Guided
by Voices"Suitcase 2 :
Disc 4"
Guided by Voices (2005:Fading Captain
Series)
[ミュージシャン名略:凡例]
Robert Pollard:RP、Jim Pollard:JP、Kevin Fennell:KF、Mitch Mitchell:MM、Tobin
Sprout:TS
<全曲感想> →ユニット名 曲名
4-1 -7 Feet Of Sunshine Madroom Assistance 2:31
Bass - Greg Demos
Drums -
Don Thrasher
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
96年の録音。GbVDBによると"Talk To Me"って曲と同じらしい。そして"Talk To
Me"は未発表。同サイトによればGbVの未発表アルバム、"To Trigger A Synapse"(1996)に収録予定曲だったそう。
ファンが編んだブートレグ"30 Songs"(2004),"Carry-On: Left Overs & Side Dishes"(?),"Goldstar
For Fatboy"(?)にも収録とあるので、音源流出したのだろう。これと同じ音源かもしれないが。
96年なら"Under The
Bushes Under The
Stars"(1996)の頃。バンドは全盛期だが実質的に解体した時期だ。その時のアウトテイクかな。本盤の録音メンバーもグレッグ・デモスにドン・スラッシャーと"Under
The Bushes〜"参加な顔ぶれだし。
サビのメロディなどはボブ独特の和音感で楽しい。今一つ覇気のない演奏だが、きっちり作り直したらパンチ力でたかも。
4-2 -Praying Man
Vs. Bo Diddley Man Of Dimension 2:23
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
80年と古い録音に跳ぶ。若いボブの声で、アコギの弾き語りによる演奏。疑似バンド名にボ・ディドリーとあるように、弾むリズム感でギターをかき鳴らす。アクセントは拍頭のギターながら、ジャングル・ビートで刻みを合わせたら、確かにハマりそう。
基本は同じメロディを続けながら、それに飽きたかの如く、スッと違うサビに流れる瞬間が気持ちいい。
4-3 -Alvin Haisles Nerve
Gas 0:47
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
04年の作品でボブのギター弾き語り。イントロから歌に入る瞬間にギターをロング・トーンで止め、テンポ感をぐしゃぐしゃにする奇妙なアイディアの曲。
曲が展開しそうなところで、唐突に止まる。いかにも断片。作曲メモかもしれない。面白みは、いまいち。
4-4 -The Fun Punk 5 Do
The Ball 1:21
Bass - JP
Drums - TS
Guitar - MM
Vocals - Geo, RP
Written-By - Glanaupolis, JP, MM, RP, TS
録音時期は不明。メンバーの声と質感から、90年代初期ではないか。ボーカルにクレジットのGeo
Gianaupolisとは、デビューから90年頃までにThanksクレジットされた人で、詳細は不明。
メンバー・クレジットも全員なため、ジャムで演奏しながら即興的にボブが歌を乗せたのでは。ジム・ポラードのベースが軸で、トビンがドラムを喧しく鳴らす。ミッチのギターはノイズ役で、さほど目立たず。
酔っぱらいながら適当に演奏しただけって気もするなあ。
4-5 -Peter Built Bombs The Issue Presents
Itself 2:52
Bass - MM
Drums - Peyton Eric
Guitar, Vocals - RP
Written-By - JP, MM, RP
87年、デビュー時期の作品。深く確かめるようなメロディはすっかりボブ節。90年代前半の熟していく未来を彷彿とさせる。未発表が惜しい。こうして聴けるのだからモンクは無いが。
バンドが威勢よく捲し立てる中、ボブは釣られずじっくりとメロディを紡いだ。このスケール感が堪らない。サビでわずかにメロディを展開させるさまも大人の仕上がり。ボーカル・ダビングのコーラスが入るとこなんて、もう好みだ。
当時ならパンチ力無しって収録を割愛は分かる。だが歳を重ねた今こそ、再演で映えそうだ。
4-6 -The Banana Show
Leprechaun Catfish Fighter 0:29
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
05年の録音でボブのギター弾き語り。ちょっとメロディを外しながらも、威勢よく叫んでる。30秒で終わってしまうあたり、作曲メモではないか。
ワン・アイディアな曲のため、単独でどうこうではない。こんな音源もあったんだって感慨でサクッと聴こう。メロディそのものはボブっぽくなく、ストレートなもの。
