Guided by Voices

Speak Kindly of Your Volunteer Fire Department
/Robert Pollard with Doug Gillard(1999:Luna)

Robert Pollard - Vocals
Doug Gillard - Instruments

 当時GbVの片腕になっていた、コブラ・ヴェルデのダグ・ギラードがロバート・ポラードとがっぷり組んだアルバム。
 ロバートのソロ・プロジェクト「イン・ザ・フェイディング・キャプテン・シリーズ」の一環として作られた。

 作曲はほぼ全てロバートによる。一部で、ダグが共作としてクレジット。
 そして全ての楽器はダグ、ヴォーカルをロバートと、変則的なコラボレーションで作られた作品だ。
 ダグは自分の4チャン・レコーダーで、お手軽に録音している。

 録音年代は不明。「DO THE COLLAPSE」録音前に、遊びで作ったデモテープが元なんじゃなかろうか(根拠は何もないです)
 でも、つい空想してしまう。
 このアルバムはダグらがGbVに加入前、ロバートがダグの実力試しに作らせてみた音源なら面白いのになあって。

 アルバム自体は「DO THE COLLAPSE 」以降をイメージさせる。
 ジャケットには、GbVのライブ写真を何枚か使用。
 バック・ジャケなどには、そろいの「ティーンエイジ・FBI」Tシャツを着ているスタッフのスナップもある。

 ダグのアレンジは、凝っているのに変な癖がない。
 ギタリストらしくギター主体の編曲だけど、バラエティに富んでいる。
 
 多重録音にありがちな、ノリがへんに個性的になることもない。
 変な言い方だけど、見事なバンド・サウンドを作り上げているのがすごい。
 ダグの演奏が確かなおかげで、かなりこの盤の価値が向上している。

<曲目紹介>

1)Frequent Weaver Who Burns


 歯切れのいいメロディで、勇ましく始まる。
 切ない雰囲気をそこここで味わせながら、ロバートの喉は高く舞い上がっていく。

 エンディングで、ドラムの音がだんだんシュワシュワしてくるところが大好き。
 はっぴいえんど「抱きしめたい」の中間部を思いだすなぁ。
 ダグがあの曲を、聴いたことあるわけないけど。

2)Soul Train College Policeman

 じりじりと歩みを進めていくロバート。
 バックの演奏も、派手なオブリはいれず、淡々と刻んでいく。
 歌声が慎重にメロディをなぞっていき、サビで一声だけ、タイトルを歌い上げる。
 その瞬間のフレーズがやさしくて、いとおしい。

3)Pop Zeus

 ダグとロバートの共作曲。
 タイトなビートの、せわしないロックンロールが始まる。
 メロディはキュートで、演奏はくねくね上下するギターリフを軸にして、着実にプレイする。

 だけど、この曲の一番の聴き所は後半部分。
 ロバートが2度目に「Electoric newspaper boy〜!」と歌い上げる瞬間だ。
 まさにこのとき、ロバートの高音が魅力たっぷりに響く。

4)Slick as Snails

 やわらかなアルペジオに導かれたミドルテンポの曲。
 エコーをがぱっと聴かせて喉を響かせる瞬間は、サイケでいかす。
 派手に耳を引くサビはないけど、メロディの一つ一つの部分が、めちゃくちゃなめらかですばらしい。

 ギターソロが飛び出す瞬間は、逆にダグの大手柄。
 いさぎよく空間を切り裂いて、自己主張するギターソロが最高だ。
 このギターソロは、もっと長く聴きたかったな。
 なんだかんだ言って、この曲はかなり好き。

5)Do Something Real

 ありふれたギターリフなのに、メロディが始まったとたん、今までに聴いたことがない響きに早変わりする。
 ロバートの作曲がすごいせいかな。
 構成はそれほど凝ってはいないけど。メロディの語尾で上下する、個性的なかっこいいモチーフだけで、この曲の価値は充分にある。

6)Port Authority

 この曲もダグとロバートの共作。
 ハムノイズをかすかに残してしまい、宅録風の安っぽさを前面に出したミックスにしている。
 ふくよかなシンセの音をアクセントにして、アコギをバックに淡々と歌う。
 
