Guided by Voices

Ringworm Interiors/Circus Devils(2001:fading captian)

Produced by Todd Tobias and John Shough
Masterd by Jeff Graham

Todd Tobias - Instrumentation and noises
Tim Tobias - guitar
Robert Pollard - vo

 ロバートお得意の「作詞とボーカルのみ参加」プロジェクトのひとつ。
 あ、ジャケット表紙のコラージュもロバートのお手製だ。

 音楽的な主導権はトッド・トビアス。
 サイケ・ロックが基調ながらノイズへも興味を示し、一筋縄で行かない音楽を構築してみせた。

 作曲はサーカス・デビルズ名義。だがサウンドとつかず離れず、実に奇妙なメロディ作りなところを見ると、ロバートも作曲に加わってる気もする。
 曲先で譜面とにらめっこしつつ、歌詞を当てはめる姿はロバートに似合わない。
 あ、詞先って可能性もあるのか。どっちが先か製作過程を突っ込んだインタビューってないかなぁ。

 曲はめちゃめちゃ短い物ばかり。
 なにせ全長45分足らずなのに28曲も詰め込んでるんだから。
 アヴァンギャルド一本やりでなくストレートなロックも紛れ込ませ、ひっきりなしにイメージが変わった。
 とはいえとっちらかってても散漫な印象はない。筋が一本通ってる。

 もっと煮詰めればいいのに、と思うけど。
 親玉のロバートが作りっぱなしの帝王だもん。周りの音楽仲間だって似たような発想なのかもしれない。

 単発で終わるかと思ったら、02年には2ndがリリースされた。
 この編成でライブやってたら面白いのに。パーティみたいなドシャメシャが楽しそう。

<曲目紹介>

1. DEVIL SPEAK


 最初にこの盤を聴いた時、中身を間違えてたかと思った。
 そのくらいストレートなノイズ作品。もちろんインストだ。
 
 数本のギターでぐしゃっと重たい音を作り、シンセを重ねてるのかな?
 ひたすら重苦しいサウンドが淡々と一分間続く。
 だが、ゆったりとしたシンセの蠢きにも惹かれるなぁ。

 なんにせよ、初手からがつんと食らわしてきた。

2. FEEL TRY FURY

 重たい前曲をイントロに、ドラムの連打で始まるロックンロール。
 歌詞は有って無いようなもの。
 盛り上がって観客を煽ってる状態のライブ音源を、てきとうに切り取った趣だ。
 あれよあれよというまにエンディングへ行ってしまう。
 ノリはけっこう気持ちいい。

3. BUFFALO SPIDERS

 今度はへにゃへにゃシンセを引き連れ、3ピースのギターバンド体制を持ってきた。
 メロディはつかみ所ないが、GbVのアウトテイクって言ってもおかしくない作品。

 ところが30秒ほどたったとこで、シンセの咆哮が水を差す。
 いきなりサウンドは混沌とし、唸るように語るようにロバートが歌う。
 ボーカルは所々でエフェクタをかまされ、奇妙な雰囲気に拍車がかかった。
 
 2分半ほどの曲だが、さまざまな要素を一気にぶち込んだ傑作。
 とっつきは良くないが、これをサーカス・デヴィルズの代表曲に上げたい。

4. WORLD 3(You sing it)

 こんどはカルテット体制のロックンロール。リードギターはメロディを奏でるでもなく、奥まった位置でノイジーにギターで悲鳴をあげる。
 ジャケットには歌詞がついてるが、特にボーカルは入ってない。
 延々とギターのインストで幕を下ろす。
 
 ああ、だから"You sing it"って副題なのか。
 とはいえとても歌が乗っかるとは思えない演奏だよ。

5. BLANKS

 ゼンマイが唸るような音色のギターが、ひたすらシンプルなリフを繰り替えす。もしかしたらサンプリングかな?
 ロバートのボーカルは、語りに近い。途切れ途切れに、歌詞をつぶやく。
 一分ちょいと短いが、曲のカラーをしっかり持っている。

6. NORTH MORNING STAR TRIP

 コラージュのような電子音楽。
 とくに盛り上がりはなく、きらきら光る音符をぶちまけて、20秒足らずで終わる。

7. RINGWORM INTERIORS

 アルバム・タイトル曲だけど、すげえ無造作なつくりだな。
 アレンジの構造は"BLANKS"に似てる。単純なリフにポエトリー・リーディング風にロバートが歌うつくり。

 ただし"BLANKS"に比べ、パンキッシュで聴きやすい。
 ザクザク刻むギターに別のギターが一音、甲高く絡む。

 アイディア一発で作った曲だろう。でもこの文を書くために何度も聴いてたら、意外に完成度高いことに気がついた。

8. SPECTACLE

 またもやインストの作品。インターミッションってとこかな。
 今度はバンドのアレンジで、3ピースで絡むセッションに、がおおっとノイズが襲い掛かる。音色はシンセかな?
 
