Guided by Voices


SUNFISH HOLY BREAKFAST(1996:Matador)

Robert Pollard - guitar & vocals, drums on 2?
Tobin Sprout - guitar, bass & vocals
Mitch Mitchell - guitar on 5 & 10?
Kevin Fennell - drums on 5,7 & 10?
Jim Greer - guitar & vocals on 8

 96年の9月にぽこっとリリースされたEPだ。前作の「UNDER THE BUSHES UNDER THE STARS」からほぼ4ヵ月後のリリース。しかも全10曲入り。総収録時間こそ30分弱だけど。この勤勉さはなんなんだ・・・。
 ちなみに、このEPはCash For Suitsって仮題があったそう。

 しかも、ディスコグラフィーによれば、このEPとまったく同じ日に7インチ・6曲入りEPをリリースしている。
 タイトルは「PLANTATIONS OF PALE PINK」(僕は未聴)。
 レーベルもこのEPと同じくマタドールから。
 あきれたことに、これら2枚のEPの収録曲はダブっていないようだ。
 この2枚をあわせたら、りっぱな新譜のアルバムになるだろうに。
 すさまじいリリースラッシュだ。
 
 なお、2曲目と7曲目は93年にエニウェイ・レーベルからリリースされていた曲の再録らしい。。
 新録ヴァージョンなのかどうかは、不明です。ご存知の方、ご教示をお願いします・・・。

 本EPの参加メンバーは、ゲスト的なジム・グリールを覗けば、当時のGbV黄金メンバーだ。
 収録曲はどの曲も、作曲時の勢い一発だけでない魅力を備えている。
 次から次へと浮かぶ創作意欲を抑えられなくて、気のあったバンド仲間といっしょに産み出された、肩の力が抜けたEPってところかな。 

 <各曲紹介>

1)Jabberstroker

 このEPのトップはトビンのペンによる曲。
 冒頭にアンコールを求める観客のSEを持ってきて、コンサート仕立ての構成で、演奏がはじまる。
 ミドルテンポの、シンプルな曲だ。ヴォーカルが淡々ときれいなメロディを歌う。
 輪唱風にかすかに入るコーラスもかっこいい。
 ドラムレスのアレンジで、ベースがやさしくリズムを提示する。

2)Stabbing A Star

 デモテープ風のがしゃっとした音質だ。
 もこもこのローファイサウンドで、割れた音がまとめてドカンとかぶさってくる。 
 ヴォーカルも力任せ。そこそこくっきりしたメロディのパワーで、曲が散漫になるのをぐぐっとこらえてる。

3)Canteen Plums

 ふあふあとギターが踊る。エコーを効かせてヴォーカルが絡み合うさまがいかしてる。
 この曲もメロディがやさしく包み込む。
 もっと煮詰めたら、とびきり魅力的なメロディになるような気がするのになあ。

4)Beekeeper Seeks Ruth

 クレジットは、ロバートとトビンの共作。
 ただ、どこらへんが共作か、よくわからない荒っぽい曲。
 コードだけ決めて二人でギターを演奏しながら、即興で録音したみたいな感じがする。
 二人でジャムっているときに出来た曲って意味なのかな。
 思いつきのようにメロディをつぎからつぎへと提示する。
 ときたま、きらっと光るフレーズがあるのにな。
 二人とも、未練なく新しいメロディに向かっていく。

5)Cocksoldiers And Their Postwar Stubble

 この曲のみ、プロデューサーにキム・ディールを迎えている。その関係もあってか、録音は地元ではなく、メンフィス州で行われた。
 ふところ深いギターリフのイントロで始まる、ミドルテンポの佳曲だ。
 このEPの中では、個人的にはこの曲がベストかな。
 ゆったりと寝転んで、音に身を任せられる。
 時折挿入されるドラム・ロールが見事に決まる。ドラムはケビンかな。うまいドラムだなあ。
 中盤で不穏な雰囲気をかもしだすアレンジもいかしてる。

6)A Contest Featuring Human Beings

 4)に続き、ロバートとトビンの二人が作曲している。
 こちらは、くっきりしたメロディのきれいな曲だ。
 ギターを弾きなぐりながら、高らかにヴォーカルが歌い上げる。
 メロディは起伏もあって、耳にやさしく残っていく。
 ただ、全体の構成って意味ではいいかげんかな(笑)唐突に曲は終わっていってしまう。

7)If We Wait

 ゆったりとしたテンポで甘く始まる曲。はっきりとしたメロディに、ときどきしゃがれる声が、ジョン・レノンの作品を思い出してしまう。
 メロディは次々に変化していき、一定のポイントに立ち止まることはない。
 アコギのコードストロークが耳に残るが、アレンジも緩急を聞かせてよく練られている。
 出来はこのアルバム中で一番だろう。

8)Trendspotter Acrobat

 ジム・グリールの曲。ヴォーカルとギターでも録音に参加している。
 メインヴォーカルがジムかな。猫なで声でそっと歌うタイプだ。
 曲は性急なテンポで走っていく。エフェクターを聞かせずに、シンプルな音色のギターで、ひたすらリズムを刻んでいくシンプルなアレンジ。
 メロディにふくよかさこそないものの、それなりにいい曲だ。
 しかし、唐突にこのEPに収録される必然性がよくわからない。
 たまたまジムとセッションしていたロバートが、曲も合わせて気に入ったから収録したってところかなぁ。謎だ。
 こういう思い付きっぽいところがGbVらしい・・・のかな?

9)The Winter Cows

 これはロバートとトビンの共作曲。
 アコギをメインに出した弾き語りっぽい演奏をバックに、つかみどころがない歌いかたで綴っていく。
 メロディは、瞬間的に美しく響くときもあるけれど、妙に断片的な感触が強い。もう少し、アレンジを練ったらかっこいいんじゃないかなあ。
 
10)Heavy Metal Country

 曲調は、スローテンポでエレキギターのコードストロークが耳に残る、エレキ版フォークソングってところかな。リズム隊も入っているけど、あくまで裏方に徹している。
 穏やかでなかなかいい曲だ。

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