Guided by Voices

viva la Muerte/Cobra Verde(1994:Scat)

Don Depew - bass,guitar,piano
Doug Gillard - guitar,bass,vocals,electric piano
John Petkovic - vocals,guitar
Dave Swanson - drums,percussion,vocals,guitar

 のちにGbVに参加するダグ・ギラードたちのバンド、コブラ・ヴェルデの1stアルバム。
 資料が今ひとつなく、コブラ・ヴェルデがデビューに到るまでの経歴や、当時に地元での受けていた評判は不明だ。

 アルバム全体を通して、全般的にイギリス風の乾いた音がする。70年代のストーンズを思い出すなぁ。
 ドスを効かせようと喉をつぶしたヴォーカルが、その印象に拍車をかける。

 ジャケットにイラストが載っていないので、当時のバンドの雰囲気はつかめない。
 とはいえ音から推測すると、とにかく勢いで押し切ろうとする、イギリスかぶれのハードロック風バンドってイメージが浮かぶ。

 作曲のセンスはそこかしこに感じられ、平均点はぎりぎりクリアする。
 ライブバンドが、えいやっとレコーディングした手触りのアルバム。
 ステージでは映える曲かもしれないが、レコードとしての出来は、正直いまいち。

 おもしろいアイディアやメロディがそこかしこに見られ、頭ごなしに否定できないのがもどかしい。
 どうにも中途半端な出来だ。
 GbVのような、アイディア満載のロックを期待すると肩透かしにあうことだけは、言っておきたい。

<各曲紹介>

1)Was it good

 パルスノイズのイントロにひっぱられ、ベースとギターによる重たいリフで曲が始まる。
 ファルセットと通常の声を使い分け、群唱で歌うアイディアは面白い。
 全体的な雰囲気はからっと乾き、クールで凝ったアレンジだ。
 とはいえ中間部のメロディが今ひとつあいまいで、途中で退屈してしまう。

2)Gimme your heart

 アップテンポの曲だけど、リズムでのせずにギターリフの切れとヴォーカルの力技で引っ張って行こうとする。
 4人の薄い楽器編成にもかかわらず、ドラマティックにブレイクではじけるアレンジや、低音部に力を込めて迫力を出そうとした歌い方は、GbVの文脈で聴くとそうとう違和感がある。

 デビュー当初のコブラ・ヴェルデは、もっとヘヴィな音をセールスポイントとした、ハードロック風のバンドだったんじゃないかな。
 アメリカのインディにありがちの人間くささやローファイさを、極力廃そうとしているかのように、僕には聴こえた。
 その点、録音行為そのものにはあっけらかんとしているGbVとは、コンセプトが根本から違うなぁ。

3)Montenegro

 ギターのコードストロークを前面に出した、アコースティックな佳曲。
 ポップスとしては、なかなか出来がよくて好き。
 それにしても、あからさまにストーンズをイメージしてしまう。
 鼻に声を引っ掛けて、ところどころでこぶしを効かせる歌い方がミックにそっくり。

 ファルセットを巧みに織り交ぜ、アレンジもきまっている。
 もし、このアルバムで一曲を選ぶとしたら、この曲かな。

4)Despair

 あからさまに「You really got me」と酷似したパターンのリフから始まる。
 力技で押し切ろうとするが、今ひとつ乗り切れない。
 上で「ハードロック風のバンド」と書いたが、妙に物足りない気分だ。

 マスタリングが薄くて、音の迫力が今ひとつないのが理由の一つ。
 ヴォリュームをあげるほど、コブラ・ヴェルデの魅力がくっきり聴こえてくる。
 ライブではこのバンド、かなりのびのび演奏してたのでは。
 
5)Debt

 こうして一曲づつじっくり聴いてみると、ギターとハイハットの切れはかっこいい。
 ベースがもこもこのミックスだから、とろく聴こえるのかな。
 この曲も、聴いていて魅力に欠ける。

 ドスを効かせたヴォーカルが耳障りで、メロディを殺してしまった。
 やさしいアレンジで、そっと歌えばそこそこいい曲になると思う。
 エンディングにファルセットで、やさしくかぶせるコーラスは、僕の好みなんだけど・・・。
 こういうコーラスを前面に出したアイディアで、曲をまとめ上げて欲しかった。

6)Already dead

 いまいちピッチが合っていないが、サビのコーラスはいい。
 メリハリを効かせたアレンジも面白いけど、ドスを効かせたヴォーカルが魅力を半減させてしまう。
 サビのメロディを歌ってるときの色合いを曲全体にふりわければいいのにな。
 肩の力を抜いて、ほのぼの路線で攻めればさらによくなったろうに。

7)Until the killing time

 タイトにリフを決めるが、どうも類型的・・・。きらりと光る個性が欲しかった。
 スピード感溢れるロックンロール。でも、それだけ。
 この評価は厳しすぎるかな。GbVを基準に考えると、どうしても辛口になってしまう。

8)I throught you knew(What pleasure was)

 サイケな風味をぱらりとかけた、ミドルテンポの曲。
 サビでシャウトするあたりは、なんとなくU2を連想する。

 8分以上かけて延々と押していくが、アレンジ・メロディともに一本調子で押すのみだから、どうしても退屈してしまう。
 大まかに4つのブロックに分けているが、ドラマチックとは言いがたい。

9)Cease to exist

 くるくる回転するギターリフは、さっぱりとしていて楽しい。
 でも、歌のメロディが・・・。どうにも好意的に評価できない。
 アルバムをしめるべきラストの曲が、これってのは・・・もうちょっとしっかりしたプロデューサーを立てるべきだった。
 (ちなみに本作はコブラ・ヴェルデ自身のセルフ・プロデュース)

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