 約一分半と、本アルバムの基準で考えると長めな作品。
 リズムの縦がそろわず、まとまり悪く聴こえてしまう。
 ジャスト・ビートで攻めたら、もっとかっこよくなるのでは。

9. YOU FIRST

 いかにもロバートっぽいメロディが味わえる佳曲。素直に聴けるポップス。
 軽やかに鳴るシンバルが気持ちいい。

 ちょっとモコモコッとした音質が、ドリーミーさをつけくわえた。
 ボーカルが入る部分は少ないけど、この音像は単純に楽しめる。

 さりげなくタム回しを聴かせる、ドラミングも聴きもの。 
 ロバートの歌はお得意の、吟遊詩人風な取りとめない旋律だ。

10. KNIFE SONG

 一転して、ハーシュ・ノイズが飛び交う曲。
 ただしボーカルが全面にミックスされ、さほど暴力性を感じさせない。
 歌メロもしっかりしてるから、違和感なく聴けた。

 大サビへ行かずにあっというまに終わってしまう。
 ベースラインを押さえる、深い響きのシンセが気にいった。

11. KINGDOM OF TEETH

 ぐにょぐにょっとしたノイズ作品。きいきい軋む音は歯軋りっぽい。
 この音からタイトルを思いついたのかな。
 タイトル先行で曲を作ったとは考えづらい。
 わずか40秒の小品。

12. OIL BIRDS

 いちおう3/4拍子の曲だが、ビート感はほとんどない。
 膨らんではひび割れるシンセの音が全編を覆いつくすなか、ピアノの弾き語りよろしくロバートが歌う。

 特に構成らしきものはなく、散発的にメロディが零れるだけ。
 あくまで落ち着いたムードを根底に持った、さりげないアレンジの佳曲。
 こういうサイケ・テクノな雰囲気が好き。
 
13. LIZARD FOODS

 酔っ払いのオヤジみたいに、調子っぱずれなメロディを歌うパンキッシュな曲。
 旋律を当てはめるセンスがすごい。計算なのか、とりあえずてきとうに歌ったものをOKテイクにしたのか。
 ロバートの場合、単なる酔っ払いオヤジ状態ってのも否定できないからな(苦笑)

 うにょうにょシンセが裏で走る。
 左チャンネルにドラムとギター、右チャンネルにベース(かな?)どちらも激しく音を加工され、妙にひしゃげたイメージが湧く。

14. NOT SO FAST


 たった25秒。完全に幕間だな。
 テープを逆回転したような音が散発的にはじけるサウンドをバックに、古臭いシンセの音がわずかにソロを取って終了してしまう。

15. APPARENT THE RED ANGUS

 この曲は大好き。メロディもアレンジもすばらしい。
 ロバートのメロディ・メイカーぶりが炸裂した。

 おごそかに歌い上げる。
 バックはまずギター2本で隙間を生かした音像を作り、コンボ・アレンジへ引き継いだ。
 
 スローからミドルへ。テンポを途中で変えつつも、常に浮遊感を保った余裕ある演奏が素晴らしい。
 ひとつところにとどまらず、がらがら音像が変わる楽しいアレンジ。

16. PLAYHOUSE HOSTAGE

 ロバートの作曲センスがうまく出た、弾き語りっぽいニュアンスの作品。
 メロディはポップさを秘めているが、思いつくままに乗せてるみたい。ちとまとまりに欠ける。
 わずか40秒の一発芸みたいな歌。

17. STRAPS HOLD UP THE JAW

 これまた1分ちょいの小品。
 まずブライアン・ウィルスンのフォロワーが使うような、ふわふわサイケな音像が30秒ほど続く。
 唐突にロックへ変化し、単音ハーモニーを後ろに従えたロバートがラップ風に歌った。
 
 前半部分と後半部分のつながりがあまりにも唐突で、とまどう。
 それぞれの曲想を別々に膨らませたほうが、面白くなったのでは。
 こういう風にアイディアを無駄遣いするとこ、いかにもロバートらしいけど。

