Guided by Voices

Callong Zero/Go Back Snowball/(2002:Luna)

Producer: Robert Pollard&Mac McCaughan

Robert Pollard - vo
Mac McCaughan - instrumentation

 まず、ガツンとした味わい。聞き込むほどに味が染み出てくる。
 一回限りで終わらせるなんてもったいない。素晴らしいアルバムだ。

 2002年にひょこっとリリースされた本作は、マック・マッコーガン(from Superchunk)とのコラボ作。
 いちおう"Go Back Snowball" なるユニット名はついてるが、はたして二作目はあるのやら。

 録音形式は、ボブお得意のスタンス。演奏を相棒に全部任せて、自分は歌詞やボーカルをつとめる。
 ダグ・ギラードとのコラボ作"Speak kindly of your volunteer fire department"や、トビン・スプラウトとのユニット「Airport5」なんかと同じ手法だ。

 この手の作品を聴くたびに謎なのが、「メロディは一体どっちがつくったのか」ってこと。
 本作はクレジットから見てマック・マッコーガンの作曲みたいだが。

 でも、メロディメーカーのボブは音楽の主導権を相手に譲って、ストレス堪らないのかな。歌詞だけ発表できればいいんだろか。

 メロディは力任せに押すものと、GbVっぽい滑らかなフックを持ったものの半々くらい。やっぱりメロディ中心に聴いちゃう。

 特筆すべきは音圧。音数少ない録音にもかかわらず、ぐいぐい攻め立ててくる。
 夜中に聴いてる時に近所迷惑かなってボリュームを絞っても、かなり音に迫力があるもの。

 バック・トラックはノース・キャロライナにて。ボーカルはもちろんボブのお膝元、オハイオはデイトンで録音された。(エンジニアはおなじみJohn Shough)

 最初に聴いた時は「そっけないなぁ」と思ったけど、大きな間違いだ。
 二人の才能ががっちり手を組んだ、充実した作品です。

(各曲紹介)

1.Radiacl girl

 ノイズっぽいギターのうめきをイントロに、オルガンが滑り込み演奏が始まる。
 以降も含め、全て生演奏のバンド・サウンド。
 管の響きが不安定だけど、これはシンセかな。
 マックの演奏はうまいとはいえないが、不思議に安定感あり。

 さて、ボーカルは多重録音で演奏の厚みに応えた。
 これはどこまでボブのアイディアなんだろ。
 せめて、ボーカル・アレンジくらいはやってて欲しい。なんも考えず歌うだけのアイドル歌手じゃないんだし。

 ハモったり、掛け合いをしてみたり。
 「コーラス」的な多重録音ではなく、多彩さを出すために歌を積み重ねた。
 ハーモニーを取る時の和音感が奇妙で面白い。

2.Calling zero

 この曲のキモは、サビでの寂莫感。
 きれいに粒が揃ったギターに乗って、甘いメロディを奏でていく。
 ほんのりリバーブをかぶせ、なんともロマンティックな雰囲気が堪らない。

 あえてドラムを抜いて、数本のギターとオルガンで追い込んだアレンジが聴きもの。
 タイトル・トラックにふさわしい曲だ。

 すげえ細かいことだけど。「Zero」じゃなくてたとえば「hero」みたいな歌詞にしたら、もっと響きがきれいになったのでは。
 「z」の濁る破裂音が気になった。それとも、わざとこの音にして異物っぽさを取り入れたのかな。

3.Never forget where you get them

 テンポこそゆったりだが、ザクっとしたギターが煽る。
 ロバートはハイトーンのボーカルで、きちんと応えた。
 全般的にいまいち単調かな。

 中盤で鳴るオルガンが、あまりに音が小さくって。
 聴くたびに「あれ?外でパトカーが走ってるのかな」と、窓の外をつい見ちゃうのはぼくだけ?