4-7 -Leon Lemans Child 3:12
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
Robert Pollard and his Soft Rock Renegades名義"Choreographed Man Of
War"(2001)収録"Aeriel"の原曲。リリース・バージョンはテンポを落とし、じっくりイントロを奏でた後でおもむろに歌が入る、サイケ・ポップ仕立てだった。
しかし本テイクは似たようなテンポ感だが、エレキギターで弾き語りなアレンジのため、少しテンポ感が速く思える。
原曲の壮大さとはうって変わり、歌もすぐに登場。こういうシンプルなスタイルが映える、優しい曲だ。完成度は確かにリリース版の方かもしれないが、素朴で繊細な肌ざわりな本曲も、実に的確で魅力的。
GbVDBによると、クレジットの02年は誤りで"Isolation Drills"(2001)用のデモだとコメント。確かに時期的に、その解釈がハマる。
だが当時のGbVには、確かにこんな優しい曲は似合わない。ソロ・ユニットへ回したのも分かる。
それにしても良い曲だ。このアレンジで、改めて本曲の魅力に気づいた。
4-8 -Howling Wolf Orchestra Invisible
Exercise 2:00
Acoustic Guitar, Vocals - RP
Bass - JP
Drums - Nate
Farley
Written-By - JP, Farley, RP
Howling Wolf
Orchestraとはボブが00年にEP盤"Speedtraps For The Bee
Kingdom"を発表した別ユニット。本曲の録音時期は不明だが、本盤のアウトテイクか。
エコーどっぷり、カウントで始まるサイケなジャム・セッション風の曲。ボブの歌はくっきりと聴こえ、一筆書きで呟くようにメロディが揺れる。
アコギもボブ。あとはドラムとベースのシンプルな構成ながら、途中からアコギのストロークがグッと前へでて、バンドはアクセントていどに沈んだ。
これらアコギもダビングされており、ラフなベーシックを元に、ボブが好き勝手なメロディとギターをかぶせたのでは。
4-9 -Carl Goffin
All Around The World 1:39
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
79年とひときわ古い録音。アコギの弾き語りで、ボブが軽やかに歌う。1分半の短い尺で、平歌からサビまできっちり構成した。
実験要素は少ない、フォーク・ロック。アコギのみだし、別に特段リズミックなアプローチではないが、軽快にストロークするギターに乗って歌うさまは、しっかりビート性あり。
すでにボブ流の節回しが伺える。栴檀は双葉より芳し。瑞々しいメロディ・メイカーぶりが滲んだ。
爽やかで明朗なボブの歌い方も、清々しいな。後年、演奏するには毒が無さすぎるかもしれない。けれど、埋もれるには惜しい曲。
4-10 -Alvin
Haisles Late Night Scamerica 1:51
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
いっきに四半世紀跳び、2005年の弾き語り曲。翌年に本曲はトッド・トバイアスとのユニットPsycho And The Birds"All That
Is Holy"(2006)にバンド・アレンジで収録された。そのデモ音源だろう。
幾分テンポは、弾き語りのほうが速めに感じた。彩りや構成はsycho
And The Birdsのほうが出来上がっている。しかし素朴な弾き語りにもかかわらず、曲の芯は十二分に味わえた。
ボブの本質はアレンジ込みでなく、アコギ一本でも表現できるメロディ・センスだとよくわかる。
無造作なアコギのストロークにのって、メロディをそっと絡めていく歌い方が愛おしい。
4-11 -Stumpy In The Ocean A
World Of My Own 2:50
Bass - MM
Drums - Peyton Eric
Guitar - Paul
Comstock
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
85年のライブ音源から。本Boxで小出しに聴くのも良いが、ライブの様子をまとめて聴きたくもある。セットリスト情報無いかな。並べ直してみたい。
あまりリズムを強調せず、基本はエレキでボブが弾き語り。他のメンバーがメリハリつけたアレンジで後押しして、爽やかなロックに仕上げた。
サビ前でボブがきゅうっと高音へ歌声を伸ばし、そのまま雪崩れていく瞬間が良い。直後のコード・チェンジも効果的だ。
4-12 -Milko Waif
She's The One 0:56
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
05年の弾き語り。1分の短いデモだ。中盤以降で、ぐいぐい攻めてくる瞬間は、他のアルバムで聴いた気がする。なんだっけ?