18. CORRECTO

 冒頭でうねうね聴こえるのはテープの逆回しかな?
 メロディはほとんど起伏がない。

 聴きどころは中間部分かな。
 シンセとユニゾンっぽく歌うメロディが素敵だ。
 電子音がやたら目立つ、音響派っぽい出来の曲。

19. STAR PEPPERED WHEAT GERM

 ゆったりしたテンポで重厚にせまる。録音がチープなので、重量不足が玉に傷。
 エコーをもっと振りかけたら、迫力出たろうになぁ。
 
 やりたいことはよくわかるが、これは演奏も録音ももっと気を使って製作すべき。
 ずしんと響く低音がきれいに鳴ったら、すごく押しの効いた作品になったはず。

20. SILVER EYEBALLS


 しゅわしゅわひっきりなしになにかが鳴る、サイケなアレンジ。ハイハットのテープ逆回転?なんだろう、あの音は。
 ロバートはいまいち調子っぱずれに歌う。
 スピード感はあるから、きっちりしたメロディならかっこいいのに。

21. DECATHALON

 45秒のインスト曲。
 しょっぱなから終わりまで、何種類かの音がドローン上に絡み合う。
 多少は変化があるものの、基本は白玉を重ねてほんのりノイジーに。

 ハーディガーディを操る灰野敬二のサウンドを、ふと連想した。
 ベクトルは違うし、参考にもしてないだろうが・・・。

22. PEACE NEEDLE

 前曲同様、この曲も沈鬱なサイケっぽいアレンジ。
 シンセの多重録音だと思うけど、ぶかぶか鳴る音はアコーディオンの弾き語りを連想しちゃった。

 メロディはあってなきがごとし。エコーをほんのりかぶせて、深みを表現している。

23. DRILL SGT. SOUL


 コラージュっぽいサウンド。脈絡なくさまざまな断片が登場しては消えてゆく。
 ノイズ作品ではあるが、どこかコミカルだ。
 眉間にしわを寄せず、あっけらかんとこういう作品を作る気楽さが伝わってくる。

 いや、もしかしたら機材と対峙して、真剣かつ悲壮な意気込みで作ってるのかもしれない。
 ただ、聴いてると「これって面白い音だよな〜」ってにやにや笑いながら、出たとこ勝負で作ってる雰囲気なんだよね。
 約1分10秒のインスト曲。

24. PROTECT THY INTERESTS

 一分強のインスト曲が続く。
 やはりコラージュっぽい感覚だが、中盤でチャラッ、チャラ♪って音が閃く瞬間の緊張感がいい。

 インストは比較的「勢いで作った」物が多い本作だが、この曲だけは明確なアイディアが提示されている。
 面白いので、じっくり聴きましょう。

25. LETS GO BACK TO BED

 タイトルのフレーズをひたすら繰り返す。
 えんえんリピートして飽きてきたなって頃、おもむろに次のメロディが出てきた。
 しかしまたタイトルのフレーズへ逆戻り。
 
 もうちょいテンポアップして、パンキッシュなアレンジにしたら良くなるよ、間違いなく。
 ロバートはとにかくほのぼの気分で歌います。

 裏で鳴るオルガンのオブリが聴きもの。

 しかしなんでこういうシンプルな歌を、えんえん3分続けようとするんだろう。
 ほかのアイディアいっぱいな曲はあっさり終わらせるのに。
 毎度のことながら、GbV関連バンドの取捨て選択基準は謎です。

26. STERILITY MEGA PLANT

 1分半のインターミッション。これはきっちりノイズっぽく仕上げてきた。
 せわしなく複数のノイズがかぶさり、ハーシュっぽくわめきちらす。
 シンセで作ってるのかな、この音は。

 荒っぽい構成ながら、スリリングで聴かせる。かっこいいなぁ。

27. NEW YOU (YOU CAN SEE AND BELIEVE)


 大ホールを埋め尽くした観客による、拍手のSE。
 無造作にオルガンを弾き、ギターがかぶさり・・・「Oh,Yeah〜!」と掛け声かけて始まるロックンロール・ショー。

 歌が始まると、ちゃんと歓声が大きくなる小細工がにくい。
 メロディも構成も特に妙なところは無い、キャッチーなロックだ。

 アヴァンギャルドな曲が続いた後でこうくると、スタジアム級を満杯にするロック・バンドへの皮肉にしか聴こえないぞ。

28. CIRCUS DEVILS THEME
 
 ふう、やっとエンディング。曲数多いから超大作を聴いた気分だ。
 
 ラストになって登場する「テーマ」は寂しげでクラシカルなメロディを、キーボードであっさり作った小品。
 後ろでケタケタ笑い袋っぽい音が鳴る。

 ここまでの錯綜した音像をきれいにまとめ、ゆっくり幕を下ろす佳曲。
 前曲は『クライマックス』っぽく派手だったから、むしろこれは客出しの曲かな。

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