Guided by Voices

"Robert Pollard Is Off To Business" Robert Pollard(2008:Happy Jack Rock Records)


Producer Todd Tobias

Bass,Drums And Percussion,Guitar,Keyboards Todd Tobias
Vocals Robert Pollard

 タイトルに反し、実際は疾走への助走ステップ。10曲入りだが各曲が数分台。ひたすらキャッチーでポップなアルバムだ。全ての収録曲が08年のBoston Spaceships初のツアーで演奏された。

 4月の先行シングル"Weatherman And Skin Goddess"を踏まえ、6月に本盤が発売された。このあとボブは、新バンドBoston Spaceshipsの活動へ加速していく。

 時間軸で整理しよう。前作"Superman Was A Rocker"が08年1月。Takeovers名義のシングル"Little Green Onion Man"をはさみ(Bostonへの布石だろう)、ソロ名義で本盤の先行シングル"Weatherman And Skin Goddess"を4月に発表。
 そして本盤が6月。
 Bostonの1st"Brown Submarine"が9月。Bostonで米ツアー16公演を9-10月にかけ敢行した。
 ちなみにCircus Devils名義の"Ataxia"は10月。こっちはトバイアス兄弟が主軸でボブの負担は少なさそうだが。この年に限らないが、ボブの創作力は旺盛のままだ。

 そして09年はツアーを休み、録音に励む。発表盤は4枚組のGbV蔵出し"Suitcase 3"を含み、ソロが2枚でBostonが2枚、Circus Devilsが1枚にCosmos名義が1枚。アルバム10枚くらいか。細かい活動は除いたら。・・・改めて凄い量だ。

 さて、本盤に戻る。Boston名義で無く、なぜソロとし本盤をリリースしたか。ぼくの推測だが、Bostonでできぬ精妙なポップ・アルバムを残しておきたかったんじゃなかろうか。
 本盤の演奏は全てトッド。あくまでボブのソロとして、トッドのセンスで複雑かつ丁寧にアレンジされている。

<全曲紹介>

1.   The Original Heart 

 歯切れ良いギター二段構えのイントロに、高らかなボブの歌。GbVスタイルで無く、凝ったソロのアプローチだ。しかしどこまでもポップ。威勢よくアルバムの幕を開けた。
 
 ボブも気に入ったのか、これと(あと、(4)も)"Best Of 2008-2009"(2010)と銘打ったプロモ盤へも収録されたという(未所有、GbVDB情報)。本盤のシングル曲(6)は同プロモへ未収録なのに。

2.   The Blondes 

 サビ前の甘酸っぱいメロディのヒネリから、穏やかな優しいサビへ雪崩れる所が愛おしい曲。温かく語りかけるような包容力漂わす。この辺、ボブの年輪重ねた丸さも感じた。 

3.   1 Years Old 

 ザクッと刻むギターに訥々と軽いドラミングが挑む。分離をくっきりミックスして歌と演奏の調和度よりも、クリアさを優先した。
 メロディが進むにつれ、唐突に和音が飛んで新鮮な瑞々しさを出す。
 いかにもポップな割に、アレンジは非常に細かく重ねられバンドで出せない精密さを作った。

4.   Gratification To Concrete 

 ボブはブルージーな感覚って希薄だが、本曲みたいに粘っこい独特の節回しを持っている。ミドルやスローで顕著な、甘酸っぱさも滲ます色合いだ。
 楽器構成はいじらず、メロディの変化に合わせ細かくギターリフやドラムのパターンを変え、変化をつける欲張りなアレンジを施した。

 背後のうっすらした鍵盤がドアホンに聴こえるため、でかい音でこれ聴いてると「宅急便でも来たかな?」と、いつもちょっと狼狽えてしまう。

5.   No One But I 

 中盤はサビで暗く粘っこく盛り上がる。歌もいくぶんオケへ埋め気味にミックスされた。薄暗いライブ会場では似合うかも。影をまとったミドルテンポの曲。
 妙なポップさがメロディの端々から零れるが、全体的には暗めの色合いだ。

6.   Weatherman And Skin Goddess 

 シングル曲。アルバムの中で聴くと、ミドルテンポのポップス代表って位置づけかなと思う。
 あえてA面トップには持ってこないが、アルバム聴いててこの曲へたどり着くと何となく落ち着く。座り心地の良い、破綻の無い構成に。
 この時代のボブの作品でも有数の、良くできた曲だ。

7.   Confessions Of A Teenage Jerk-Off 

 素朴な音色のエレキによる弾き語りと思わせて、途中からギターがダビング増えていきジワジワとバンド・アンサンブルに盛り上がるドラマティックなアレンジを施した。
 メロディは一筆書きな曖昧さは無く、くっきりと紡がれる。ほんのりと柔らかく、切ない楽曲をギターバンドのアレンジに変えた。

8.   To The Path! 

 クラシカルな面持ちを漂わすエレキギターのアンサンブルは、トビンの趣味がかなり出ていそうだ。本テイクのみ聴いてたら、とてもライブ・バンドで再現できそうに無い。
 シンフォニックである種大仰なムード。本盤の後半は、今一つ歯切れ悪い。

9.   Western Centipede 

 アップテンポでポップだが(8)の重たさに引きずられ、最初はなかなかピンとこない。
 サビでのAMラジオ的にモコッと分厚い響きが気持ちいい。しかしエンディングでリフレインする終わり方は王道であるが、ボブのソロには似合わぬ大味さに聴こえてしまう。

10.  Wealth And Hell Being 

 テンポは落とし気味のミドル。メロディはきれいだが歪んだギターを前面に出し、スケール大きなロック・バンド狙ったようなアレンジだ。普通のバンドならいいが、ボブのソロでこういう分かりやすさは望んでないだけに、ちょっともどかしい。
 よほどボブかトッドはキャッチーさを本盤で狙ったようだ。

 コーダの和音から変な電子音のノイズへ行く辺りが、かろうじてボブやトッドらしい。最後にカセットが終了みたいな音で、幕を閉じる。 

GbVトップに戻る