Guided by Voices

CLOWN PRINCE OF THE MENTHOL TRAILER(1993:Domino)

Robert Pollard - guitar, vocals & drums
Tobin Sprout - guitar & vocals
Jim Pollard - guitar

 93年にリリースされた本EPは、イギリスのみの発売らしい。
 GbVのメンバーは、ロバート兄弟にトビンのみ。いたってシンプルな構成だ。

 おまけに編成は、ギターが3人いるのにベースが一人もいないユニークなもの。
 もっとも、バスドラやアンプのハムノイズ、もしくはギターの低音がベース感を作り出すので、音を聞いていて浮ついた感じはしない。
 逆に、サウンド全体としては、低音による底支えがないから、軽快感や浮遊感が先に立つ。
 
 EP全体を通してのサウンドイメージは「煙の中」かな。
 演奏がどたばたしてるから、夢の中でうっとり・・・とはちょっと言いづらいなぁ。

 演奏はどの曲も、いつにもまして荒っぽい。
 三人のアイディア一発で作曲し、曲が浮かんだ瞬間の勢いを殺さずに、すぐさま録音した音源をまとめた風だ。ちょっと小粒かな。

 ちなみにこの年には、本EPのリリース先とは別の、「Engine」レーベルから「Fast Japanese Spin Cycle」というEPもリリース(僕は未聴)している。

<各曲紹介>

1)Matter Eater Lad

 ちょっともたつくけども、歯切れのいいハイハットが耳に残る曲。
 ヴォーカルは歌うと言うより語る感じかな。
 縦のリズムがずれるは、マイクは吹くは。ずっこけるところもあるけれど。
 ぽぉんと投げ捨てるような、いさぎよいアレンジが気持ちいい。
 かすかに、かすかにベースが聞こえるような気がするなあ。

2)Broadcastor House

 ポラード兄弟とトビンによる共作。
 この曲もリズムがずれるところがあるけれど、キレがいい。
 リズムのリフはシンプル。淡々と演奏するバックにのって、基本的には歌声が絡み合っていく。
 ちょいと調子っぱずれにだけど、歌声は自信まんまんにそっくり返ってるみたいだ。

3)Hunter Complex

 続いてはポラード兄弟のコンビで作曲したこの曲。
 リズムボックス風のタイトなリズムに乗って、ギターがメロディアスなリフを乗せる。
 ヴォーカルはこもりまくって、デモテープ並だ。
 メロディは、もうすこし練れば膨らみそうなのに。
 盛り上がりそうになって、盛り上がりそうになって、すぱっと沈んでしまう所がもどかしい。 

4)Pink Gun

 この曲も、ヴォーカルは無邪気に歌声をほうりだす。
 かすれ声で矢継ぎ早に歌詞が溢れ出し、30秒くらいであっさりとフェイドアウトしてしまう。まさに、一筆書きってとこかな。

5)Scalping The Guru

 これはなんと表現したらいいんだろう。サイケ感たっぷり・・・っていうのかな。
 ゆっくりとしたフェイドインで、エコーを聞かせたヴォーカルが、奥のほうからしずしずと顔をあらわしていく。
 メロディは単調ともいえるほどに、同じ旋律を執拗に繰り返す。
 そして、真正面に姿をあらわした途端に、すぱっとサウンドが叩き切られる。
 曲にのめりこもうとした瞬間、唐突に曲が終わってしまい、耳の持って行き所がなくて、つんのめりそうになったっけ。

6)Grandfather Westinghouse

 前曲ラストでのサウンドを瞬断した余韻を楽しませるつもりか、丁寧なことに5秒程度の空白が曲間にある。
 この曲が、このEPの中では一番メロディアスかな。
 もこもこのエコーにつつまれたヴォーカルが、メロディを丁寧に歌っていく。
 リズムは、大男がスキップをするかのように、どっすんどっすん弾む。
 エンディングでは雰囲気たっぷりに、ギター3本が静かにノイズを撒いていく。

7)Johnny Appleseed

 最後は3人の共作でしめる。
 メロディは耳を引くけれど、乱暴なヴォーカルが魅力をかき消してしまう。
 もっとも歌声とはいえ、基本は語りのような感じだ。静かなコーラスが、かすかな味付けになっている。
 この曲はドラムなし。ギターのみ。
 アコギがコードをかき鳴らし、エレキギターの長い長い単音が、ノイズとともに浮かんでは消えていく。
 さりげない小品だけど、本EPでのベストトラックはこの曲。
 霧の中を漂うような雰囲気に耳を傾けていると、ゆっくりと身体が浮かび上がってくるみたい。

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