Guided by Voices

"Suitcase 2 : Disc 2" Guided by Voices (2005:Fading Captain Series)

[ミュージシャン名略:凡例]
Robert Pollard:RP、Jim Pollard:JP、Kevin Fennell:KF、Mitch Mitchell:MM、Tobin Sprout:TS

<全曲感想> →ユニット名 曲名

2-1 -Timid Virus I Am Decided 2:12
Bass - Jim Greer
Drums - KF
Guitar - MM, TS
Guitar,2 Vocals - RP
Written-By - RP

 96年録音な没アルバム"The Power Of Suck"用のデモだが、きっちりバンド・サウンドで録音されている。音質はいかにもな荒っぽさ。ベースは94〜96年頃のGbVメンバーだったJim Greerが弾いている。
 少しテンション低めながらボブ流のキャッチーさを持つ、良い曲。ライブで映えそう。こういう曲を惜しげも無く没にしてたのか。

2-2 -Mutts U.K. Tainted Angels With Butter Knives 2:24
Bass, Backing Vocals - MM
Drums - KF
Guitar, Vocals - RP
Written-By - KF, MM, RP

 97年、"Mag Earwhig!"(1997)頃の音源。ただしメンバーはコブラ・ヴェルデのメンバーを吸収する前のクラシック・ラインナップなため、GbVがいったん解散する前の音源なのだろう。
 "Jason Loewenstein's A Wanker"の別名もあるそう。この曲はGbVの没アルバム音源として"To Trigger A Synapse","Carry-On: Left Overs & Side Dishes","Goldstar For Fatboy"といった、GbVdBでいう「Fan Rarity Compilation」の曲目リストにも並んでいるが、結局は没で終わった。

 楽曲的には、ボブがつぶやくような声やメロディを淡々と乗せただけ。ジャム・セッションをそのまま録音したような構造である。

2-3 -Brainbow What About The Rock? 6:43
Guitar - Steve Wilbur
Guitar, Drum, Voice [Answering Machine] - RP
Written-By - RP

 7分近い長尺だが、前半4分はボブが留守電に語り掛けた言葉を延々と乗せているだけ。後半の演奏はボブがドラムとギター、あとは初期GbVのメンバースティーブ・ウィルバーがギターを足した。
 後半曲の基本はインスト。フィドルみたいな音色もギターだろうか。後半の楽曲部分は1stの頃、87年の作品。なぜか97年になってボブが長々と留守電部分を足した。意向は今一つピンとこない。何らかのトータル・アルバムを作る狙いがあったのかも。

2-4 -Scott Joy Pack Of Rolling Papers 0:26
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 咳払いのあと、アコギの弾き語りできれいなメロディを歌いだす。一節歌ったところで唐突に切れてしまう、30秒足らずの小品。作曲メモかな。91年、"Propeller"(1992)前夜にあたる時期に録音された。

2-5 -The One Too Many Telephone Town 2:41
Bass - MM
Drums - KF
Guitar, Percussion - TS
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 87年、デビュー盤の頃に録音された。優しくポップなフォーク寄りの曲。静かめだがきっちりとバンド・サウンドなアレンジだ。とてもキャッチーで没になったのが不思議。終盤にかけてメロディが下降していき、最後にシンバルがそっと鳴る余韻が好きだ。
 喉を張らず、ボブは柔らかく歌っている。素敵な佳曲。

2-6 -The Pukes Hey, I Know Your Old Lady 0:48
Drums - MM
Guitar, Vocals - RP
Written-By - MM, RP

 デビューのはるか前、79年の古い録音。ミッチとの共作で、ほぼワンフレーズを延々と繰り返すミニマルな構成だ。しかしときおり演奏がパンキッシュに暴れるとこが面白い。
 ジャムしながら曲を作っていくデモのようなテイク。

2-7 -Dale Frescamo Headache Revolution 1:19
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 09年にボストン・スペースシップの2nd"The Planets Are Blasted"で正式発表された。
 にもかかわらず、これも79年とデビュー前の音源。どれだけボブはアイディアを寝かし、かつ再生させているのか。よく覚えてるな。過去のデモテープを聴き返し、練り直してるのかも。
 アコギの弾き語りでそっとボブは歌う。アウトロのかき鳴らしが少しラフだが、メロディ部分はきっちり出来上がている。
 アコギはダビングがあって、弾きっぱなしではないようだ。冒頭に曲名を告げ、メモのような構成ながら楽曲は断片ではない。ボブの場合は。いちおう平歌とサビがあるし。

2-8 -Stumpy In The Ocean Every Man 2:16
 
Bass - MM
Drums - Peyton Eric
Guitar - Paul Comstock
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 85年、これもデビュー前の録音。Disc-1(19)Karma Yeah"Something For Susan In The Shadows"と同じライブ音源と思われる。ボーカルがかなりオフなのが残念な、オーディエンス録音か。
 ほんのり甘酸っぱさを漂わせたポップスなバンド・サウンド。曲の完成度はきっちりしてる。豊富なレパートリーを次々ボブは作っていたことを実感する。すでにボブ流の曲作りに隙は無い。