 中盤のブレイクから、曲の表情はがらりとかわる。
 前半=ロバート、後半=ダグって感じの作曲分担なのかもしれない。
 後半はバンドがユニゾンで、ブレイクしながらリフを決めていく。
 ヴォーカルは特に歌わない、プログレ風の構成だ。
 GbVにしては珍しいアレンジだなあ。

7)Soft Smoke

 アコギギター一本で歌う曲。アレンジが面白い。
 基本はコードが変わるたびに、和音を一発ストロークするだけ。
 あとはメロディが歌うのに任せる。
 たまにリズムを刻んでも、完全にメロディとユニゾン。
 最初から最後まで、きっちりヴォーカルの裏方として、必要最小限の仕事しかしない。

 メロディはあっという間に終わっちゃうけど、きれいなメロディだと思う。
 GbVでもおなじみの、盛り上がったと思ったら終わってしまう、作曲しっぱなしでほおりだすロバートらしい曲。

8)Same Things

 ヴォーカル部分に、深いエコーを徹底的に効かせた曲。
 メロディはサビで、いきなり盛り上がりをみせて、すぐさま終わる。
 そしていきなり次の拍で、唐突にノーエコーのギターによるアルペジオへ。
 有無を言わさず流れをかえる、力任せなアレンジがおもしろい。
 カントリー風のギターが、いいアレンジのアクセントになっている。

9)And I Don`t(So New I Do)

 アコギのコード・ストロークをワンポイントにして、バックに厚みを持たせている。
 きれいなメロディなのに、所々でほんのり喉を引っ掛けてみせて、するっと聞き流せない。
 中間部でさりげなく挿入されるコーラスとギターソロの対比が気持ちいいな。
 心落ち着く、素敵なミドルテンポのポップス。

10)Tight Globes

 一筋縄ではいかない構成の曲だ。
 じりじり単音リフでじらしたあとに、アップテンポなロックンロール。
 ビートに乗ったかと思いきや、すぐさまのんびりしたメロディで、聴き手を落ち着かせてしまう。

 そしてさりげなく助走して、そのまま高みへ舞い上がる。
 この曲のメロディも素晴らしい。サビのメロディが爽快だ。
 エンディングに延々と流れる、ジェットマシーンのようなギターソロが、サイケでいかしてる。

11)I Get Rid of You

 もこもこした雰囲気の重たい曲。ここでペース・チェンジをするつもりかな。
 ベースでリズムを引きずって、ムードを沈鬱にするけど・・・二人のハーモニーで歌われるメロディが魅力的なので、聴いててどっぷり暗くなれやしない。
 ミドルとスローテンポの合間で、ふらふら漂ってみせる。

12)Life is Beautiful

 この曲では、ヒスノイズが妙に目立つ。
 ヴォーカルも荒っぽく録音され、デモテープ風だ。イントロには鳥の声や、街中のノイズ。
 曲が始まると、バックはアコギ二本。生々しい歌声がパワーに溢れている。

 だけど、この曲の価値はエンディング。
 多重録音された四声くらいのハーモニーが、とてつもなく美しい。
 ごしゃごしゃした録音とおごそかなコーラスとの、ミスマッチを狙ったセンスがにくいぞ。

13)Messiahs

 とぼけた雰囲気のロックンロールだ。
 エレキ・シタールのような音色が、全面でふにゃっと鳴っている。
 メロディは一発勝負。アイディアが溢れるままに一節歌って見せ、脈絡なく消えていく。
 ロバートのお家芸、作曲一筆書きの本領を発揮したような歌だ。

14)Larger Massachusetts

 エコーを聴かせたヴォーカルが、背筋をぴんと伸ばして歌う。
 サポートに、エレキギター2本がそっと寄り添った。
 アンプのハムノイズみたいな音が、やさしく音像を汚す。

 静かに、静かに、メロディが流れていく。
 緊張感を漂わせて、歌い上げる瞬間がすがすがしい。
 メロディの美しさをくっきり浮き彫りにした、名曲だ。

15)And My Unit Moves

 アルバム最後の曲は、デモテープ風にへしゃげた音質の曲。
 ピアノの弾き語り風に、しっとりときめた。
 どこか投げやりな雰囲気で、曲は進む。

 歌声は切れ目なくメロディを紡ぎ、静かに力強く喉を震わせる。
 エンディングで、パシャンッとタンバリンを一叩き。
 余韻を残すラストで、このアルバムが終わる。

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