Guided
by Voices
"Honey Locust Honky Tonk"
Robert Pollard (2013:Guided By Voices Inc.)
Producer, Engineer, Recorded By, Bass, Drums, Guitar, Keyboards - Todd
Tobias
Written-By, Vocals, Guitar, Layout - Robert Pollard
いくぶんアコースティック色が強い、曲のアイディアを並べた34分余りで17曲入りの超短編集。実験作、寄りな仕上がりだ。
前作から10ヵ月ぶりとロバート・ポラードにしては久しぶり(?)のソロ。さもありなん、この年はGuided by Voicesの再結成が始動してた。
2013年は前年に"Class Clown Spots A UFO
Tour"でGbVのツアーを終わらせ、一休み。充電と録音の年か。9月にフェスへ2回出演のみ、がGbVの13年ライブ実績だった。
一方で前ソロのあとのリリースを並べてみよう。
2012/ 9:Robert Pollard "Jack Sells The Cow" 《前ソロ》
12/11:Guided by Voices "The Bears For Lunch"
13/ 1:Guided by Voices "Down
By The Racetrack"【EP】
13/ 4:Guided by Voices "English Little League"
13/
4:The Sunflower Logic "Clouds On The Polar Landscape"【EP】
13/ 7:Robert
Pollard "Honey Locust Honky Tonk" 《本盤》
13/10:Circus Devils "When
Machines Attack"
13/10:Circus Devils "My Mind Has Seen The White Trick"
13/12:Robert Pollard "Blazing Gentlemen"
14/ 2:Guided by Voices
"Motivational Jumpsuit"
むしろなぜ、ソロを稼働させるかが謎だ。
歌と作詞のみのCircus
Devilsはまだわかる。いや、わかんないけど取り合えずわかることにしておこう。さらに新プロジェクト(17年4月現在では単発の活動だが)The
Sunflower Logicまで立ち上げる分裂っぷり。旺盛に録音しリリースする2013年だった。
本盤は全17曲入り。小品集めたアルバムだが、楽曲のアイディアはポップなものばかり。メロディをいくつかくっつけて、一曲に仕立てGbVに投入できそう。そのへんが、歌詞にこだわるボブの趣味かもしれない。
もしくはアコースティックな素朴さを狙うため、敢えてソロに曲をまとめたか。実際のサウンドづくりはギターをボブが弾いてるけれど、基本はこれまでのソロと同様にトッド・トバイアスが担当。アレンジや演奏はトバイアスが行う。したがってボブの関与度合いもGbVとは異なっている。
だからこそ、Circus Devilsと同じように別人格的な位置づけでソロ・アルバムを作れたのかな。
ソロと銘打ちつつ「ロバート・ポラード」というワンマン・ユニットの気分かもしれない。
たて続けにアイディアをばら撒き、最後に"Air"でじっくりメロウにアルバムをまとめた。この"Air"が、切なくて良い曲だ。
このアルバムからはシングル・カットは無し。GbVdbに記載の範囲ではライブで披露された様子もない。あくまで本盤のみで静かに完結するソング・ブックとなった。
<全曲紹介>
1. He Requested Things 2:39
アコギのかき鳴らしとオルガンで甘酸っぱい雰囲気のミドル・テンポ、なはずが。途中で重たいギター・リフを取り混ぜ多層構造を作った。ドラムは一部だけに足され、アップテンポで盛り上がりそうなところも、ストローク中心に甘く整えられた。
一気に疾走せず、二重構造を持ったまま曲は進む。音をみっしりと充満させて。
2. Circus Green Machine 1:24
ダブル・トラックのボーカルにアコギのストローク、そしてバンドのブレイク。柔らかい雰囲気と、重厚なシーンを対比しながら展開は前曲に似ている。こういう凝ったスタジオ的なアレンジゆえに、本盤の収録曲はライブ演奏しなかったのかも。
メロディ・ラインは一筆書きメロディなボブ節だ。
3. Strange And Pretty Day 2:12
ひしゃげたピアノのコード弾きをイントロに、解決しない旋律が繰り返される。
歪んだ音色のローファイさが曲に鈍い影を付与した。サビへ行かず淡々とAメロだけが時間をなぞる。
むしろ一分足らずで完結しそうな構成だが、敢えて2分もの尺を取ってじっくり聴かせることそのものが実験的。メロディは耳ざわり良いけれど。
4.
