Guided
by Voices
"Bigger Trouble" Hazzard Hotrods (2005/Fading
Captain Series)
Vocals :Robert Pollard
Guitar :Tobin
Sprout
Bass Guitar :Mitch Mitchell
Drums and Percussion :Larry
Keller
本盤はきっぱり、マニア向け。本盤を分析でボブの作曲の秘密がわかる・・・とは言いづらい。セッションで遊んでる様子をまとめた盤を超えはしない。10秒で終わる(15)みたいなお遊びもあり。
だけども(1)や(7)みたく埋もれさすには惜しい、スケッチもあり。(13)や(14)にも、曲への予兆を感じた。
実質的にアルバム1枚で終わったバンド。盟友トビン・スプラウトと組んだ華やかなイメージだが、実際はラフなセッションで終わった。そこがトビンとボブが組んだユニットAirport
5と違う。
メンバーのミッチ・ミッチェルはGbVの仲間うち。おかしいな、この3人そろって、こんなラフなアルバムで終わるとは。期待外れ。
犯人はこいつ、ドラムのLarry Keller。94年にGbVのメンバーだった。EP"Get Out Of My
Stations"(1994)にクレジットあり。Hazzard Hotrodsはラリーとボブのユニットらしい。
元は2000年にアナログLP
500枚限定で本盤は発表。当時のタイトルは"Big
Trouble"。
05年にボートラ7曲を付けて千枚限定でCD化された。タイトルが微妙に変わってるのがご愛嬌。ラリー・ケラーが働いてるビデオのアウトレット屋でライブ録音された。いわば仲間内の遊びみたいなシロモノ。曲のタイトルはその場にあったビデオの名前をもじったりしてるそう。曲は即興的にその場で作られたらしい。才能の無駄遣いだ。
本人らは気軽な遊びのセッションを、ちょっと販売してみるべって程度かもしれない。 録音もかなりラフで、ボーカルは割れ気味。ハウる音もそのままで気持ち悪いリバーブが中央にある。贅沢は言うまい、ボブらが音楽で遊ぶ様子が追体験できるのだから。
録音時期が不明だが、おそらく一日。長くともせいぜい数日で録音だろう。ラフながら歌詞付きの曲を17曲も並べた勢いが驚異的だ。ブルーズのインスト・ジャムセッションとかでなく、一応曲になってる。
製作過程の性質上、本盤で使い捨て。その後にライブ演奏などされた様子は無い。
<各曲紹介>
1. A Farewell To Arms
上述の経緯より、あまり細かく聴きこまないシロモノかも。重たいエイトビートのバックは凝らずにシンプルな進行。ベースが微妙にメロディアスで楽しい。
歌は"捻って上げる"、のテーマを元にグイグイと変化していく。一筆書きそのままに。ギター・ソロもきれいな旋律だ。一曲目から何だが、この曲は磨けば魅力増すと思う。
2. The Lawless 90's
しゃくしゃくすくい上げるギターリフの曲。歌声がオフ気味だがメロディの断片はきっちり掴んでる感触だ。この曲、ギターが二本いるように聴こえる。ボブがリズム・ギター弾いてるの?ダビングには思えないが。
歌は場面ごとに思いつきを適当に叫んでるようだが、ところどころ、すごくポップだ。
3. 39 Steps
ベースの緩やかなリフに、ドラムがモタりぎみに絡む。ギターは一瞬弾いては止まり、また入り。作曲の過程そのものをメモったかのよう。ボブはいくつかの断片を叫ぶ。
ひとつ決まった瞬間、一気にバンドが一体に走った。この場面がかっこいい。するとやはり、いったんリハして改めて録った曲だろうか。冒頭の平歌が、あまりにもラフだけど。
4. Tit For Tat
演奏途中を切り取った趣き。ベースとドラムのシンプルなリフに、語りともつかない歌をボブが叩き込む。同じフレーズを繰り返し、展開をつかむかのよう。そんなスタイルがヴァン・モリスンみたいだ。音楽性は全然違うが。
曲が進むにつれ何となく構成ができて、行きつ戻りつ曲が進む。形にならないまま、時間切れ。ただしアウトロのディストーション効いたギター・ソロの疾走感は良い。
5. Sabotage
重たいベースのイントロ。ここまでけっこう、ミッチのベースが曲を支えてる。
ボブは吐き出すようなシャウトを続ける。さほど音程は上下に動かず、短い幅でメロディを組み立てるかのよう。少しだけブルージーな印象だ。
6. Big Trouble
アルバム・タイトル曲。軽快なロカビリーっぽいビートで、ボブがまくしたてた。オフ気味でベースの骨太な低音が目立つ。トビンはコード弾きくらいか。ソロのとたん、急に存在感出した。
50年代のR&Bをラフにカバーした、と言っても通じそう。きっちり形式にのっとったセッションのため、一応形になってる。