4.Red hot halos

 いかにもボブらしいメロディライン。サビでぐっとテンポを落とし、じわりと睨みつける。

 ピアノとアコギ、そしてサビではシンセが加わるのみ。
 マックはアレンジ・センスがいいなぁ。
 粗雑なギター・ポップで押すだけでなく、こういう引き算の美学をきっちり持っている。

5.Again the Waterloo

 上下をぶった切り、歌声はひしゃげた音に変形された。
 バックトラックにあわせたのかな。おそらくほぼ打ち込みなオケは、かなり荒っぽい音に統一。
 リズムボックスはもはや、ぶくりと弾ける泡みたいだ。

 メロディラインはGbV風とはちょっとちがうが、疾走感を備えたポップなもの。
 中盤で終ると思わせて、再び舞い上がる構成が心地よい。 

6.Climb

 前曲から一転、するどいギターのフレーズがイントロだ。
 スローなリズムのきれいなメロディが印象に残る。これはボブっぽい旋律づくり。

 繰り返しがほとんどなく、2分くらいであっさり終っちゃうとこもGbVっぽい。この手の曲は、じっくり聴きたいなぁ。
 ピアノとエレキギターがユニゾンを基調に、するするメロディを誘導する。
 妙に古めかしい空気を感じた。 

7.Go gold

 美しいメロディの曲が続く。このメロディもGbVっぽい。ボブはメロディ作りにまったく参加してないのかな?

 たっぷりイントロでじらされる。しつこくギターのストロークが続き、おもむろにメロディが出てきてほっとした。
 「Go! gold」とシャウトするときの、軽やかさが気持ちいい。

 いっぱいギターが重ねられている。
 ひたすらコードを刻むギターに、オブリのギター。エンディングは、これまた音色を崩したギターだ。
 さらにキーボードをさりげなく足して、音に厚みを加えた。

 ドラム・ベース抜きで重心を軽くし、ギターの低音とストロークでリズム面の補強もしっかり。練り上げた好アレンジだ。
 歌もばっちり、演奏はがっちり。文句無しのいい曲だ。

8.Lifetime for the Mavericks

 げしょげしょに歪んだギターのリフが、まず煽る。
 そして滑り込み、舞い上がるボーカル。すばらしくキャッチーだ。
 
 ギターが鈍くわめくのにかまわず、ボーカルは視線をくうっと高く見据える。
 その歌声を支えるのが、爽やかに切り込むアコースティック・ギターのストローク。 
 ノイジーなギターとの対比が面白い。
 
 サビらしき部分はほとんどなく、一通り歌うとさっと去ってしまう。
 やりっぱなしなとこが、いかにもロバートっぽい。

9.Throat of throats

 リズムボックスが安っぽく鳴る、宅録風の曲。
 ボーカルがまともな音でダビングされてるので、ちょいと違和感あり。
 旋律はいまひとつ魅力に欠ける。
 思いついたメロディを適当に歌ってるっぽい。

 だけど、サビは違うぞ。
 エコーを軽く効かせて、音世界を広げていく。
 抑え気味なのが悔しい。ががーっとシャウトして欲しかった。

10.Ironrose worm

 4/4拍子だけど、3/8+3/8+2/8みたいに裏を強調。
 アクセントをあちこちにつけたオルガンだけの伴奏で、奇妙な雰囲気を作り出した。
 浮遊感が心地よい。
 
 このキーボード、手弾きだよな・・・。どこか揺れるリズムが、独特のノリを生む。
 こういうキーボード主体なアレンジは、ロバートがまず使わないから新鮮だぞ。

11.It is devine

 シンプルだが、よく練られたバンド・サウンドがまず好印象。
 ロバートも演奏にがっぷり組み付き、爽やかに歌い上げてくれた。
 メロディは甘く、演奏も素晴らしい。

 派手さはないけど、大好きな一曲。こういう懐深い演奏って、ロバートだけだとまずやらないだろな。

 唯一注文をつけるとしたら、メロディ構成。どこかに大サビを入れて欲しかった。

12.Dumbluck systems stormfront

 さて。充実したアルバムのラストをシメるのは鈍く光るサイケな曲。
 ずしんとギターがリズムを刻み、それ以外の演奏はかすかに聞こえるだけ。
 リズムは硬質にカタカタ鳴る。テーブルを叩いてるみたいな音だ。
 だけどよーく聴くと、実に細かく演奏を重ねてるのがわかる。

 サビになって、オブリで高らかに鳴るトランペットの音色がかっこいい。
 おごそかな響きに包まれる。
 エンディングにふさわしい名曲。メロディを群唱するアレンジも素晴らしい。 

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