Guided by Voices

Fig.4/Fig.4(1998:Luna)

John Peterson - drums,
Tobin Sprout - Vocals,Guitar,
Dan Toohey - Bass,

Robert Pollard - background vocals on 2,3,5,6 and 9

 GbVがデビューした1986年(デビューEPをリリースした年)にトビンが組んでいたバンドの録音を集めたアルバム。
 基本的にはトリオ編成で、こののちも音楽的交流をする仲間内で組んだバンド。
 作曲は基本的にすべてバンドメンバーが合作している。
 ロバートはコーラスで数曲に参加。

 のちのみずみずしいメロディやアレンジは控えめで、勢いまかせの乱暴な歌が多い。
 オリジナルLPは10曲入り。300枚限定で、AF4レーベルからリリースされた。
 どの曲も8トラックの機材でざくっとレコーディングされている。

 もっともCD化の際に丁寧にリマスターされているのか、かなり音の粒はそろったパワフルなサウンドになっている。

 深みには欠けるが、若い頃のパワーに溢れたロックンロールがつまったアルバム。

<曲目紹介>

1)Way Way Gone

 この曲と(7)以外は、トビンの単独作曲とクレジットされている。 
 冒頭から切れのいいギターリフのイントロで、いかしたロックンロールで期待させるけど・・・サビになった途端に今ひとつ覇気がなくなるのが残念。

 もっとも、バックコーラスのセンスが気持ちいい、そこそこいかしたナンバーだ。このバックコーラスは多重録音かなぁ。ぴったりとハモっているところが気持ちいいぞ。

2)Train Brain

 ジョンのタイトなドラムは聴いていて、うきうきしてくる。
 なのにメロディが妙にぼやけてしまってる・・・。
 サビでキャッチoてくるけどね。まだまだ、トビンの作曲力はこんなもんじゃないと思うけどなあ。
 繰り返しが多いわりにアレンジが単調なので、途中で飽きてきてしまう。

3)A Hard Place

 単純なリフ一本で押し切るのでなく、ギターとベースが絶妙に絡み合って、多層的なノリを産み出している。
 ドラムもリズムキープにさせつつ、微妙にリフに絡ませている。

 エフェクトでヴォーカルに味付けをして、一筋縄では行かないサイケ風味のロックンロール。
 凝ったアレンジとはいえ、今ひとつメロディに魅力がないのがつらい。
 アレンジだけでここまで聴かせるんだから、あと一歩歌声にパワーが欲しかった。

4)Strangler
 
 パンキッシュなスピード感溢れる小品。
 二分そこそこの短い時間を、インストで突っ走る。fig4流サーフィン&ホット・ロッドかな。
 単音メロディでなく、ところどころにコード弾きを取り混ぜて、飽きないようにしている。
 タイトなリズムに引っ張られる楽しい曲だ。

5)At Bay

 長い譜割りのメロディを、ロバートとハモりながら歌っていく。
 しかしメロディのピントがボケている。
 ハーモニーをもっと前面に出して、コーラスが産み出す心地よさを、とことんアピールしたら魅力的な曲になったのでは。
 だとするとミックスが悪い、とも言えるなあ。

6)Fishin`

 む〜。物足りない・・・。メロディも演奏もアレンジも、すべてが中途半端に聴こえてしまう。バンド・サウンドって、こういう演奏とは言えないだろうに。
 厳しい感想だけど、僕の趣味が合わないだけかもしれないから、多くは語るまい。

7)She Loves Her Gone

 (1)と並んで本盤では貴重な、トビンの単独作曲になる曲だ。
 いきなり甘い旋律がこぼれ出す。弾むメロディが素敵なポップスだ。
 でも演奏がなぁ・・・歌声がなぁ・・・ミックスがなぁ・・・。
 覇気がない・・・なげやりっぽい声だ・・・ヴォーカルが埋もれてる・・・。
 名曲になりそうなのに、注意不足で並みの曲になってしまった悪い例、とあえて言いたい。旋律が魅力的なだけに、実に惜しい。

8)Score

 再びインスト物。にぎやかにはじけるさまがパワフルだ。
 単純に主旋律をギターがなぞるのではなく、バンドが一体になって曲を盛り上げている。
 メロディがわかりにくくなる瞬間があるのがマイナスポイント。
 とはいえ、このテンションの高さは評価します。単純に楽しいもん。