中盤でボブはいったんバンドを止め、ブレイク入れて再開させた。ガラガラに盛り上がってるロックンロールだ。
7. Runaway
ギターのイントロだが、妙に残響が激しくモコモコのサイケだ。いきなりボブ節でキッチリした曲が出てきて驚く。ハウってるギターが邪魔だ。もっと歌を聴かせろ。
中盤からバンド仕立て。軽やかなタムのおかずに間髪入れず、ボブが歌を再開する。シンプルだが甘いメロディが良い曲。
サビで音程上げて高らかに吼える。これもきちんと曲にまとめて欲しい。
8. Get Dirty
途中からいきなり始まる。この曲も50年代R&B系統のノリだ。4つ打ちビートが軽快になる。かき鳴らしのギターソロも曲のカラーにあってる。ディストーション効かさず素直な響き。
ボーカルはまくしたてが中心で、メロディより勢い重視だ。4分弱のセッションだが、ジャムが続く印象で退屈なとこも。
9. Clue
ギターのゆったりしたストロークにベースとドラムが静かにリズムを載せた。歌は適当にシャウトしてる感じだ。メロディアスではないが、ボブ流の一筆書きな面持ちが伺えて興味深い。
これも4分越え。展開無く続くため、ちょっと長さが辛い。最後のほうで曲になりそうな掛け合いも生まれるが、そのまま終わってしまう。
10. Solid Gold
いきなりボブの甘いメロディが出てきた。ギターの爪弾きはボブ自身だろうか。フレーズの終わりで腰砕けにピッチ落ちるとこもあるけれど、もやもやと旋律を弄りながらきちんとした曲に向かう。
途中で奇声上げたり、ロングトーンで声を伸ばしたり、違う展開を模索する場面もあり。意外とこの曲は、ボブの作曲過程をメモした雰囲気かも。LPを締めるには良い雰囲気だ。あっけないが。
11. Walk In The Sun
本曲からがCD化でのボートラ。LP化にあたり曲を取捨選択してたんだな。
力任せに叫ぶロックなセッション。一応曲のていをなしてるが、アレンジを定型に嵌めて手なりにメロディをシャウトした感じ。いかにもジャムっぽいテイクだ。
12. The Man Who Knew Too Much
エレキギターのゆったりな弾き語りっぽいが、途中で弾きやめるあたりトビンが場面に合わせギターを弾き分けてるのかも。
時々、きちんと曲っぽい空気を漂わすから侮れない。もっともここでは探るようなギターリフで始まり、おもむろにメロディが現れる。
ボブ節で上下する旋律は、スケッチの域を出ないけど。くいっとメロディの途中で瑞々しく目立つ音符が現れる。さすがの作曲センスだ。
ギターソロに向かったところでフェイドアウトしてしまう。
13. A Star Is Born
LP盤でボツらせたのが不思議なテイク。
シンプルだがくきくき上下するメロディはいきなり曲になっている。コードが変化し高らかに上昇するところもキャッチーだ。地味ながら丁寧に磨いたら、曲に仕上がりそう。
とはいえ多少テンポアップしてほしい。ミドルテンポだと退屈さが前面に出てしまう。
ここでも途中にギターソロ。ひとしきりボブが歌った後に、トビンがソロってテンプレなのか。
14. Tell Me Why
本盤最長、6分に渡るテイク。作曲のスケッチで聴き応えあり。LPの時に入れても良かったのでは。
冒頭から曲っぽい甘酸っぱいボブ節が登場。どんどんとメロディを展開させた。ハーモニーも加わり、どんどんまとまってくる。最後はノーリズムで仕上げを模索した。
途中で多少ダレるが、リズムをキープしつつ曲へと向かうベクトルは感じた。テンプレ通り、トビンのギターソロもあり。曲によってエフェクタを踏みかえ、音色に気を配ってるのが伝わる。
15. Rat Infested Motels Of Dayton
本盤で最短、10秒で終わる。適当にボブが呟きながらギターがかき鳴らすだけ。
テープ・ノイズも途中であり。まさにお遊びで収録と思われる。
16. Really Gonna Love Me Now
冒頭にブツッと切れるのはテープをいったん止めて再開ってことか。裏拍をスネアが強打するエイトビートの上でボブが叫ぶ。メロディをつかもうとして、つかみきれない。
リフはサクサクと軽快で、ベースもばっちり絡む。演奏がまとまってボーカル模索って感じ。
17. We Want Miles (Of Land)
イントロのノービートからカウントでエイトビートの刻みへ。シンバル派手に鳴らすドラミングを踏まえベースとギターが一定のノリを作った。適当な一筆書きだが、なんとなくGbVっぽくなってる。EPの埋め草トラック的に収録されてもおかしくない。
タイトルのWe
Want
Milesをハモり始め、サビにしようって狙ってるかのよう。
本トラック自身は4分越えで冗長ながら、前半部分とサビをまとめたらGbVのやっつけな曲にはなるだろう。