Suit Minus The Middle 0:51
フェイド・インでのロックンロール。ここまで煮え切れなかった勢いをドラムが勇ましく吹き飛ばす。高音で跳ねる歌声も痛快で、ひとしきり歌ったあとにベースが荒々しく空気をかき回すバンド風味もばっちり。
弾けそうな予感だけ見せて、するっとしぼみ次の曲へ行ってしまう。
5. Drawing A Picture 1:44
拍頭をスカッと抜けた鍵盤風の音色が叩き、裏拍からエレキギターが支えるビート構成の曲。がっちりアレンジされ、ダブル・トラックのボーカルも馴染むミドル・テンポの曲。ある意味オーソドックス、ボブ節の滑らかなメロディもハマってはいるのだが。このアルバム構成で聴くと、少しヘンテコに聴こえてしまうのが面白い。
この曲だけ抜き出したら、しごくポップに聴こえるはず。
6. Who Buries The Undertaker? 2:26
緩やかに引きずるギターのストロークを、リズムがしっかり支えた。穏やかに伸びあがるメロディが優しく柔らかい。ともすれば激しいビートになりそうなギター・ストロークが曲全体を覆うけれど、歌声の柔らかさがこの曲へ余裕と甘酸っぱさを付与した。
歌の合間に溜めては流れるギターのアレンジが良い。弾き続けに見せかけて、くっきりとメリハリを付けて歌を映えさせた。
シンプルなメロディを幾度も繰り返し、淡々とふくよかなふくらみを与えたロック。
7. She Hides In Black 2:43
くっきりした2ビートが印象的。こういう曲こそ、ボブとトッド、どちらのアレンジかを知りたい。軽快なリズムと対照的にボーカルはゆったりと動く。ギターのかき鳴らしと歌の譜割が微妙にずれて、メロディとリズムが追いかけ合うような浮き立つ雰囲気を作った。
歯切れ良いポップな旋律が映える良い曲。
8. Her Eyes Play Tricks On The Camera 2:33
どたどたしたリズムから場末の歌謡曲みたいなオルガン。ボブにしては珍しい音色を使いのアレンジだ。ぐうっと伸ばして畳むメロディが、波打つように繰り返される。
ただ口ずさむとかなりポップで親しみやすいメロディだ。それをわかりやすく展開せず、Aメロとサビの交代、みたいな構成に仕立てた。もしかしたらハーモニーをダビングすることでふくらみ出たかも。ここでは淡々とボブが歌い続ける。
しかしドラマティックな曲だ。コード変更もときどき、ゾクッとする鮮やかさで魅せた。その風景が変わるにつれて、微妙に節回しを変えるボブのボーカル・スタイルもさりげなく凝っている。
9. Find A Word 1:27
一筆書きメロディで立ち止まらず、どんどんと旋律が溢れては展開していく。コンボ編成のシンプルなアレンジだが、メロディを後押しするような白玉が効果的。ベースとドラムがわずかにフィルを決めながら階段状にうねり、ギターが緩やかなフレーズで歌を飾る。
これもメロウな甘酸っぱさがジワッと滲む美味しさあり。
10. I Have To Drink 0:44
一分足らずの小品。エコー成分を排除して、ザクザクと荒っぽく刻んで歌が吐き出される。
けれどこれも一筆書きメロディで、ひと時も立ち止まらずドラマティックに楽曲が展開して心地よい。
11. Flash Gordon Style
2:09
単音のギター・リフを軸に演奏が始まる。ベースが動いて和音感を出すが、延々とギターは同じ音を弾き続けた。
威勢のいいロックンロールであり、ベースのおかげで単調さはない。むしろメロディアスなだけに、変わらぬギターの単音リフが印象に残る。和音進行を詳しい人に分析して欲しい。
歌声にどっぷりエコーをかけたのは、サイケ色も出す演出か。
12. Igloo Hearts 1:39
パルスのような同じ譜割のギター・リフに沿って、切なげに楽曲は進む。ボーカルのみ譜割を変えて曲に幅広さを出した。うっすら切なさが漂う。ときどき演奏がつんのめるように聴こえるのは、曲のリズムがブレているためか。あくまで、演出として。
歌は一筆書きのメロディで、着地点を示さぬまま浮かびつつ消えていった。
13. Shielding Whatever Needs You 1:13
アコギの弾き語りにシンプルなエレキギターのストロークが、オブリを付与した。メロディ構造は変わらず音程をずらして曲が展開する。なにげなく幅広いボブの声域あってこその曲。
これも一筆書きの作品で、しっとり曲へ浸ってるとそのまま終わってしまう。
14. I Killed A Man Who Looks Like
You 1:53
甘酸っぱいボブ節が楽しめる曲。低いメロディから語り掛けるようにしみじみと歌う。言葉遊びの難解な歌詞ながら、タイトルのみドキッとさせる意味を持たせた。
切ないムードで幾度かサビのフレーズが出て、終わる。大サビの無い一筆書き気味ながら、ボブの独特な構成力が曲の完成度に説得力を持たせた。
15.
Real Fun Is No One's Monopoly 2:26
妙にフレーズの最後が印象に残る重たいリズムの曲。ワン・アイディアを多彩に聴かせるのは、ボブの和音感覚であり、シンセも含めた重厚なアレンジを施したトバイアスの手法でもある。
同じフレーズの連呼ながら、終盤でわさわさっと群衆のシュプレヒコール風のハーモニーを付与して、かなりスケール大きく仕立てた。楽曲そのものはシンプルな構造なのに。
16. It Disappears In The Least Likely Hands (We May Never Not Know) 2:31
ワン・アイディアのシンプルな曲を連発しながら、アルバム終盤に向けて構成度が上がる作品につなげていく。これもタイトル連呼系の曲。シンセの白玉で曲へ雄大さを持たせた。
同じフレーズの音程や歌い方を変え、ディレイで工夫して単調さを省く。これまたアレンジ力と歌唱力の勝利。次第に高まってく音域で盛り上がらせた。
17. Airs 3:36
最後はフォーク・ロック風の名曲。3分以上とたっぷり(?)尺を取り、切なく甘く仕立てた。とはいえ歌声は低音から高音域にいきなり飛ぶ派手さで、いがいとややこしいメロディだ。
ギターを数本ダビングして厚みとふくよかさを作った。このアルバムを代表する良い曲。サビでほとんどメロディが変わらないのに、リズムをすっと消してメリハリを出すアレンジが渋い。
これも途中でシンバルの打点がつんのめった。拍が途中で奇数になってる。 (2017/6:記)