前半と後半で、がらりと風景が変わる。ぼくは後半の密なテンションがスリリングで好きだ。わずか1分でも、ボブは曲を自在に展開してみせる。
4-13
-7 Dog 3 Daddy's In The State Pen 1:58
Guitar - Wendell Napier
Vocals - RP
Written-By - RP, Napier
77年とこれまた古い録音。ギターを弾いてるウェンデル・ナピアーは本BOX
1-(6)にも参加した。当時のボブの音楽仲間だろう。GbV前史のみに登場し、その後の経歴は不明。
ナピアーと共作のためか、平歌の節回しにボブっぽい粘りはある一方で、バッキングはシンプルなロックに仕上がった。
ドラムやベースがいたほうが、この曲は分かりやすく盛り上がると思う。だがあくまでデモとして終わってしまった。GbVで歌い継ぐにはシンプル過ぎるけれど。パブ・ロックっぽいアプローチの、キャッチーな曲と思う。
4-14 -The One Too Many Cox Municipal Airport Song 2:25
Bass - MM
Drums
- KF
Guitar, Vocals - RP
Harmonica - TS
Written-By - RP
88年の録音。3rd"Self-Inflicted Aerial
Nostalgia"(1989)の頃で、まだGbVは本格活動の前。だがメンバーだけを見ると、後年の黄金メンバーがずらり。ハーモニカでトビン・スプラウトの参加が目を引く。GbVに参加は"Propeller"(1992)の頃って印象だったから。
曲はしなやかに進んでいく、フォーキーなロック。GbVらしいラフな録音でドンシャリな音質だけど、ボブのふくよかなメロディはきっちり味わえる。
ゆったりくつろぐムードが心地よい曲。トビンのハーモニカも、静かできれいに曲を飾った。
4-15 -Gene Autrey's Psychic
Scare Me No. 3 1:18
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
第一期GbVのラスト・アルバム"Half Smiles Of The
Decomposed"(2004)用のデモで没曲。一筆書き作曲で、エレキギターをかき鳴らしつつ奔放にメロディが進む。
ボブの場合、これでも曲になってしまう。けれど作曲メモっぽくもあり。中盤でギター・リフががらり硬質になったり、再び伸びやかなストロークになったり。
バンド・サウンドなら、もっと押し引きが強調されたろうな。
4-16 -Manimal Grope 2:33
Bass, Vocals -
MM
Drums - KF
Guitar, Vocals - RP
Vocals - Randy Campbell
Written-By
- JP, Campbell, RP
91年の録音。時期的には"Propeller"(1992)の前だが、メンバーが違う。ボーカルでクレジットのランディ・キャンベルはこの時期もこの後も、ちょこちょこと周辺の賑やかしでクレジットされる人。たぶんボブの友達で、GbVってより仲間内のバンド遊びで録音したのではないか。
曲はジム・ポラードとキャンベル、ボブの共作名義。リフを繰り返すうえで、喉を鳴らすようなパターンと語りめいた声が乗る前衛的な曲。
アイディア一発、ジャム・セッションっぽい。曲として魅力は別に、こういう録音して遊んでたんだって記録の観点で興味深い作品。
4-17
-God's Little Lightning Bolt Heavy Crown 2:13
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
同じく91年の録音だがアコギの弾き語りなデモ録音。本曲はきちんと寝かされ、ボストン・スペースシップ"The
Planets Are
Blasted"(2009)に収録された。18年間も置いておくとは。ボブの作曲は膨大な一方で、決して使い捨てではないとこういう時に思い知らされる。
曲そのものは簡素なアレンジで、ギターのストロークのみ。伸びやかに歌い上げた。サビでスッと一呼吸おいて風景を変えるさまが見事。
4-18 -Wim
Dials So Roll Me Over 1:12
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
95年録音の弾き語り曲。GbVDBには"Not In My Airforce"(1996)用の曲ではない、と注意書きがあり。この時期は"Bee
Thousand"(1994)を発表し、GbV黄金期の一つ。わざわざ別プロジェクト向けに着目して記す必要ないと思うのだが・・・。なにかエピソードがあるのかな。
楽曲は最後にいきなりテープを止める風の強引な終わり方。長閑で素朴なメロディにふさわしくない。アイディアをメモのようなものか。
一筆書き風に曲は千々に変化していく。けれど耳を惹く鮮やかな旋律作りは確か。一曲の中に複数のアイディアを詰め込んだかのよう。
4-19 -The
Inbrids Home By Ten 2:38
Guitar - RP
Instruments [Everything Else] -
Unknown Artist
