム。(2)と(4)は前年、06年のツアーで披露すみ。しかし本盤はライブとは別ベクトル、メロウなスタジオ作業作を狙ったようなコンパクトさだ。
 ロバートは06年ツアーでの新曲群は、アルバムを分けつつ正式リリースした。楽想なりの、なんらかボブ流基準だろう。

 ボブの新レーベル、Prom Is Comingの第一弾リリース。もとはフルアルバムの構想あったらしく、GbVDBには2種類の15曲入り曲順が掲載されている。最初のアルバム案は" The Killers"。次に"Gratification To Concrete"に。
 同名の15曲入り構成まで検討が進むも、なぜかアルバム盤"Silverfish Trivia"構想も全てボツ。本EP盤に落ち着いた。

 本盤の収録は7曲、原案からほぼ半分に減らされた。出したがりに見えるが、膨大な"Suitcase"シリーズが示す通り、きっちりボブは曲の取捨選択を行っている。
 GbVDBによれば06年ツアーで演奏曲、"Piss Along You Bird", "Met Her At A Seance","Life Of A Wife"の収録予定も止め、これらは全て本盤から外された。

 なおこれら3曲はそれぞれ、全て07年中にスタジオ音源リリースに至った。
 "Piss〜"がシングル"Rud Fins"のB面。
 "Met〜"がシングル"Current Desperation (Angels Speak Of Nothing)"のB面に。
 "Life Of〜"は本盤の次のソロ・アルバム"Coast To Coast Carpet Of Love"へ収録。
 つまり前の2曲は"Coast To Coast Carpet Of Love"からシングル曲のB面となる。

 ちなみにボブは"Coast To Coast Carpet Of Love"と同時に、アルバム"Standard Gargoyle Decisions"もリリースした。
 "Silverfish Trivia"がアルバムからEPに変化の理由は、さらにボブが曲を作ったから別のアルバムで再構成、な考えに変わったのかも。

<全曲紹介>

1. Come Outside

 EP盤の厳かな幕開け。
 なぜかカセットのスイッチ入れる音から弦の室内楽が始まる。編曲はクリス・ジョージ。
 ボブとの仕事はGbVの02年EP"The Pipe Dreams Of Instant Prince Whippet"収録曲、"Dig Through My Window"でチェロ演奏が初めて、かな。その後GbVの盤で数回、かかわった。
 本盤リリース後も、幾度かクレジットにクリスの名が見られる。
  
クリスがチェロとコントラバスを多重録音し、ビオラをクリス・ジェキンスが奏でた。弦三本のわりに厚みある風なため、コントラバスは数回重ねてるかも。
 奇妙なピッチ感で、不安定さを煽る。アレンジそのものはロマン派風の堂々たるものだが。
  
2.   Circle Saw Boys Club

 穏やかなギター・ストロークに硬質なシンバルの刻みと、いくぶんカッチリなアレンジ。
 ギターはシンプルだが丁寧に多重録音され、厚みと深みを作った。だんだんテンポアップしてボブの歌にも力がこもる。
 くっきりしたミックスのため、メロディの鮮やかさも強調される。曲自体は、ちょっと間延び気味。
 ただしシンバルとドラムのパターン・アレンジがシンプルながら効果的で、緩急を上手いこと操った。
 
3.   Wickerman Smile

 前曲の余韻からエレキギターの弾き語り風に、ボブがメロディを乗せていく。
 伴奏自体はキーボードで白玉を全体にまぶし、暖かなサイケ調の雰囲気を作った。メロディ構成はあってないようなもの。ボブが奔放にイメージと旋律を開陳した。

4.   Touched To Be Sure

 ダブル・トラックで甘酸っぱいメロディの良い曲。ベースの野太さが目立つも、ドラムとギターは何故がブレーキ踏む。メロトロン風のシンセが入る辺り、ドリーミー路線を狙ったようだ。
 だがこの曲は、思い切りアップテンポで元気よく走ったほうが、良さが際立つと思う。
 なんだか消化不良で甘くコーティングされてしまった。4分と本盤でも長めの曲なあたり、ボブもトッドもじっくり作ったろうに。
 終盤でやたら賑やかに加速していく。これよ。変にドラマティックにせず、最初からこれでいけば良かった。

5.   Waves, Etc.

 一分半の小品。ストリング音色のシンセがふんだんに、アコギの主メロを飾りたてた。 インスト曲。小さくノイズ成分が混ぜられて、なんだか気になる。最後は子供とボブらしき声のコラージュで終わる。

6.   Cats Love A Parade

 8分弱と超大作の曲。コラージュの冒頭から緩めのギター・ロックへ。ドラムレスで薄いシンセで厚み出し、じわじわとドラムの刻みをフェイドインさせる。
 歯切れ良いボブの歌声が、エコー成分多く高らかに響く。ドラマティックなムードがかっこいい。

 クルクルと楽想が変わっていくが、伴奏のアレンジ構成が変わらぬため、なんともとっつきにくい。明確にブロックごとで楽器構成変えたら、プログレ風のシンフォな世界観も出せたと思う。
 実際には4分半後に少々ハードめなブレイクから、ボブの歌い方含めコワモテなブロックを挿入。改めて、低音強調の楽想に戻る。
 ボブにしてはずいぶんまだるこしい。この突拍子無さを1分間でやってのけるのが、ボブの魅力なのに。

 ライブ映えしそう。でも長いためか、GbVDBには07/12/1公演しかライブ履歴の記載が無い。

7. Speak In Many Colors

 再びの弦インストは、トッドのアレンジ。バロック寄りだが朗々と厳粛に盛り上げるあたりが特徴か。
 弦の刻みやオブリなど、丁寧で凝っている。ちょっと籠って中音域を強調したサウンドだ。本盤の他の楽曲でスコンと抜けたマスタリングなだけに、この曲のアナログ風な音像の座り心地がイマイチ。
 EP盤全部でみたら、最初と最後を弦ではさんだ統一性はあるけれど。
 

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