2-9 -Milko Waif Alibible 1:37
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 05年、"Half Smiles Of The Decomposed"(2004)でいったんGbVが解散した時期の音源。ボブのソロでいうと"From A Compound Eye"(2006)に向けた頃合い。アコギの弾き語りだが、後半にどんどんギターが激しくなり歌を覆う勢いなのが面白い。
 歌とギターが同録かは分からないが、興が乗るままギターの方に集中力が行ったような感じ。
 メロディはとっちらがり気味に奔放に暴れる。ボブの一筆書きっぽい旋律だ。

2-10 -Ben Zing I Can't Help But Noticing 2:20
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 89年とデビュー初期の音源。丁寧なアルペジオと単音リフの交錯するギターに、多重ボーカルが乗るきれいな楽曲。柔らかな響きとふくよかなメロディが心地よい。
 Ben Zingは最初の4枚組未発表Box"Suitcase"(2000)でも5曲に使われた疑似バンド名。ボブのお気に入りらしい。"Suitcase"での録音も88年の製作とあったから、この頃に単独ユニットとして作曲集カセットとかを作ったのかもしれないな。

2-11 -Red Faced Rats Mannequin's Complaint 2:09
Bass, Effects - Don Depew
Drums - Dave Swanson
Guitar, Backing Vocals - Doug Gillard
Guitar, Musical Box [Music Box], Backing Vocals - John Petkovic
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 中盤のオルゴール音色からシュプレヒコール、ギターの唸りなどいろいろ凝ったつくり。そして冒頭に戻るようなアレンジだ。
 冒頭はアコギの弾き語りでシンプルに始まったのに。97年の作曲。 
 シングル "Bulldog Skin"(1997)に併収した"Mannequin's Complaint (Wax Dummy Meltdown)"の別テイク。色々とアレンジを試してたらしい。当時に公式発表盤は鍵盤も入れ華やかだが、こちらはギターによる素朴な感じ。

2-12 -U B Hitler Zarkoff's Coming 1:35
Guitar - JP
Vocals - RP
Written-By - JP, RP

 89年のデモっぽい録音。ジムにギターを弾かせ、ボブは無造作に叫ぶ。二つのフレーズを淡々と繰り返すシンプルな曲。これだけ聴くと単調なメモっぽい作品だが、アルバムの流れだとちょっとしたアクセントになる。

2-13 -Acid Ranch Supersonic Love Funky Love Gun 2:18
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 80年とデビュー前の音源。ギターの弾き語りで呟くように一筆書きメロディが展開する。いくつものメロディのアイディアが、淡々としたギターとともに滴っていく。終盤に向け加速するテンションと奔放なあたり、色々と自由な製作だ。
 未聴で聴き比べ出来ないのだが、Acid Ranch名義でLPのみで本Boxの2ヶ月後、05年12月に発表したアルバム"A Manifesto Of Fractured Imagination And Wreckless Living"のにも収録した曲らしい。

2-14 -The Bad Babies Perch Warble 1:28
Bass - Dan Toohey
Drums - KF
Guitar - MM, TS
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 本テイクはスタジオ版と銘打たれた。同じ曲が"Suitcase"が、疑似バンド8th Dwarfの名義で収録あり。日の目は見なかったが、何度も作品化に向け取り上げられたらしい。
 シンプルなロックンロールで、サビの甘いアレンジがキャッチーだ。しかしいくぶん地味ってことで没かな。

2-15 -Scott Joy You're Not The Queen Anymore 1:24
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 アコギの弾き語り。弾き間違えたと思しきテイクまで、冒頭へそのまま無造作にくっつけたままリリースされた。このラフさが微笑ましい。
 95年の録音で、ボブの弾き語り。メロディが微妙にギターのアルペジオと引っ付かず、単独で成立する。奇妙なサイケ感が楽しい。

2-16 -Throne Ivanhoe 1:01
Guitar - RP
Written-By - RP

 90年の作品でギターのインスト。メロディ感はうっすらあるが、エレキギターのストローク中心のシンプルなもの。メロディを乗せる前のバッキングとして製作か。
 ボブは歌が先でそのあとにコードや伴奏付けと思ってたが、こういうコードのトラックを先に作り、メロディを乗せるパターンもあるのか。
 単純な曲ながらリピートさせ聴いてると、色々とボブの製作過程に想像が膨らむ。