Written-By - RP
ボブ節の捩じりながらまっすぐに進むロック。"Captain Is Gone
(Home By Ten)"や""Becoming Unglued"と改題しつつも、モノにならず没った曲のようだ。
バンド・サウンドで92年の録音。他メンバーは不明とある。"Propeller"(1992)あたりのセッション曲だろうか。
これ単体で聴いたら、ボブっぽいキャッチーな作品と思う。しかし没になったと言われたら、なるほどなって納得するシンプルな曲。平歌としてフックをつけたら、まとまったかもしれない。
4-20 -Milko Waif Come Make My Shadow 1:39
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
05年まで飛ぶボブの弾き語り録音。ギターのストロークのほおうが大きく録音されており、フォーク色が強く感じてしまう。歌そのものはボブらしい切なさを含んだ旋律で、同じフレーズを繰り返しながら歌いかけた。意外と素朴な味わいだ。
この時期はGbVが解散中で、ソロを連発してたころ。日記のように思いついたアイディアを録音か。
素直で無邪気な味わいが、あんがい新鮮だ。
4-21 -The One Too Many Paper Girl 1:46
Bass - MM
Drums - KF
Guitar,
Vocals - RP
Written-By - RP
88年の録音。"Paper Girl"は"Self-Inflicted
Aerial
Nostalgia"(1989)に収録曲だが、これよりもっとあっさりシンプルに料理した。メンバーも"Self-Inflicted〜"とは全く違い、ミッチやケヴィンとのセッション。GbVファンとしては本盤の甘酸っぱさを推したいが、まだバンド・メンバーは成熟していなかった。
たぶんボブの興が趣くまま、色んな音楽友達と録音してたんだろう。本曲はいちおうバンド・サウンドでまとまってはいるし、ハーモニーのダビングなど整ってもいる。とはいえどこか無造作で投げっぱなしなところもあり。
4-22 -Yummy Ropes Jimmy's Einstein Poster 0:50
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
本盤のクレジットは89年録音だが、GbVDBでは"Not In My
Airforce"(1996)用のデモで、96年当時の作品と推定する。
アコギの小品で、始まりや終わり方も唐突。作曲メモのような雰囲気だ。いくぶん緩やかなテンポで、ボブ節の甘酸っぱいメロディの悪くない作品。作曲しながらある程度まとまったところで、サクッとメモ録音したってところか。
無造作で、こういう録音もしっかり残してるボブのマメさにも感じ入る。
4-23 -Hot Skin Apartment My Only
Confection 1:45
Drums - JP
Vocals, Effects [G.e. Portable] - RP
Written-By - JP, RP
87年、GbVデビュー初期の録音。パーカッションの散発的な乱打から、テンポのまったく合わない緩やかな譜割りで現れるボブの声。ジムとボブのふたりで録音だが、とてもセッションとは言いがたい、アバンギャルドな曲だ。
ジムの適当なドラムを先に録音し、敢えて外したフレーズをボブが足したかのよう。
こういうデタラメで無造作な味わいもGbVではある。けれどまあ、たしかにボツったのも不思議でない掴みどころ無い曲。逆にこうして、聴けることは嬉しい。彼らの創作のお遊びが想像できるから。
4-24 -Otim Grimes Groundwork 2:59
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
84年と古いボブの曲。まだ自分のセンチメンタルなメロディ・メイカーぶりは確立されておらず、本盤は切なさが生硬もしくは素直に表現された。とはいえ素直に平歌からサビへ行かない型破りさも、すでにあるのだが。
確信犯でなく、形に羽目もしない。無造作に内面からあふれるメロディを一筆書きで紡いでいく。後年の個性こそ薄いが、ボブの作曲力が滲んだ。佳曲とは言いがたいが、今回改めて聴いてたら、愛おしさが増した。しかし4枚組ボックスの終盤に、妙な曲ばかり並べたな。
4-25 -The Fun Punk 5 Bye Bye Song 2:47
Bass - MM
Drums - TS
Guitar
- JP
Vocals - RP
Written-By - JP, MM, RP, TS
91年録音、上昇気流に乗る寸前のGbV黄金時代のメンバーによる作品。もっともジャム・セッションそのままで、楽曲はとりとめなく突拍子無い。即興かな。メンバー全員の共作だし。
録音の手始めで身体をあっためるべく、適当に演奏してるかのよう。
ハウリングもそこかしこに轟くが、たぶん意図的ではあるまい。演奏もラフで、ローファイなGbVの局面を強く出した。
4枚組ボックスの最終曲にしてはとっ散らかってるが、この時期ならではのいい加減さを楽しもうか。ここまで聴きとおせたGbVファンなら、できるはず。
(2020/7:記)