9)Naola

 60年代のビートグループを思い出す、群唱とアレンジだ。
 甘酸っぱい雰囲気がかもし出される。
 ハーモニーのそこかしこを、ロバートが縁の下でえいやって支えている。

 勢いよく駆け抜けていって、あっという間に終わってしまう。
 この曲が録音された1986年にふさわしい構成とはいえないだろう。
 本来ならこれも酷評しなきゃいけないのかもしれない・・・でも、すみません。
 こういうアレンジって僕のツボなんです。単純に楽しんじゃいました。

10)Conta Koo

 発表時には、この曲がアナログ盤の最後の曲になっていた。
 裏でかすかにハーモニーの味付けをしつつも、基本的にはインストで終わってしまう。
 まるでカラオケにも聴こえる。このさりげない演奏の上に、ぶっといメロディが乗っかるべきだろうに。
 ここまで力任せにはしゃぎまくるパワーで押してきたのに、ラストになって余韻を残して静かに終わらせた。

11)Jump Now

 ここからは、CD発表にあたってのボーナス・トラックになる。
 本曲はスタジオでのライブ録音だ。このCDリリースまでは未発表曲。
 この曲を聴いていると、fig4.の特長がとてもよくわかる。
 タイトなリズムにパワフルな演奏。力任せに突っ走るいきいきしたバンドだってことが実感できる。
 (1)から(10)まではスタジオ録音ってことで、ダビング等でいろいろ気を使っているんだ。

 トビンの歌声は、ガラガラ風味がぱらりとかかった荒っぽいもの。
 なのに生き生きしたバックの演奏が、歌声の荒っぽささえも魅力に変えている。
 特筆するような名曲でもないのに、輝いて聴こえてしまう。

12)Dig the Catacombs

 この曲以降は、すべてトビンが一人で作曲した作品が収録されている。 
 1995年にスプリットシングルとして、シンプル・ソリューション・レコーズ(デイトンのインディ・レーベルかな?)からリリースされた曲だ。
 ドラムをドン・スラッシャーがつとめている。

 ジャストなリズムを身上とするジョン・ピーターソンとは対照的に、間を生かしたのんびりしたビートを叩いている。
 ゆるやかなメロディがなかなか心地よい小品だ。多重録音されたトビンの歌声もかっこいい。
 2分にも満たない時間で終わっちゃうのがもったいないな。

13)Sadder Than You

 1996年に発表された、トビンのソロ作品。
 当時7インチでルナからリリースされた曲・・・らしい。
 なぜこのCDに収録されたかは謎。

 パシャパシャしたドラムに乗って歌われるポップ・ソング。
 うわずりぎみの歌声が、妙にさわやかに聞こえる。
 メロディはなめらかだし、いい曲だと思う。でも、ちょっと単調なんだよね。

14)Busy Bodies

 1996年に録音されたアウトテイク。
 音が割れ気味なのが残念だけど、なめらかなメロディが素晴らしい。
 ミドルテンポで優しく歌う。
 ギター・ストロークをざっくり響かせ、ベースがどっしり支えるアレンジもたのもしい。
 こういう曲こそ、きれいな録音できっちり聴きたかった。惜しいぞ。

15)Bottle of the Ghost of Time

 (13)と同じ7インチでリリースされた曲。こちらがB面かな。
 ・・・根拠はないけど。なんとなく地味だから(笑)

 トビンの多重録音かな。ドラムはリズムボックスだ。
 鼻にかかった声で、たどたどしくフレーズをなぞっていく。
 3リズムでバックの音は鳴っているけれど、弾き語りの感触がひしひしと伝わってくる。
 バックの演奏はアイディアをあえて排除したのか、シンプルそのもの。
 なので、なおさらそう感じるんだろうな。

 めずらしく5分くらいの長さを持った曲。
 でも、バックの演奏は変化せずに淡々と続くだけ。
 なぜこの長さが必要だって、トビンは感じたのかな。

16)I`ll Buy You Everything You Own

 この曲は1997年のアウトテイク。
 この頃までfig.4が活動をしていたのだろうか。
 音の感触からは、バンドっぽさはあまり感じられない。
 トビン自身のソロ作品なのかも。

 間をいかしたアレンジで、穏やかに曲が進んでいく。
 歌声と歌声の合間で、執拗にリズムを刻むバックの演奏が妙に面白い。
 盛り上がりらしきものは特にない。
 楽器演奏の水面から、ぷかりぷかりと浮かぶヴォーカルに、身を任せていると終わってしまうサイケな曲。

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