2-17 -Herkimer Mohawk How Can You? 1:53
Guitar, Vocals - RP 
Written-By - RP

 2003年にベスト盤や未発表曲集として6枚組Boxで発売"Hardcore UFOs"に収録された"Slave Your Beetle Brain"と同じ曲。その時は逆回転だったが、これは順回転のオーソドックスなテイクだ。
 アコギの弾き語りでボブが歌う、のどかなカントリー調の曲。シンプルだが滑らかで良い。

2-18 -Shoot'em The Lodger Carried A Gun 2:47
Bass - MM
Drums - KF
Guitar - JP, TS
Guitar, Vocals - RP
Written-By - JP, MM, RP

 87年の録音。しごくオーソドックスなロックだ。意外と緩やかな曲。これはこれできれいにまとまっているが、むしろ逆にありふれてると没になったのかもしれない。
 作曲クレジットはボブにジムとミッチ。クラシック・ラインナップで丁寧に演奏されている。

2-19 -Modular Dance Units Metro XVI 1:47
Guitar, Effects [Glass Of Water], Vocals, Organ [Chord] - RP
Percussion [Metal Box], Vocals, Effects [Hoover] - MM
Written-By - MM, RP

 数音のパーカッションによるリフが面白い。きれいなパターンが続くけれど、時々ブレるからサンプリング・ループでなく手弾きっぽい。
 メロディは低い呟きが背後で存在するのみ。むしろこの数音のパターンが面白くて録ったと思われる。ボブとミッチの共作。実験的なデモってとこか。
 ミッチとの共作で80年の製作。レコード・デビューの前に、ボブは音楽仲間と色々録音して遊んでた様子が伺える。

2-20 -Milko Waif My Dream Making Machine 1:22
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 05年と一気に録音年代が飛んだ。本盤をまとめる時点で最新のデモになる。しかし音源はギターをがちゃがちゃ爪弾きながら、唸るような音程ある呟きの一筆書き曲。
 昔から、そして現在もボブの本質は変わらない。とらわれずに次々と様々な曲を作り、未完成的な場合でも発表をためらわない。そこが、いい。

2-21 -Usually To Death Mustard Man 
Bass - MM
Drums - Peyton Eric
Guitar - Paul Comstock
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 二音のシンプルなリフに導かれ、サビでたるっとテンポダウンした。メロディにボブ的なみずみずしさはあるけれど、どこか気だるげなムードが漂う作品。レコード・デビュー直前、極初期メンバーによる、引きずるロック。
 終盤はテンポアップとダウンを繰り返し、上がっては下がる。2-18 Stumpy In The Ocean"Every Man"など同じ、85年のライブ音源だ。

2-22 -Wheels Pig Harvey Alone In Time 1:10

Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 92年、"Propeller"ごろの音源。アコギのかき鳴らしでボブが歌う。素朴で柔らかなメロディ。エレキギターのかき鳴らしでも映えそうだが、アコギだとフォークの柔らかさが付与された。メロディは上がって下がる、せわしなさ。ボブの歌い方でだいぶ和らいでいるが。思いっきり尻切れトンボで終わってしまう。アイディア・メモみたいなノリだ。

2-23 -The Plexigrall Bee-hive Dusty Bushworms 3:22
Drums - KF
Effects [Bushworms] - JP
Guitar, Bass - TS
Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 元は92年頃のお蔵入りアルバム"Back To Saturn X"や"The Corpse Like Sleep Of Stupidity"に収録予定だった。のちにEP盤"Get Out Of My Stations"(1997)で正式発表曲の、別バージョン。
 93年の録音なので"Bee Thousand"(1994)あたりに入れようと録音し、結局はボツったのかもしれない。
 正規バージョンと比較では、いくぶんこちらのほうが緩やかなイメージあり。その煮え切らなさが独特の味を出すが、確かに単調かもしれない。

2-24 -Wheels Pig Harvey Free It 1:14

Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP

 92年録音。Suitcase 1に収録曲"This View/True Sensation/On The Wall"とメドレーで演奏曲と同じテイク、とも言われる。聴き比べたが確かに同じっぽい。平歌の後ろでふわんと弾むような、妙な余韻も含めて。
 "This View"は91年録音とあるが、果たして別テイクなのだろうか。これだけ膨大な曲群だから、ボブが間違えて再収録してしまった可能性もあり。適当な曲名を付け直して。
 楽曲はボブ節でしゃくるように淡々と歌い上げる、シンプルなサイケ寄りの曲。 

2-25 -Christopher Lightship Are You Faster? 3:42

Guitar, Vocals - RP
Written-By - RP
 
 96年録音。元は没アルバム"Power of Suck Demos"用の曲だそう。エレキギターのシンプルなリフに乗って、喉を張ってボブが歌う。サビの甘いメロディと雄大な風景が良い曲だ。当時、ボツったのが惜しい。こうして公式に聴けるから別にいいか。
 本曲は緩やかなテンポだが、リズムを速めにしたら、ノリが良くなる楽曲だと思う。          (2019/1:記)
 

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